画力考察 ~神絵師になる方法~
画力とは何か
画力というのは定義がはっきりせず、曖昧なものです。しかし、「人生の中で絵を描くことに捧げた時間の合計」によって、便宜的に画力を数値化できるのではないか、というのが私の仮説です。
つまり、
1時間のおえかき=1画力
です。
1000時間描いた人なら画力値は1000、10000時間描いた人なら画力値は10000ということになります。ちなみに、私の画力値は3500程度です。
もちろん、上達スピードは人それぞれですが、普通の思考力を持った人間が普通の向上心を持って試行錯誤していれば、多くは画力値に比例した実力になるはずです。
そして、時間を積めば積むほど、個体間の誤差は集約していくでしょう。
事実として、画力値10000を超える神クラスの絵師は皆、甲乙つけがたく上手いです。
というより、ある一定以上のレベルになると、よほどの審美眼がないと技術レベルを正確に測ることは困難であり、素人目には、いや並のイラストプロからみても、理解を越えた美しさであることでしかわかりません。
だからこそ、彼らは神絵師と呼ばれるのでしょう。
???「私の画力値は52万です」
私の主観と絵仲間との与太話から画力値の目安を基準化すると、以下のようになります。
画力値1000→なんとか人に見てもらえる
画力値1000〜3000→がんばれば同人誌が出せる
画力値5000→アマ上位層
画力値5000〜9000→プロレベル
画力値10000→大物絵師
画力値20000〜→誰がどう見てもうまい
基点となるのは、画力値5000以上です。
だいたい5000時間描いている人は、ほぼ例外なく見栄えのよい絵で高い客観的評価を得ています。
Twitterでよく流れてくる数千RTのイラストのボリュームゾーンはここです。
次の基点が10000時間以上。ネットお絵描きマンの最上位クラスである神絵師と呼ばれる人たちはここに属しています。
私も含め、絵の出来や評価に悩む人のほとんどは画力値5000未満です。
言ってしまえば、絵でチヤホヤされたければ画力値5000を目指して描き続ければよいのです。
さらに神絵師になる方法というのは、画力値10000、確実を期すなら20000に達せればいい、という身も蓋もない結論になります。
余談ですが、イラスト生成AIの一枚絵は画力値4000〜5000相当だと思われます。
事実として、私の画力値は3500ですが、イラストAIには負けています。
過去の実験では、AI生成イラストと手描きそれぞれで同じキャラ同じ趣旨の絵を同時期にpixivにあげたところ、いいね数でAIに圧倒されました。
(私のPixivフォロワー数は3600人です)
とはいえ、5000時間というのは相当な苦労です。
仮に毎日10時間休まずに描いたとしても、1年で得られる画力値は3650。 もっとも、学校や仕事があれば、物理的に不可能な数字です。 趣味なら、1年1000時間(1日約3時間)も描ければ限界に近く、その半分の1年500時間(1日1.5時間)でも御の字でしょう。
すると、画力値5000に達するには、5〜10年の月日が必要で、画力値10000なら10〜20年が必要です。
生涯かけても画力値5000に届かない人が大半でしょうし、画力値10000など尋常ではありません。
感謝のおえかき10000時間とでも呼ぶべき、フィクションじみた数字です。
画力と人生
ここで少し切り口を変えてみます。
果たして高い画力値を得ることは、幸せな人生を送るのに役立つのでしょうか?
これについては、やや疑問が残ります。
実は(SNSでチヤホヤされるのに必要な)画力値5000を越えることは、必ずしも良いとは限りません。
なぜなら、人生の時間は有限で、若い時節の5000時間というのは趣味の域を超えて実生活へ負担を強いるからです。
つまり、絵を描けば描くだけ、他のなにかができなくなってるのです。
特に、画力値10000を越える神クラスの絵師は、莫大な画力の糧として大事な人生経験を失っています。若ければ若いほどそうです。
絵描きの世界に籠もっていると忘れがちですが、きれいなアニメ・マンガ的イラストを描くために、数千時間分の受験勉強や資格試験の勉強や恋や仕事や友人関係の喪失は妥当な対価なのか? と、社会通念に照らし合わせて考えれば、是とはしにくいでしょう。
その上、絵だけうまくなっても仕事にならない問題もあります。
絵がうまくても絵以外の理由で仕事にできない人は大勢います。
よしんば、仕事にできても、クライアントとトラブって縁切りされる人もいます。
画力は卓越しているものの、絵以外のことが何もできないから、仕方なく絵で食っている人もいます。
これらは、彼らの先天的な能力不足に起因するのではなく、絵に人生経験を食われた結果であるかもしれません。
クリエイターは社会常識がない人が多い、とよく言われますが、考えてみれば当然のことです。
数千時間の人生経験の喪失によって、本来当たり前に得られるはずだった社会常識やコミュニケーション能力を持たないまま大人になると、会社員やフリーランスとして「普通に働く」ことが困難であるからです。
こうして考えると、おえかき道というのはメフィストフェレスとの取引めいていると言えます。
あなたは神絵師になりたいですか? それとも、人間やめますか?
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