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レビュー「灼熱の小早川さん」

田中ロミオの作品を読み続けると、
彼の好みが分かったような気になってくる。

人と人との関わり合いから産まれる目に見えないモノ…関係性、空気、物語が好きなのだろうと思う。

持って生まれた性質や親と言った背景を持つ人間が、
何を考え何を為すかを描くのが好きなのだろう。

ペンネームからも分かる通り古典演劇をオマージュした展開も多く、
かと思えば科学技術にも精通(誤字)している。

人、モノ、環境を掛け合わせ、田中ロミオ独自の式が化学反応を、その解を描く。

全ては主観だが、多感な高校生時代にクロスチャンネルに触れて以来、僕はずっと田中ロミオのファンなのだ。

そんな僕が思うに、田中ロミオの描く学園物には、
おそらく彼が過ごした(過ごしたかった)青春像が詰まっているのではないかと思う。

この物語からも、青いだけではない、時に鮮やかな赤色、時に鬱屈した灰色、様々な彩りを感じ取ることができる。

それしてこれもおそらくだが…

前半、中盤前半、中盤後半、ラストと、おそらく執筆時期が異なるように思われる。

田中ロミオ主人公特有の言動(謎の造語、妙な口調)が、明らかに増える場面があるのだ。

特に後半から突然増える。
これが何を指しているのか?
おこがましいが、それを考察してこそのファンではないか。誤解を恐れずに書くならば、

序盤〜中盤は外行きの顔だ。
誰が読んでも読みやすい、商業の顔だ。
この文体は本当に読みやすく、解釈の相違も無い。一般的な物書きのプロの文章だ。

おそらくそのどこかで時間の断絶があり、
氏は締切に追われたのだ。

そして(おそらく)彼本来の顔を出す、後半戦。
一体中盤までのクールな主人公はどこへやら。精神的に不安な人間の内面を書かせたら氏の右に出る者はいない(断言)。
勢いのある文章が絶え間なく踊る。いつまでも読んでいたいと思わせるこのロミオ節…。

そして急速に風呂敷が畳まれるのだ。

本来は上下巻構成にして丁度良い具合のボリュームかと思うが…おそらく大人の都合があったのだろう。

だがそれも含めて田中ロミオなのだ。
氏の描くモノは全て愛おしい。それがファンというものだ。
今回も、読んでよかった。

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