💾自社ミニチュア好評御礼＆漢たちのシルバニアを救え（ハーミットイン近況22年11月）

<<<ハーミット・カウンシル総合もくじ
<<<ペイント大全総合もくじ
<<<🔰趣味人への道（初めての人はこちら）

評議会メンバーのみんな、元気にしてるかい？今月読み始めてくれた君の為に説明すると、この記事は毎月１回、ハーミットインが創業した4月19日にちなんで、毎月中旬に書いている近況報告記事だ。

ここでは、その時々にハーミットインで起こっていること、俺が最近考えたり、やっている事の話だったり、評議会メンバーには伝えたい深い話題とかを書いている。今までの近況は #ハーミットイン近況 のnoteハッシュタグ検索で全部見られるよ。

それじゃあ、今月の近況といこう！

今月の謝辞

今月もハーミット・カウンシルを購読してくれて、また、商店で買い物をしてくれてありがとう！　ハーミットインがビジネスとして継続できているのは、継続的に購入してもらっているからだ。継続的に売上と利益が出てこそ、俺はスタッフたちに報酬を支払い、noteに原稿を書き続け、商店に新製品や補充品を仕入れ、自社ミニチュアレンジを出したり、デスグロの更なる展開にリソースを回すことができる。

君が購入して支援してくれるからこそ、ハーミットインは機敏かつ大胆な動きを見せるスモールビジネスとして継続できている。だから、ありがとう！

長い道のりだが、確かにそれは始まった！

まだ持っていない人は、ぜひ手に入れてほしい。俺の理想とするゴブリンたちだ！
購入はここから！

2月に自社ミニチュアレンジ開発の話をぶち上げ、先月に初期抜き、今月に一般販売に至ったが、もちろんこれで終わりではなく、始まりだ。みんながどんなペイントで仕上げるか、ケビンともども楽しみにしているよ！

当たり前の話だけど、ミニチュアを自分たちで作ると言うことは、当然初期投資がドガーンとかかる。長期間に渡って安定した販売実績が継続して初めて初期投資回収が叶い、そしてその後は材料、製造、輸入コストを賄いつつ、ようやくちゃんと利益を出せるようになるんだ。先月・今月で購入してくれた人たちのおかげで投資金額回収は順調に進んでいるけど、利益は出るのはまだまだ先のこと。でも、それでいい。長い目で見てこその自社ミニチュアレンジさ。

その意味で、ゴブリンたちを今後もっと多くの人の手にとってもらえたら嬉しいし、そのためにも、もっと多くの人にこのホビーの楽しさを発信していきたいと思っている。引き続き、投資上の無理をしないよう注意しながら、少しずつ自社ミニチュアレンジを拡充していきたい。これからもぜひ応援してね！

漢たちのシルバニアを救え

俺がハーミットイン商店で大切にしているのが、小道具ミニチュアのレンジだ。冒険者やモンスターのミニチュアは確かに素晴らしいし、冒険シーンやコレクションの中核をなす。同時に、市井の人々を表すミニチュア、扉や樽、家具丁度品の数々は、彼らに生活感・臨場感・実存感をもたらす絶好の脇役たちだ。これらの脇役や小道具は、いわば映画のエキストラや美術の部分であり、スカイリムやウィッチャーなんかでも、それはよくわかると思う。

かっこいいミニチュアには、かっこいい背景が要る。そこに扉が一つあるだけで、その奥に物語が広がるものだ。その先に待つのは脅威か？あるいは守るべきものなのか？

かくて『漢たちのシルバニア』は、商店でも多数のミニチュアを抱える一大レンジだけど、こうした小道具が豊富なブランドやメーカーは元々少なく、世界的に減少傾向にある。デジタル造形品がパテ造形品を押しやり、妙にスッキリカッチリとした工業製品然としたアイテムが増えている一方、パテ造型のメーカーは苦戦している現状だ。安さに物を言わせる粗悪品も出てきているので、真面目にやっているところは売上を立てられなくなり、廃業するか、生き残るために小道具レンジを整理するところが激増中だ。

小道具ミニチュアは、造形するのにめちゃくちゃ時間がかかり、技術も必要で、大型化するのでコストも高い。それでいて、ヒロイックな冒険者や恐ろしいモンスターに比べて売れ行きは芳しくないので、価格は高めになる。その写真映えから、SNSでは広がりやすい。だが、「欲しい」人がどれだけ沢山いても、実際に「買う」人が少なければ、ビジネスは潰れるのだ。

いいものなんだ。欲しい人は多い。憧れる人も多い。
でも、実際に売れなければメーカーは潰れる。
トマリリオンの悲しい結末は、
パテ造形の小道具ミニチュアという文化の危機を示しているのだ。

その意味で、今の各メーカーが大規模な展開に二の足を踏み、その地味さと報われなさから、ミニチュアデザイナー本人が喜んで手がけるレンジでもない、というのも事実だ。デザイナーも人の子である。同じデザインをするなら、扉や棚じゃなくて、かっこいい冒険者やモンスターを作りたいのだ。

ミニチュアはともかく、小道具をチープにすませる趣味人は少なくない。とはいえ、味わいと凄みのある造形が光る小道具ミニチュアは世界的に減る一方だ。このままでは、デジタル造形の廉価品や粗悪品に完全にとってかわられてしまうだろう。それは時代の流れなのかもしれないが、そんな流れはクソであり、全然俺は納得いかない。

危機は目前だ。たとえばデスグロでよく登場する小道具ミニチュア「扉」は、かつてトマリリオンがいいものを作っていたが倒産してしまい、今やトマリリオン製品は「たそがれの船着場」に残るのみ。頼みの綱とも言えるタイニー・ファニチャーは、アナスタシアが会社を離れた後、案の定デジタル造形に軸足を移してしまい、近頃の製品は俺自身いいねと思えるものが少ない（加えて、彼らは現在戦争を起こしている国にあるメーカーなので、俺たち“西側”のビジネスは当分取引できない。戦争により、支払システムが停止したからだ）。

「たそがれの船着場」にしかオーセンティックな扉が売っていないと言う現状。それはつまり、今このホビーを楽しむ趣味人だけでなく、将来ホビーを始めた初心の友がオールドスクールで本格派の「扉」を欲しくても買えない未来が、商店在庫の枯渇と同時に到来することを意味する。そんなことは絶対に嫌だ。「昔はあったんだけどね…」とか絶対言いたくない。そんな悲しみを次の世代に背負わせたくない。

安価・便利・手軽な品物はあっていい。裾野を広げる意味はある。けど、そのカウンターパートである本格派がなくなれば、それは頂のない山…ただの野原になってしまう。食器、カトラリー、雑貨、文房具などと同じように、大量生産の安物しか売っておらず、まともで真面目な品が入手困難になるのだ。これは街の定食屋や洋食屋、町中華やお菓子屋も同じだ。安いチェーン店ばかりが幅を効かせ、個人経営の店はどんどん潰れていく。そして今、漢たちのシルバニアが危ない。これは日本だけではなく、世界的な課題だ。手遅れになる前にやらなければならない。

俺は、出来のいいオールドスクールなファンタジー小物を……真摯・丁寧にパテ造形された味わいのある本格派のやつを……誰でも買える未来を作りたい。どうする？　自社レンジでまずは扉を作る！

ドアノブは別パーツで、取り付ける種類や位置を自由に選べるタイプにする。

と言うことで、俺は今、扉のパテ原型を作っている。そう、俺自身がデザイナーだ。このミニチュアは、様々なバリエーションで楽しめるユニバーサルドア。鍵穴の有無、ドアノブの向きは自由に選べる。また、丸カン取手も追加するから、引き戸にもできるし、何もつけなければ押し戸にできる。

ドアノブ２種類と鍵穴プレート

まだ制作中だけど、窓（普通の窓と鉄格子）を薄いパーツで造形し、オプションで付けられるようにするつもり。そうすれば、民家や店の扉にもなるし、牢屋や要塞の通用扉にもできるからね。

つまりこの扉は：

●右開きか、左開きか。
●押し戸か、引き戸か。
●鍵穴はあるか、ないか。
●レバー式ノブか、丸カン取手か、あるいはノブを付けないか。
●窓(または格子)があるか、ないか。

を選んで制作できる。72種類のバリエーションで作れると言うことだ。様々な情景やシーンで使えそうでしょ？　ミニチュア展示スペースのお供やゲームの小道具としてもよし、情景モデルやジオラマにも活用できるはずだ。ちなみに72個セットをリリースする予定はないので、欲しい分だけ個別購入してね。

なお、素材はメタル製になる。小さなアイテムだけに、メタルの重量がもたらす存在感は大切だと思うんだよね。モールド制作と量産は、「ザ・スミス」がすでにスタンバイ中。扉だけではなく、『漢たちのシルバニア』系列の自社アイテムも拡充していきたい。

ちなみにポール・マラーからは、そろそろ２体目のオーク豚が上がってくる見込み。ケビン・アダムズも、また別の新ミニチュアを制作中だ。今後も、ハーミットインの自社ミニチュアレンジ進捗に注目していてくれ！

＊＊＊