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ハルクウーベン博物誌〜ファンタジー世界の住人たち〜

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オールドスクールファンタジー世界『ハルクウーべン』のモンスターや種族を詳しく紹介するクリーチャーガイドブック。
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#ハルクウーべン博物誌

ハルクウーベン博物誌〜ファンタジー世界の住人たち〜 序章&項目一覧(2024年7月更新)

『ハルクウーべン博物誌〜ファンタジー世界の住人たち』は、オールドスクールファンタジー世界『ハルクウーべン』に住まう様々な種族やモンスターたちを紹介するnoteマガジンだ。 ここで記される様々な事物を突き止めるため、多くの冒険者や探検家、魔術師、そして学者たちが多大な労苦と時間を費やし、また時に道半ばで命を落とした。原本はハルクウーベンに住む人々の言葉で書かれているため、それを我々の言葉に訳し、君に届けるのは何大抵のことではないが、これから時間をかけて少しずつ、しかし着実に掲

短編読物:どんぐりの木の下で

一日の仕事を終えて食卓についたボリスは、母にようやく、自分の考えを伝えることができました。今まで何度も口にのぼせては、そのたびにはぐらかされてきましたが、今夜ようやく、母はボリスの話を最後まで聞いてくれたのです。 言い終わったボリスが冷たくなったお茶をすすると、母はため息をつき、悲しそうな声でボリスに言いました。 「おまえはまたそんなことを言うのかい。ここにいれば、おまえはずっと安穏に暮らせるんだよ、ボリス」 「おまえは、里の学校を一番の成績で卒業したじゃないか。どうし

種族解説:ゴブリン

ゴブリン。数の上では人間と同じかそれ以上に栄える種族であり、その生活圏は大陸全土に及ぶ。ゆえにその親類も多く、研究が進んでいないものを含めれば、数十種にのぼるゴブリンが現在でも栄え、その分類は近年ますます複雑化しているようだ。ここでは、大陸全土の平野部や山林で見られる最も一般的なゴブリンたち...コモン・ゴブリンを例に、ゴブリンがおしなべてどのような種族であるかを解説しよう。 ゴブリンの背丈はドワーフと同じくらいで、細い手足を持つ。実のところ、人間の成人男性と同じかそれ以上

短編読物:帝国軍将たちの群像

大広間の窓から見える城外の光景に、ガルソーグ卿は顔をしかめた。泣き叫ぶ民衆をオークどもが追い回し、城下の略奪を始めているではないか。大広間で隊伍を組み直す部下たちへ向き直るや、黒騎士は大音声で呼びかけた。 「皆の衆、ご苦労。城は落ちたが、伏兵が残っているやもしれぬ。まだ予断はならぬぞ。して、ドゥルクスはおるか」 「御前に、閣下」 「第四軍の愚行を今すぐやめさせよ。あのふしだらな女妖術師め、軍将にもなってまだ理を解さぬと見える」 「御意。閣下のお言葉、第四軍将どのに申し上げて

短編読物:北方古墳の墓荒らし

ピートルとカルロスは名うての盗掘者だ。神聖アルフモート王国と大ズンゲールサン帝国を隔てる白鷺山脈の南側……王国北部国境の山麓部……に点在する北方人の古墳群を掘り返しては財宝をかっさらい、故買商たちに売りさばくのが二人の生業である。 その名前でわかるように、ピートルとカルロスはもともとレリエ公国の出身だ。のっぴきならぬ理由で国から逃げ出したこの二人は、めぐみ川を下ってケイポンへいたり、内ケ海さえも渡ってアルフモートへ流れついたのである。かれこれ十年近く、二人は古墳の盗掘専門で

種族解説:バーバリアン

「野人」とは、文明諸国の間では“未開”とされる北の辺境で暮らす人間にあてられた呼び名だ。彼らは、文明諸国の“進歩”した暮らしを知らぬ代わりに、南方人が忘れ去ったものを今なお備える人々である。しらなみ海峡の北に広がる白ケ原、白鷺山脈を北に越えた先にあるサレクロフトに住まう人々が、諸国における野人の代名詞だ。 無論、文明諸国の支配が及ばぬのは北方だけではない。極東の荒れ野ハラクマーンや帯草原、あるいは南方のパポライカ諸島や熱極密林にも、諸国の支配が及ばぬ人々が暮らしている。北方

種族解説:ドワーフ

ドワーフ。彼らの言葉にならえば「ガルトワッフェン」...は、丘陵や山をくりぬいた岩屋に住む種族である。彼らは自身の岩屋を「砦町」と呼びならしめており、往時の栄光はないにせよ、大陸の至るところにドワーフの砦町が残っている。砦町にはそれぞれ王がおり、砦町の同郷意識は、人間やエルフのそれとは比較にならないほど強い。 ドワーフの背は人間より低いが、がっしりとした体型で、体力もあり頑健だ。男は豊かな髭をたくわえ、女は髪を長く伸ばす。彼らは優れた採掘者であり、建築家であり、並ぶものなき

種族解説:コボルド

コボルドは小柄で、その背丈は人間の子供、あるいは成人したハーフリングと同じくらいだ。犬によく似た顔をしているが、小さな角が生えており、体毛は薄く、ウロコのような表皮を持つものもいる。その声は甲高く上ずっており、エルフたちはコボルドの声を大変嫌う。 性格はおしなべて意地悪くずる賢いが、それは敵対者に対してのことだ。コボルドは細工が好きで、家族の団らんや、親戚や友人を招いて食事と会話を楽しむこと、草花を育てることなどは、略奪や強盗、あるいは捕らえたハーフリングに靴を履かせていじ