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むすんで、ひらいて

先月、とうとう30歳になってしまい、1つの節目を意識してしまう。

毎日の在り方はそんなに変わらないと思う。むしろ、中高生や大学生の頃の想像では、もう少しイケてる30歳になる予定だったなあ、と感じてしまう。しかし実際は、あの頃の延長線上に、地続きに、今があるだけだ。

それでも、今なんとなく節目的なものを感じてしまうのは、周りの人たちによるところも大きい気がしている。

とてもポジティブな意味においてである。たまたま、このタイミングで次のチャレンジをする自分に対して、見送りの言葉や、面白いことを一緒にやろうというお誘いをかけてくれたり、近況報告などのキャッチアップの機会が生まれたりする。一見なんでもない日常が、特別なものとして、輪郭を帯びる。

ただ、この節目感の発端は、チャレンジを決めたことにあると思う。

これから学校の現場により入り込んでいく。一人ひとりの物語に深く関わり、面白い形を成していけると妄想している。その突入の選択ができたことや、妄想を描けるようになったことで、単にキリの良い30という数字が、より節目感を放つ。

ここに至るには、これまでの3年間が大きいと思う。

ある高校にて

進路多様なある高校に関わる機会があった。高校生が地場の企業の未来予想図を考え、発表するような、ビジコン的な取り組みを実施できたのである。

しかし、その学校の通常授業を初めて見学したとき、驚きを隠せなかった。生徒みんなが突っ伏して寝てるような光景が目に入ってきた。

そんな矢先、「この学校のかなりの生徒に問題がある」と先生の口からも聞き、もしかしたらヤバ案件なのか?とも一度は感じていた。

しかし、それは杞憂だった。

生徒を信じ、粘り強く向き合った結果、生徒たちは自律的に情報を調べアイディアを練ったり、自発的に夜遅くまでプレゼン資料をつくったりするようになった。もちろん、突っ伏していない。見学した授業からは計り知れないような可能性を見せてくれたのである。

いよいよ発表という本番直前の空気感は、部活の試合前の空気に似ていて、顔つきがみんな真剣だった。そして、堂々と発表しきった。終わった後は誇らしげな余韻に浸っていた。

「可能性に蓋をしていたのは教師の方でした。」

そんな言葉を先生から聞くことができた。
ヤバ案件ではなく、最高の案件だった。

この取り組みが実を結んだのは、生徒たちが自分たちのポテンシャルを発揮できたからである。そして、その要因の1つとして、グループ学習であったことが大きい。

安心安全の中で、自分のアイディアを言う。他人が賛同してくれる、認めてくれる、共感してくれる。ときに、違う意見が返ってくる。それにより、グループ内のメンバー間で、補完し合い、相乗効果を発揮し、グループとしてのアウトプットが最大化していく。

他者に対してひらくことが良いアウトプットにつながるんだなあ、と強烈に感じるきっかけとなった。

ある研修にて

9か月間、教育心理学や脳神経科学を学んだり、それを学校の授業に応用したりする研修に参加していた。研修時間の半分以上が対話で、自分たちで答えを創り出していくという大胆な研修は、参加というより参画という感覚に近い。

ただ、一番有意義だと感じたのは、研修時間そのものではなく、月1回の振り返りの機会であった。

自分がどのように成長したか?それに紐づく出来事は何か?いくつかのコンピテンシーはどのように変わったか?といった問いかけで自己整理していく。あるいは、その整理について他者からフィードバックをもらう。

この活動に自分は意味を大きな感じることができた。

どうしても目の前のことで忙しくなってしまうと、何をしていたのだっけ?結局自分は何ができるようになったのだろう?次回はどうすればよいんだっけ?と時間が経ってからふと我に返ることが多い。

振り返りは、それらの問いに適切なタイミングで答えていくものだ。

また、アウトプットやプロセスの振り返りだけでなく、感情や体の感覚の振り返りも大切だ。これらの振り返りで自分へのオーナシップが高まる。自分自身のハンドルをしっかり握り直すイメージだ。

それらが最終的に、学びを一人ひとりに帰着させる。そして、納得感の高い次回を描くことができる。

むすんで、ひらいて


他者に対して開くこと、自身で振り返りをすることは、切り離された事柄ではない。むしろ自己表現と内省が組み合わさり、繰り返されることで、ぐーんと成長するのだと思う。そしてそのとき、自分も、周りも楽しい。

ふと、童謡「むすんで、ひらいて」が頭に浮かんできた。手を結び、手を開く感覚はそれに近いのではないか。言葉が分からないときからでも、自分で自分の心をにぎり、他者に意識をひらく。そんな感覚を小さい頃から訓練をしているのだという勝手な解釈が生まれてきた。

3年間、こんなことを雑然とではあるが、考えてきたように思う。その環境をくれた周りの人たちに感謝し、この4月からより実践的に教育現場でチャレンジしていきたい。

この節目に、まずは自分から。むすんで、ひらいて。

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