自分探しに効く哲学「自分は何者でもない」

私は20代の頃から哲学書や宗教本などを読むのが割と好きだったのですが、そのような本を読んでいくうちに身に着けた考え方があってそれは「自分は何者でもない」という哲学です。

自己実現、承認欲求、自分探し…21世紀の幕開けからこんな言葉がはやり出した気がします。なぜかと言えば、インターネットとSNSの普及、グローバリズム経済が加速してオーバーに言えば、それまでの国家、民族、価値観が変化、パラダイムシフトしているからです。皆、何に依って立つべきなのか…情報の海の中で必死に溺れないように泳ぎ続けている…という感じでしょうか。

20世紀末の共産国家の続けざまの瓦解は、西側の資本主義経済の唯我独尊状態を生み出し、人々はオンリーワンとなった資本主義社会システムの中で矛盾を感じつつも生活に追われ「自分って何」という疑問の答えを先送りしているかのようになっています。

「自分とは何か」は物凄い問いです。それは「宇宙とは何か」という問いと同じくらいの質量を持った哲学的な深遠な問いです。そんな問いに答えられた哲学者は実は歴史上一人もいません。確かに色々な仮説は存在するし、人によってはこれが答えだと悟れた人もいるかもしれません。でもそれは哲学者の膨大な労力の上に築かれたラビリンスのようなものなので万人向けではないかもしれません。
そこで私なりに考えた答えが冒頭の「自分は何者ではない」です。

私はその問い自体を答えとしました。

「自分とは何か」と問いが現れたその時点での自分の中の答えは「自分は何者でもない」です。そう、自分自身で「自分は何者でもない」と考えているのです。ですが「自分は何者でもない」を問いではなく答えとしてしまえば「何者かでなくてはならない」と言う呪縛から解放されます。「人から見て自分は取るに足らない存在」と設定しておけば逆に何か人の為になることをしたときにプラスにしかなりません。もしここで「自分は正義で人助けをする人間だ」と設定してしまうと自分でその縛りに縛られてしまいます。
そうではなく「自分は何者でもない」としてそこからの行為、行動のみを行っていくと何より気が楽です。誰に褒めてもらうためでもない「自分がやりたいからやる」という行動は強いです。なぜなら失敗がないからです。達成すべき「褒められる」「評価される」という目標を持たなければ自分のやりたいことをやる気持ちのよさだけで行動できます。

「そりゃそうだ、結果を出さなくていいなら誰も悩まないよ」と思うかもしれません。そうです、その通りです。実は、悩みの本質はそこなんです。「自分は何者か」が問題の本質ではなく「自分はどんな結果を出せるか」が本来の悩みなんです。自己実現、承認欲求、自分探しの本来の悩み、目的は「どんな結果を出したい」です。「なりたい自分」ではなく「出したい結果」を探しているのです。結果とは評価や、お金や、人から感謝される…と言う事になります。つまり「結果」とは人にどんな事をしてあげられるか、人はどんな事を求めているのか…を考える作業です。その答えは当然「自分」の中にはないのです。外の、社会の、赤の他人の中にあるのです。そうして「自分の外にある他者」と繋がれた時、仕事として成功した時に初めて人は「自分とは何か」を知るのです。

面白い話で人を楽しませれば「面白い人」、医療で人を助ければ「医者」、マンガを描いて読者が喜べば「マンガ家」…などなどです。「自分が何者か」は「自分が成る何か」ではなく全てその時その時の「行為」に依るという事がわかると思います。例えば政治家も選挙に落選したらその後は「無職」となります。私もマンガを描いてない時は自分をマンガ家だとは思っていません。「何者でもない自分」に戻るだけです。
ひと仕事するたびに自分を白紙に戻す。前のめりになって作り上げた作品からグッと身を引いて自分をニュートラルに戻す。それで次の作品に何も引きずられずに入ることができるし、何かを背負わなければいけないという事もない。また本来の自分に戻ってゼロスタートするだけです。「次は何をしようか」と自分の行動だけを考えます。もちろん「そこに読者はいるのか?」、「あんまり尖り過ぎてもダメだぞ」…もっと言えば「この作品で稼ぎたいのか?」それとも「カネよりも自分のやりたいことを優先させたいのか?」などと結果を出すべく自問自答してキャラや物語を考えます。

あえて「追いつけない自分」を設定して頑張れる人もいるのかもしれませんが、私のように「俺フリーター」と言って生活すると誰の目線も気にせず楽しく仕事できますよ…というお話でした。

※「自分は何者でもない」…って実は自分では結構カッコいい中2病ワードでもあるなと思っていたり…マンガなどで敵ボスキャラがいいそうなセリフですよねw

行為、行動が何より重要と言う意味では私が描いた「プラグマティズム」も同じテーマです。興味があったらご一読ください♪

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?