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CR-Scan Lizard vs POP2

Creality CR-Scan Lizardと Revopoint POP2を使い比べよう、という趣旨の記事です。登場する機材は全部自腹切ってます。メーカーの宣伝じゃないよ。

TL;DR
CR-Scan Lizard ⇒使いやすいけどディープな使い方する人にはストレスかも
POP2 ⇒ 性能は良いがクセが強いピーキーな機体

ハードウェア

  CR-Scan Lizardのほうが一回り大きいし重いね。スペック通りです。両社とも付属品まで白/黒で統一されているので見た目は対照的ですね。

黒:POP2  白:CR-Scan Lizard
両者とも本体下部にネジがついておりカメラ用三脚が使用可能
分厚いね。
CR-Scan Lizardの接続コネクタは謎の5pinコネクタ。POP2は USB3.0 Micro-B。

 CR-Scan Lizardは3m程度のUSBケーブルでPCと接続する。USBケーブルは分岐しており、補助電源をコンセントからとる必要がある。PCのUSBポートからだいたい1m以内にコンセントが無いと接続がつらいかな。

 補助電源をコンセントにつなぐとCR-Scan Lizard本体のファンが動き始め、コンセントから抜くまで回り続ける。回転数制御は無いようで終始一定回転だ。そのおかげで本体が過熱することはない。
 POP2は補助電源こそなくUSBケーブル1本なものの、冷却ファンもないので使い続けると40℃くらいまで熱くなる。

ソフトウェア

 スキャンに必要なソフトを公式が配布している。この記事では2022/6/20時点最新Verを使っている。
CR-Scan Lizard用ソフト: CR Studio (V2022.5.19.0020)
POP2 用ソフト: Revo Scan (Ver. 4.0.1.0417b)
これらのソフトでスキャン作業からメッシュデータの出力まで可能。

ソフトウェアの動作の重さ、安定感

 CR Studioは比較的動作が軽く安定している。Ryzen9 5950XでCPU使用率は10~20%程度だった。
 Revo Scanはどんな環境であれCPUを100%食うストロングスタイルのソフトウェア。PCのファンがガンガン回る。たまにフリーズして落ちる。

 CR Studioは回転テーブルを自動除去する機能があるものの、スキャンアイテムのテーブルに近い領域も巻き添えを食って消されてしまう。

言語・翻訳

 どちらのソフトも日本語に対応しているが、CR Studioは機械翻訳クオリティなのでところどころ意味不明。私は英語で使っている。なお、Revo Scanは日本ユーザーが翻訳を担当しており、日本語設定で問題なく使える。

”明確な選択”ってなんだよ、Clear selection であれば”選択をクリア”では?

スキャン品質

スキャン対象

 比較のために、あえてスキャンしづらいアイテムを集めて性能を試すことにする。スキャン作業は条件を変えながら2~3回試行し、ベストな結果を選んだ。スキャンはすべて回転テーブルを使ったもの。手持ちスキャンは試していない。

1.石膏像 2.明るい色のレゴ 3.暗い色のレゴ 4.コンセントのヤツ 5.バイク部品

1.石膏像
 ディティールの再現度を評価しやすい。

2.明るい色のレゴブロック 3.暗い色のレゴブロック
 レゴは寸法が安定しており精度を評価するための安価な素材として優秀だ。さらに色による影響も評価しやすい。

4.コンセントのヤツ
 正式名称不明。アース線は邪魔なので切り落とした。黒くツヤがあり典型的な3Dスキャンしづらい部品。細かいシボがスキャンできるかどうかも評価項目のひとつ。


5.バイク部品
 メッキされていて光沢があるうえアンダーカットが複数あり、3Dスキャンしづらい部品。

スキャン結果

CR-Scan Lizardのほうがスキャン可能なアイテムが多い。

 上表の部位欠損は何かというとこういう状態。大部分はスキャンできたが一部はスキャンができない状態。この例だと黒いレゴブロックだけ形状を得られていない。
 スキャンしづらいものをスキャンするためにセンサ感度やIRライト照度を上げていくことになるが、ノイズが乗り形状が崩れていく。それも限度があり、スキャンできなくなる。「部位欠損」というのはちょうどスキャンできる、できないの境目の状態。

さて、結果を1つずつ見ていく。

スキャン1.石膏像

どちらもうまくスキャンできている。詳細を見ていく。

 POP2のほうがメッシュが細かい。(≒点群数が多い≒精度が高い)
耳の上部や鼻根(鼻筋と眉間の接続部)の再現度はPOP2のほうが良い。Lizardは実物より細くなっている。

スキャン2.明るい色のレゴブロック

POP2は所々黒いが、細かいメッシュが集中しているだけでスキャン品質が悪いわけではない。

 POP2のほうが全体的に良いディティールが得られた。比較すると特に上部凸の品質が良い。
 寸法精度もPOP2のほうが良い。スキャンしたデータをCAD上で数点計測し、平均をとったもの採用した。データのバラつきは平均値から±0.15mm程度だった。実物の寸法はマイクロメータで計測している。

レゴブロックスキャンデータの寸法精度

スキャン3.暗い色のレゴブロック

 POP2は一応、形になっているだけでダメダメですね。

スキャン4.コンセントのヤツ

 POP2はスキャン不可能だった。Lizardではスキャンできたが、コンセントの金属部はスキャンできていないし、側面の意匠もスキャンできていない。


スキャン5.バイク部品

 POP2はスキャン不可能だった。Lizardではスキャンできたが、実用的なデータは得られなかった。

まとめ

 さて良い3Dスキャナとは何だろうか。私はこれらの要素を重視している。
1.スキャンできないモノが少ない
  ⇒ 黒いモノや光沢があるモノが撮れる
2.撮りなおしが少ない
  ⇒ スキャナとソフトの動作が安定している
3. 一度のスキャンでより広い領域を撮影できる
  ⇒ スキャンエリアが広い
4.スキャンデータの処理がスムーズに行える
  ⇒ ソフトウェアの設計が洗練されている
5.スキャン精度が良い
  ⇒ 形状精度、寸法精度が良い

 CR-Scan Lizardは、黒いモノや光沢のあるモノに対応できる。また、ソフトウェアも洗練されており動作が安定していて、CPU負荷も軽い。また、ワークフローに沿ったソフトウェア設計になっており使いやすい。
 POP2はスキャン精度が良い。また、スキャンするエリアが広く、前後方向の許容範囲も広い(映る範囲が広く、ピントが合う範囲も広い、というイメージ)

総評

CR-Scan Lizardの良いところ

 ・撮れるものが多い
  ⇒ 3Dスキャナが苦手とする黒色や光沢、金属に強い
 ・スキャンソフトの出来が良い
  ⇒ とりあえずソフトの指示通りにやれば撮れる、動作も安定。

POP2の良いところ

 ・精度が良い
  ⇒ 形状精度、寸法精度が良い
 ・ある程度大きいモノもスキャンしやすい
  ⇒ スキャン範囲が広く、ピントが合う範囲も広い
 ・ワイヤレス接続ができる
  ⇒ これまで触れていなかったがPOP2はワイヤレス運用ができる
  ⇒ その場合、電源としてモバブを接続する必要がある

CR-Scan Lizardは、とりあえず3Dスキャナが欲しいヒト、1台目におススメ。POP2は精度が欲しくて、関連資材やPCにも投資できて忍耐強くDIYに慣れたヒトにおススメ。


~~~~~以下読まなくてもいいところ~~~~~~

CR-Scan Lizardの短所

 ・重いデカいうるさい
 ・スキャン可能領域狭すぎ
 ・感度設定が4段階はちょっと不便。ゲインをもっとくれ。
 ・このスペックで手持ちスキャンをうまくできる気がしない
 ・12V補助電源ってなんで?なんでファン常時全開なん?
 ・ワイヤレス運用できるようにしてほしかった
 ・テクスチャをスキャンするには別売りキットとスマホかデジイチが必要
 ・付属テーブルサイズ200mmを超える大きさのモノのスキャンは苦労する気がする(おっさんの勘)

POP2の短所

 ・ハードウェアとソフトの動作が不安定すぎ。
 ・ソフトウェアのデキがイマイチ。トラッキングが弱い。
 ・というかCPUパワー食いすぎ。
 ・デカいものをスキャンすると5950Xで力負けするのなに?
 ・本体熱くなりすぎ。低温やけどしそう。
 ・黒いモノ、光沢に弱い。スプレー使うほかない。


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