リヴァイヴァル2_4

第三回コラボ祭り リヴァイヴァル【悪】/加藤ヒロコ@鋭画計画&クラゲ男爵

 

夜の廃工場。
 工事用クレーンの上に月を背にした2対2の人影が見える。
 クレーンの先端の方の二人のうち、後ろで跪いている少年は身にまとっているスーツに血がにじんでおり、息が荒い。
 彼を守るように立っている男“アウトライン”も傷を負っている。
 一方で、対峙している2つの影、大柄の男と赤いジャケットを着た青年の二人が無傷で立っている。
 大柄の男は腕が発達しておりシルエットがいびつである。かたや青年の方はショットガンを片手に持っている。

 負傷している彼”メトシェラ”はこの世界でヒーローとして登録されている。
 彼にとってヒーローとは無敵の存在でなくてはならない。そして、その力を得たはずだった。
 しかし現実は違った。味方の足を引っ張り、傷を負わせるどころか負傷した味方に自分を守ってもらっている状況だ。
 これのどこがヒーローなのだろうか。
 「無様だな」
 対峙している大柄の男が言い放つ。
 現実の世界には存在しないであろう人の頭に首から下をトカゲの鱗ような物に覆われた大柄の男“リザード”が笑っている。
「そこから2人仲良く飛び降りれば見逃してやるよ。おまえらヒーローなら重症程度で命までは落とさないだろ」
 メトシェラを守るように立っているアウトラインが不敵に笑う。
「ふっ…ヒーローが尻尾を巻いて逃げ出すわけないだろ。トカゲ野郎とは違うんだ」
「その状況で逆転できるもんならやってみろよ」
「望むところだ」
 アウトラインがヘルメットを介した無線通信でメトシェラにだけ聞こえるように伝える。
「俺が時間を稼いでる隙に逃げろ」
 メトシェラも無線で返す。
「嫌だ、俺も戦う」
「その傷で何が出来る。いいから逃げろ。俺も頃合いを見て脱出する。いいな」
「でも…」
 無線が強制シャットダウンされる。
「アウトライン!」
 メトシェラが叫ぶがアウトラインには届かない。
 リザードに攻撃を仕掛けるため、既に飛び出しているアウトライン。 
「忠告しただろ」
 トカゲ男がそう呟くとアウトラインの剣は鱗に弾かれ、大きな右腕によって捕らえられていた。
 大きな右腕で頭をわしづかみにされるアウトライン。
「ぐっ」
 うめき声を上げるアウトライン。
「お前から先に行け」
 リザードがそう呟くとヘルメットはクシャッと音を立て圧縮された。
 そして、そのまま放り捨てる。
 落下していくアウトラインのシルエット。
 メトシェラが絶叫する。
「さぁ、どうする。自分から飛び降りるか、俺に殺されるか」
 叫びながら立ち上がるメトシェラ。
 彼の右腕が輝き始める。
「お、後者か」
 リザードに向けて走り出すメトシェラ。
 余裕の表情を浮かべるリザード。
 
「時間だ」

 リザードの背後から声がする。
 それまで黙って眺めていた青年が懐中時計を確認し、ポケットにしまう。 
「なに?」
 リザードが青年の方に振り向こうとする。
 メトシェラの攻撃が届くか届かないかの距離に来た瞬間、リザードの頭が消えた。
 正確には“弾けて”消えた。
「なっ」
 リザードの頭が消えたことによって、後ろに立っている青年の姿が見える。
 ショットガンを放った赤いジャケットの青年の姿が。
 制御する頭を失った巨体がバランスを崩し、暗闇の中に落下していく。
「(仲間割れ?なんだ?何が起こっている?)」 
 メトシェラが状況を飲み込もうとしていると青年が再び口を開く。
「君は殺さない。貴重な観測者の一人だからね」
 そう言って再びショットガンを放つ。
「え」
 メトシェラの身体がぐらりと体勢が崩れる。
 視線を下にずらすと、あるはずの場所に右足がない。
 そのままクレーンから身体が投げ出され、落下していく。
 青年は顔を覗かせており、目が合う。
 ヘルメット越しなので正確には目が合ったような気がする…のだが。

「君は僕と同じように生き返るかな?」

 そう聞こえた。
 ゆっくりと、そして、速度を増して落下していく中、ヤツの呟きがハッキリと聞こえた。
 そう確かに聞こえたんだ。

終わり


ヴィラン設定『リヴァイヴァル』


外見・特徴

赤いジャケットを羽織っており、ネクタイはトリニティーノットで結んでいる。
細い鎖のついた金の懐中時計を身につけている。
懐中時計の時間はあっておらず、ランダムに針が動いている。
全て時間通りに事が運ぶよう、計算しているかのように見せかけるのが上手く、言葉巧みに攪乱していく。
ヒーローと対峙する際、動きが芝居がかる。
細い鎖は伸びる。攻撃や脱出の際に駆使する。

見た目は青年だが、一度精神を破壊された時に性別の概念を失っており、精神は男性であり女性である。

正体

アストロで精神を破壊された末期癌患者であり、元々死を宣告されていたため精神が完全に破壊されなかった。
1度死んだが、2度目も3度目も変わらない。肉体が死んでゲームオーバーになるのに比べたら精神が死ぬのは大した問題ではない。

数年前からベッドに寝たきりでデバイスが常に接続されている。
家族はおらず、財産が続く限り延命措置を行う契約を病院と交わしている。
ゆるやかに死に向かっており、アストロで余命を過ごしていた。

余命宣告後の闘病日記をアストロで書いていただけだったがヴィランによって殺される。
だが、元々死を受け入れており完全に精神を破壊されなかった。
その結果、アストロで再び目覚めたときリヴァイヴァルとして蘇ることになる。
※過去の記憶は一切ない

他のノーツと違い自らログアウトすることができない。
現実世界での死の時間がくるまでさ迷う。
※一度、精神を破壊されたときにログアウトしているのだが、どうやって再ログインを果たしたのかは不明。

目的

自分を破壊したヴィランは既に抹殺しており復讐といった目的は一切持ち合わせていない。
むしろアストロで死にゆくだけの自分を生まれ変わらせてくれたことに感謝している。

ノーツを観測者・記録者として考えており、自分の存在を認めさせることを目的としている。
そのため対峙するヒーロー・ヒロインに存在価値を見いだし、自分の悪事を広める、そして自分を存在させるためだけにヒーローを生かしている。
一方で必要のないと判断したヒーローは容赦なく殺害する。
ただし、ヒーローの中でもメトシェラだけは特別な存在として認識している。
他のヒーローは全滅させても最後まで生かし続けるヒーローとして(観測者)として考えている。

また、アストロでしか生き延びていられないため、アストロを破壊し、消滅させようとするヴィランを抹殺することもある。
そのため、他のヴィランからも狙われている。
ヴィランも観測者の対象となるため生かされているヴィランも存在する。
本人の中にルールは存在するのだが他のヴィランからすれば敵味方関係ない厄介者として認識されている。

自らが死にゆく直前まで観測者に恐怖を与え、死後も精神を駆使するアストロにおいて自分の存在を確立するのが狙い。
また、賛同者を生み出し増殖させることで生き長らえようとする。


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原作・キャラクターデザイン/
加藤ヒロコ@鋭画計画→https://note.mu/acute_project

イラスト・キャラクターデザイン/
クラゲ男爵

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