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ハルクウーベン博物誌〜ファンタジー世界の住人たち〜

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オールドスクールファンタジー世界『ハルクウーべン』のモンスターや種族を詳しく紹介するクリーチャーガイドブック。
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#モンスター解説

ハルクウーベン博物誌〜ファンタジー世界の住人たち〜 序章&項目一覧(24年9月更新)

『ハルクウーべン博物誌〜ファンタジー世界の住人たち』は、オールドスクールファンタジー世界『ハルクウーべン』に住まう様々な種族やモンスターたちを紹介するnoteマガジンだ。 ここで記される様々な事物を突き止めるため、多くの冒険者や探検家、魔術師、そして学者たちが多大な労苦と時間を費やし、また時に道半ばで命を落とした。原本はハルクウーベンに住む人々の言葉で書かれているため、それを我々の言葉に訳し、君に届けるのは何大抵のことではないが、これから時間をかけて少しずつ、しかし着実に掲

種族解説:オーク

オークは人間にとって不倶戴天の敵であり、両者は現在もなお続く永年の闘争のただ中にある。オークの起源を知る者はいない。この世界に人間が現れ、火と石を使い始めた太古の昔にはすでにオークたちが大陸の至る所にはびこっていたと、エルフたちは伝えている。 太古より綴られてきたドワーフの年代記には、幾星霜におよぶゴブリンとの戦いが記録されているが、オークについていえば、エルフの史書でしばしば言及されてきた。ドワーフがゴブリンと対峙し、エルフがオークとの対決を強いられていたのは、彼らの生活

種族解説:オウルベア

オウルベア。その名前が示す通り、フクロウと熊が合わさったような外見の猛獣で、昼なお暗き森の内奥に暮らす。この獣がいつハルクウーベンに現れたかは定かでないが、ロメノール(神聖アルフモート始祖王家に血脈を継ぐ古王国)の玉座には梟熊、すなわちオウルベアの毛皮が敷かれていたというから、上古の時代にはすでに珍しい獣として知られていたようだ。 本項の記述は、森林生物の研究者として広くその名を知られるハウプト・ホーデマークの研究によるところが大きい。ホーデマークは神聖アルフモート王国東部

種族解説:トロール(およびその亜種)

トロールははるか昔から現在に至るまでハルクウーベンに棲まう怪物だ。それなりに研究も進んでいる。その生息場所によって細かく分類され、生態もかなり判明しているため、読者諸君にとってはかなり信憑性の高い資料となるだろう。 本稿に収載された情報の多くは、トロール研究の草分けである学者イブリースの編纂した『穴から伸びた影の秘聞』に依るところが大きい。なお、イブリースはサレクロフトにおける霜トロール捜索中、野人に襲われてその生涯を終えた。 *** トロールに関する記録で最古のものは

種族解説:モングレル

モングレル。より直接的な言い方をすれば“混ぜこぜ”となる。元は家畜の異種交配で生まれた雑種を指す語の一つだったが、モングレルという名が、かの呪われし変異者を指す蔑称に変じて久しい。 モングレルとは、人ならざる生物の外見的特徴を併せ持つ人間をさす。その姿はまさに奇怪そのもので、人間の両親から生まれたとはにわかに信じがたいものだ。モングレルの抱える変異相は、身体の奇形や欠損といったものではない。最も多いのは体の一部が他の生物に置き換わっているというもので、下半身が獣の後足であっ

種族解説:ゴーレム

上古に生きた人間たちは、現在よりもはるかに高度な文明を築いていた。だが、この真実はほとんどの人々に知られていない。 庶民はおろか王侯貴族に至るまで、現在こそがもっとも文明が進歩している時代と信じて疑わないのは、彼らが愚かなせいではあるまい。為政者たちにとってはむろん、庶民たちでさえ、自分たちの暮らしが過去に劣るとは信じがたいことなのだ。 考古学者や魔術師、そして墓荒らしたちはこの事実を知っているものの、彼らが取り立ててそれを喧伝することはない。学者や魔術師たちは、現在の退

種族解説:コールド・ドレイク

上古の終わり……この世に〈深淵〉が溢れ出た〈大崩落〉にあって、種族の存続を投げうって諸種族と世界を滅亡から救ったのは、他ならぬドラゴンたちであったと歴史書は伝える。確かに〈奈落〉の蓋は閉じられたが、その代償としてドラゴンは筆頭者である竜王らを喪い、種族として大きく衰退を遂げた。 〈大崩落〉後に続いた薄明の時代はまさに悲惨であった。ドワーフは岩戸の奥へ引きこもり、エルフは世の行く末に絶望して森へ還った。そして人間の古き諸王国はことごとく滅びるか分裂して名を変え、人の暮らしはか

種族解説:ミミック

ミミック、すなわち“擬態せるもの”に関する記録は古い。上古に栄えた国ヘイデリアで記された粘土板に“人食い箱に食われた王女”の記述がある。つまり今から約四千年前に、ミミックに人間が接触した(と言うよりも喰われた)記録がしたためられているのだ。 現在ミミックは、魔術師や学者の間でこそ存在を知られてはいるが、人々の間で、この恐ろしい魔物はほとんど、あるいはまったく知られていない。オークやゴブリン、ノールやコボルド、ドワーフやエルフといった種族は別としても、同族ならざる者たちの存在

種族解説:闇トロール

トロール。この巨大で愚鈍な種族には、実に数多くの亜種が存在する。今回紹介する闇トロールは、無数に存在するトロール民族の中でも、もっとも異質なたぐいと言って差し支えない。 他個体と離れた独居を好む他のトロールと異なり、闇トロールは集落をなして山間部に定住する。彼らはトロール族の中でもとりわけ長身で力も強く、動きも俊敏な上、若い頃から戦いの訓練を積む点でも、暗愚な従兄弟たちとは一線を画す民と言えるだろう。 闇トロールの名は、彼ら自身が自分たちをそう呼ぶことから来ている。彼らが

種族解説:サハギン

サハギンと呼ばれるこの種族は、ハルクウーベンを囲う海で栄える、謎と恐怖に満ちた水生人間の一種だ。その性質は邪悪にして凶暴で、人間の言葉は話さない。 サハギンが暮らすのは、大陸東部から南部にかけての、比較的温暖な海域である。サハギンの生活圏はもっぱら海中で、それゆえハルクウーべンの陸上に住まう者たちとほとんど関わりはないが、無縁ではない。沿岸を離れすぎて沖に出た漁船や交易船は、時折サハギンによる襲撃に遭遇することになろう。一度や二度ではなく、船が沈むまで何度もだ。ゆえに船乗り

種族解説:ゴブリン

ゴブリン。数の上では人間と同じかそれ以上に栄える種族であり、その生活圏は大陸全土に及ぶ。ゆえにその親類も多く、研究が進んでいないものを含めれば、数十種にのぼるゴブリンが現在でも栄え、その分類は近年ますます複雑化しているようだ。ここでは、大陸全土の平野部や山林で見られる最も一般的なゴブリンたち...コモン・ゴブリンを例に、ゴブリンがおしなべてどのような種族であるかを解説しよう。 ゴブリンの背丈はドワーフと同じくらいで、細い手足を持つ。実のところ、人間の成人男性と同じかそれ以上

種族解説:バグベア

この巨大で毛むくじゃらの凶暴な種族がバグベアと呼ばれるようになったのには諸説あるが、おそらく古語由来であろう。今では話す者もいなくなった古の西方語(アルフモート古語の一種)で“燃やす”をバーグ、“けだもの”をボルアと言うが、村々を襲っては火をかけて回った人もどきをバーグボルアと名付け、これが訛ってバグベアとなった、という説がもっとも有力だ。この「古代西方語由来説」は、バグベア及びノール研究の権威たるケイポンの学者デンヴァンが提唱したものである。デンヴァンの著作『ヘネテガルトの

種族解説:コボルド

コボルドは小柄で、その背丈は人間の子供、あるいは成人したハーフリングと同じくらいだ。犬によく似た顔をしているが、小さな角が生えており、体毛は薄く、ウロコのような表皮を持つものもいる。その声は甲高く上ずっており、エルフたちはコボルドの声を大変嫌う。 性格はおしなべて意地悪くずる賢いが、それは敵対者に対してのことだ。コボルドは細工が好きで、家族の団らんや、親戚や友人を招いて食事と会話を楽しむこと、草花を育てることなどは、略奪や強盗、あるいは捕らえたハーフリングに靴を履かせていじ

種族解説:ノール

ノール。夜行性の凶暴かつ邪悪な亜人の種族で、強靭かつ頑健だ。家族単位の小さな群れをなし、街道ぞいや人里に近い山林の洞穴を住処とする。住処近くの一帯に、食糧や金品を得るための狩場を定め、群れの縄張りとするようだ。人里離れた地域にノールはいない。なぜならノールは、自身の獲物となる知的種族の集落を…特に人間の集落を…常に必要としているからだ。 ノールは二本足で立ったハイエナのような外見をしており、その性格は残忍かつ冷酷だ。ほとんどのノールは茶色がかった灰色の皮膚を持つが、体のほと