e-sports大会における賞金授与について消費者庁に問い合わせてみた結果

取り急ぎ、簡潔に。


はじめに

先日、JeSU(日本eスポーツ連合)の管轄内の高額賞金が出されるゲームの大会で、規定により賞金を満額受け取れない選手が複数発生するという事案が発生しました。
もはやその事実関係については今更私が書くまでもないと思うので、必要最小限簡潔に述べると、
・ライセンスの付与を拒否したため規定により満額受け取れなかった選手
・15歳未満であるため規定により満額受け取れなかった選手
がそれぞれ出てきた。以上です。

これを巡って各方面様々な議論・論争が起きているようですが、大体以下の4派閥に分けられるでしょう。

1:賞金受け取れないなんておかしいよ派
2:賞金受け取れないのは規定に了承しているから仕方ないとしてその規定がおかしいよ派
3:賞金受け取れないのは規定に了承しているから仕方ない、他のことは知らないよ派
4:賞金受け取れないのは規定に了承しているから仕方ないし、規定は妥当だよ派

議論の皮切りとなったのは1の意見が噴出したことで、当初はそれらに対する3の意見が見られましたが、
徐々に2と4の派閥間での論戦にシフトしているようです。
さて、まず筆者の立場を明らかにしておくと、
2「賞金を受け取れないのは仕方ないが、規定がおかしい」派になります。
1は感情論としては一定の理解を示しますが、論理的な尺度でいえばもはや論外なので考慮しません。
ここでは起きたことではなく規定の妥当性にのみ触れます。

本当は4の派閥が勢力を強めるきっかけとなった記事にも丁寧に一つ一つ触れていきたいのですが、此度は可能な限り早く情報を発信することを第一の目的と設定するため致しません。
というより、消費者庁回答を聞いてその必要すらないと判断いたしました。

消費者庁問い合わせまでの経緯


9/17夜の時点で、e-sports大会における賞金授与と景品表示法の関係について議論は進めども、人によって言っていることがまるで異なり、もはや誰が事実を語っているのかが、条文を読んでも過去の景品表示法に関する記事を読んでもまるで判断がつかない状態となっておりました。
ならば本件について最も正しい情報を提供してくれるであろう消費者庁に直接聞くのが最短と判断し、9/18 13:40に消費者庁大代表へ電話での問い合わせを試みました。

はじめにいくつか質問があり、私が消費者で、既に起きている案件についての相談であることを答えると、「個別の消費者からの相談は各消費者センターへ委ねられる」と告げられました。
「それならば私はこれから大会を主催する可能性がある者として、法解釈に関する相談を行うことができるか」
と切り口を変えると、「相談というより質問への情報の提供ならば可能」との返事を頂いたので、その方向でお願いしました。


次に個別の担当へ電話が繋がり、いくつか質問を投げかけると、e-sports大会案件を担当する方がいらっしゃるとのことで、更に電話が回ることとなりました。
ここから先は、その担当者との約25分間の通話の中であった質問と回答のまとめとなります。
但し、以下3点には必ずご留意ください。
・あくまで「これから主催する場合の質問」に対する回答であり、既に起きている具体的事案への回答ではないこと

・ほぼ全ての回答に共通することとして、一律にこうであれば賞金授与の可/不可といった判断はできないと強調されたこと

・質問が前後しているものをまとめたものであり、一言一句を書き表したものではないこと
その上で、これ以降の文章へお進みくださるよう、お願いいたします。

①ゲームの基本無料・有料(買い切り)・有料(所謂pay to win)により賞金授与の可否が決まるか。


→まず、大会自体が仕事への報酬として認められるかの判断が先にあり、もしそうでないと判断された場合にはゲームの無料有料などを含めて、取引の付随性(賞金の授与が、商品の購入を消費者に促すか、また主催者へ利益をもたらすか)による判断が行われる。基本無料であれば付随性が否定されやすいのは事実だが、一律に必ず無料なら可、有料なら不可といったことはない。有料の中での買い切りかpay to win かも同様。

②仕事に対する報酬として認められる基準は何か。


→興行と認められる場合は賞金の授与が可能であると消費者庁は考えている。
「観客に対して選手がその技量をもって魅了するようなイベント」であれば興行として基本的に認められる。
その観客は実際に会場にいる者か、配信などの視聴者かは問わない。


(追加質問)ではどのようなイベントは興行として認められないのか。
→「観客もなく、参加者が弱い人ばかり…といったイベントであれば興行とは言えない可能性が高い」


(追加質問)そういった条件を満たせば労務契約を結んでいると言えるのか。
「労務契約」ではない(強調)。あくまで客観的に「仕事に対する報酬」であるかの判断。

③プロライセンスの発行などが興行として認められるのに必要か。


→必要ない。但し、より「仕事への報酬」として判断はされやすい程度の効果はある。

④参加者の限定性が賞金授与の可否に影響があると耳にしたが、それは事実か。またどのような基準か。


→明確な基準はなく、大会の上位者への賞金授与であれば問題ないとされやすい。


(追加質問)たとえば大会参加者へ抽選で賞金を配る、といった形式であると限定性に引っかかるということか。
→その可能性は高くなる

⑤主催者がゲームの提供元か第三者かによって賞金授与の可否は決まるのか。


→これも「仕事への報酬」についての判断がなされ、そうと認められない場合に「取引の付随性」の判断基準となる。また、取引の付随性は必ずしも主催者の属性によって決まるものではなく、「当該商品の取引によって主催者が直接的または間接的に利益を享受するか」で決まる。


(追加質問)主催者が提供元の子会社だったりすると問題となることもあるということか。
→子会社かどうかもそうだが、仮に第三者であっても商品の提供者から利益を得るのであれば取引の付随性が認められる場合もある。

⑥参加費の徴収により賞金授与の可否は決まるか。


→必ずしもそうであるとは言い切れないが、これ以上は賭博に関する話になり、景品表示法の管轄ではないためこちらでは案内できない。

⑦選手が15歳未満の場合の賞金授与の可否はどうなるのか。年少者の労働に関する労基法の規定内なら可能か。


→景品表示法とは別の話となるのでこちらでは判断できない。

⑧選手が外国人かどうかによって賞金授与の可否は決まるか。


→関係ない。


(追加質問)景品表示法の規制対象は企業であり顧客ではないと認識しているのだが、合っているか。
→合っている。

⑨e-sports大会における商品授与の可否について、ネット上の情報では2017年辺りまでとそれ以降で論点が変化しているように見えるが、消費者庁の見解そのものは変わったのか。


→変わっていない。

(追加質問)であれば、情報発信者によって質問やそれに対する回答の受け取り方が異なるということか。
→そうなる。




以上、ここまでが私からの質問と消費者庁からの回答のまとめになります。

あとは皆さん好きにやってください。


小言

ここから先はそれを受けての筆者の意見を簡潔に述べます。


「JeSUやその擁護をする人達が言っていること(+2016くらいまでのそれらへの指摘)とだいぶ違いませんか???????」

あたかも無料有料のことや、参加者の限定性や、主催者の属性のそれぞれをクリアしないといけないみたいな言い草でしたけど、実際は興行性のクリアで解決するようにしか見えないのですが…

「海外在住の外国人に日本の法律は適用されないとか言っちゃう人の記事絶賛している有名どころ、大丈夫ですか??????」

「ここまで正確な記事は見ない!」…? 逆に何が正確だったのですか。

「貴方たちは(どの派閥に属する者も)誰にその話を聞いたんですか??????????」

少なくともソースや引用元くらい出しましょうよ。e-sportsの将来憂う前にネットの使い方学びましょうよ。

「つーか本当のところよくわからないなら調べませんか??????」

なぜ格ゲーともJeSUライセンス関連の大会とも無縁の私が少し時間をかければできることをしようともせずにポジショントークに必死なんですか。


そんなんだから「e-sports後進国(笑)」とか揶揄されるんですよ。私だってそういう単なる嘲笑を目的とした何も生み出さない人間と同じこと言いたくないわけですよ。でも言われるに値してしまうような現実があるんですよ。


あまりにテキトーな物言いにほとほと呆れているのは傍観者ですよ!!

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