MAF THREE vs Revopoint POP3 vs Mini

Matter & Form(MAF) THREE と Revopoint POP3 と Mini を使い比べよう、という趣旨の記事です。登場する機材は全部自腹切ってます。メーカーの宣伝じゃないよ。
スキャンはメーカー純正のスキャンソフトのその時点での最新版を使い、最も細かいメッシュが得られる設定で使っています。スキャン用のスプレーなどの細工もありません。


THREEの紹介

THREEはMatter&Form社(以後 MAF)の3Dスキャナで、MAFの3代目のスキャナなので「THREE」という名前らしい。

THREEはスキャンに可視光の構造光を使うことが特徴です。3Dスキャナで一般に使われる赤外光/青色光よりも外乱を受けやすい可視光を使う代わりに、比較的安価で調達しやすい高性能・高画素なカメラ用の撮影素子を使うことができます。

さらにTHREEはスキャナ内にRaspberryPi4を搭載しており、データ処理はスキャナ内(Raspi4内)で完結するため低スペックPCやスマホでもスキャンを行うことができます。
PCとRaspiが通信することになるため、スキャナとPCの接続は専用ソフトではなくWebブラウザ上で行われます。ネットワークには有線LANまたは無線LANで接続できます。

スキャナを制御するAPIが用意されており、外部との連携が考えられていることもユニークなポイントです。

さて、いつも通り性能ベンチマークをやっていきます。

ハードウェア

見たまんまなので詳しい解説は省略。

横にあるのはPOP3
左から無線LANアンテナ、ターンテーブル専用端子、LAN端子、電源端子、電源ボタン

スキャン品質

スキャン対象

比較のために、あえてスキャンしづらいアイテムを集めて性能を試すことにする。スキャン作業は条件を変えながら2~3回試行し、ベストな結果を選んだ。スキャンはすべて回転テーブルを使ったもの。手持ちスキャンは試していない。

1.石膏像
ディティールの再現度を評価しやすい。形状再現度を感覚的に比較することができる。

2.明るい色のレゴブロック 3.暗い色のレゴブロック
レゴは寸法が安定しており精度を評価するための安価な素材として優秀だ。さらに色による影響も評価しやすい。

4.コンセントのヤツ
正式名称不明。アース線は邪魔なので切り落とした。黒い部分とツヤがあるメッキ部分が混在しており典型的な3Dスキャンしづらい部品。細かいシボや溝がスキャンできるかどうかも評価項目のひとつ。

5.バイク部品
メッキされていて光沢があるうえアンダーカットが複数あり、3Dスキャンしづらい部品。

スキャン結果

上表の部位欠損は何かというとこういう状態。大部分はスキャンできたが一部はスキャンができない状態。この例だと黒いレゴブロックだけ形状を得られていない。
スキャンしづらいものをスキャンするためにセンサ感度やIRライト照度を上げていくことになるが、ノイズが乗り形状が崩れていく。それも限度があり、スキャンできなくなる。「部位欠損」というのはちょうどスキャンできる、できないの境目の状態。

スキャン1.石膏像

どれもうまくスキャンできている。詳細を見ていく。

THREEはメッシュ密度が高く、感覚的にはMINIクラスの以上の解像度がある。また、エッジがとてもシャープに出ている。画像内では下瞼や唇のディティールがわかりやすい。

スキャン2.明るい色のレゴブロック

THREEは全色ちゃんと撮れていますね。上面の凸部分もエッジがダレずパリッと撮れている。

色に依らずパリっと撮れており、これは個人向け3Dスキャナではどの製品も達成できなかった偉業です。感動です。

寸法精度も良いです。

スキャン3.暗い色のレゴブロック

THREEは全色ちゃんと撮れていますね。黒色も面が荒れてはいるが形状が崩れていない。

スキャン4.コンセントのヤツ

THREEは高品質なスキャンができている。

THREEは格が違う、とでも言うのだろうか、初見でとてもびっくりした。
①反射率に大きな差があっても撮れている(メッキとマットブラック)
②溝やシボを1つ1つキチンと撮れている
③プラグ(差し込む部分)の谷間にあり撮影しづらい部分の刻印も撮れる
既存の3Dスキャナでは達成できなかった問題がことごとく解決されている。

スキャン5.バイク部品

よく撮れている。THREEは撮れなかった部分、穴になっている部分を自動で穴埋めするので一部色が明るくなっているところは自動穴埋め(自動形状補填)の部分である。

部品中央の凹部内部が撮れたのはTHREEだけ。しかもさらに内側のM6内ねじまで部分的に撮れている。驚愕というほかない。

シャープエッジもこれくらい撮れる。

THREEのメリット・デメリット

THREEはスキャン品質が良い。他社の一般向け3Dスキャナに対して1ランクも2ランクも上のスキャン性能がある。(RevopointやCreality、3DMakerProなどに対して)
一方でデメリットもある。

THREEのメリット

  1. 解像度が高い

  2. 形状再現度が高い

  3. 寸法精度が高い

  4. 撮影できる反射率・色のレンジが広い

要するにスキャナとしての素の性能が高い、ということだ。

THREEのデメリット

1.データ処理が遅く不安定
THREEは内蔵したRaspberryPi4でデータ処理を行う。なのでPCに対して処理速度が劣り、実際データ処理に時間がかかる。
時間がかかるだけならいいものの、データ量が多いとハングアップして処理に失敗する場合すらある。そのうちRaspi4の上位モデル、あるいはRaspi5に改造してしましたいところだ。

2.ハンディスキャンが難しい
THREEは基本的にターンテーブルとセットで使うように作られている。
手持ちスキャンは難しい。THREEには「ターンテーブルモード」と「シングルキャプチャモード」の2つしかない。手持ちで連続的にスキャンするような使い方はできない。
シングルキャプチャを複数回行って、PCでデータをつなぎ合わせるような使い方になる。

3.キャリブレーションが面倒
ターンテーブルモードでは毎回キャリブレーションボードを使ったキャリブレーションが必要である。時間がかかるし毎回設置するのは面倒。

連結誤差

THREEのシステム構成により連結誤差(繋ぎ合わせ誤差)が最終的なスキャンデータの品質に与えるウェイトが大きくなっている。
連結誤差は下記参照。

THREEはリアルタイムのトラッキングを行っていない。ターンテーブルモードにおいても約10-15°ずつターンテーブルを回転させ、各角度でのシングルキャプチャを連結させてスキャンデータを得ている。
Revopointなど他の3Dスキャナは毎秒5~10回撮影し、都度位置合わせを行っている。リアルタイムで処理されるため連結時の位置ずれが少ない場合が多い。(まぁこれが原因で位置合わせが破綻するケースもあるのだが・・・)

ターンテーブルはまぁだいたい位置合わせが決まるが、後から位置合わせしようとするとまぁピッタリ合わない。THREEは大物スキャンになればなるほどつらい。ターンテーブルに乗る程度、せいぜい200mm角くらいの部品のスキャンが限度ではないかと感覚的には思う。

まとめ

Matter & Form のTHREEは素晴らしいスキャン品質を得ることができる3Dスキャナーだ。この品質は感動的ですらある。特に小物の精密なスキャンを得意としていて、その分野では個人用としてトップクラスの性能といってよいだろう。しかし大物スキャンに向かないなどピーキーな一面もある。

THREEは良いんだけど値段がね・・・2999ドルなんでね・・・個人用と言えるギリギリの値段として・・・胸を張っては言えんか・・・ちょっとね・・・(私はKickstarterで50%オフにて購入したので家計に致命傷を負うだけで済みました。)


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