Q. え、兄弟は遺留分減殺請求できないってホント?? 遺留分➁

A. ホントです。それ以外に下記のような方たちもできません。
 ・相続放棄した方
 ・相続欠格者 
 ・相続人廃除者   

1. はじめに

前回のnoteから、遺留分について書き始めました。

調べはじめてしばらく遺留分と格闘して思ったんですが、いやー、これはとても奥が深くて、正直何から話すべきかとても迷いました。

前回は話したいことの2割も書けませんでしたが、これから3回ほどに分けて引き続き遺留分についてアウトプットしていきたいと思います。

今回話す内容は、"遺留分を受け取れない人"です。

そう言えば前回まででその反対の"遺留分を受け取れる人”について話しておりませんでしたので、そこから話したいと思います。

2. 遺留分が認められる受け取れる人

遺留分が認められる、すなわち遺留分減殺請求ができるのは下記の人たちです。

            ・被相続人の子(孫)
            ・被相続人の配偶者
            ・被相続人の両親(祖父母)

法定相続人とほとんど同じですね。

ただ、法定相続人だけど遺留分は受け取れない人、というケースもあります。それが被相続人の兄弟、また甥、姪です。

3. 兄弟に遺留分が認められていない理由

この事実を知ったときは、正直疑問でした。
だって、兄弟は法定相続人としては認められているのですから。

"大きな権利(法定相続人)は認められていて、小さい権利(遺留分)は認められないってどういうこと??"という感じでした。

いろいろ調べてみて、兄弟に遺留分が認められていない理由として大きく分けて3つほどあることがわかりました。

理由➀. 遺留分がなくとも生活に苦しまない

被相続人の兄弟は、配偶者や子供などとは違って被相続人と同居したり、生計をともにしている人はかなり稀であり、被相続人が亡くなったとしてもそれによって生活が困窮するなどの影響を受けるのは起こりにくいと考えられます。

理由➁. 兄弟には代襲相続がある

すみません、正直私はこれを知って「...だから?」と思いました。
兄弟に代襲相続があるからなんなんだ。

あ、すみません、もしかしたらまだ代襲相続についてお話していなかったかもなので、そちらについても簡単に書いておきます。


4. 代襲相続について

代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人が亡くなったときに、被相続人から見て、孫、甥、姪等が相続人になることを指します。

本来、相続は法律で定められた相続人である配偶者、子供、親、兄弟が相続人となるのですが、仮にこれらの法定相続人が先に亡くなっていた場合などに、代襲相続権が発生するのです。

被相続人の子供が先になくなっていた場合→子供
被相続人の子供、配偶者、親等が亡くなってい場合→甥、姪

といった感じです。

...はい、遺留分の話へ戻します。

兄弟には代襲相続権がある、つまり甥、姪への遺留分も認めなければならない。
ただでさえ兄弟の相続順位が低いのに、甥、姪までの遺留分を認めるのはどうなの??という感じでしょうか。

まあ、これには一理あるような気がします。私事で恐縮ですが、父が私のいとこ、つまり父から見て甥、姪に会うのは、数年に一度くらいだと思います。

家庭によっては一年に一度もしくはそれ以上会っている方もいらっしゃるかもしれませんが、、

まあ、とにかく、そこまで被相続人と関係がないと考えるわけですね。

はい、この2つの理由を一言でまとめると、

「遺留分の財産は、もっと優先度が高い人に与えるべき」、ということになります。

考えてみればそうですよね。

一般的な相続と異なり、遺留分減殺請求権は、ただでさえ相続人の権利が侵害されたときに発揮されるわけですもんね。通常より取り分が少なくなっているということです。

なんとなく理解できましたか??

次からはそれ以外、つまり相続放棄、相続欠格者、相続廃除者について順にお話していきます。

5. 相続放棄をした人も遺留分は受け取れません。

次に相続放棄をした人についてです。

相続放棄については以前のnoteでも書きましたので、深くは触れません。

相続放棄とは、簡単に言うと、"プラスマイナスすべての財産を放棄する"ということでしたね。

そこから考えると当たり前のような気もします。
まずいマイナスの財産は放棄しておいて、美味しい部分をもらうことなんてできませんもんね。

そこから考えると、そもそも相続放棄をした人に遺留分があるケースはそこまで考えられないと思います。

6.相続欠格者・相続人廃除者

新しい言葉が出てきました。これらの人もまた遺留分は認められません。

この2つのケースは、たとえ配偶者や子供など、本来は遺留分が認められる人であっても、それが取り消されてしまうケースです。

ただ、これらの言葉を一から十まで説明すると文字数が大変なことになってしまうので、今回は必要な範囲内で書いていきたいと思います。

7. 相続欠格者について

まずは相続欠格者についてです。

"欠格"=必要な資"格"を失っている、"欠"けているという言葉ですので、相続をする資格を失うという意味にでもなりましょうか。

そして、"欠格"になる理由(欠格事由)ですが民法で厳格に決定されております。

民法891条には次のように書かれております。

"次に掲げる者は、相続人となることができない。
一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者"

大きく分けて5つですね。

1号からすごいですね。被相続人、自分より順位が高い相続人を殺人・殺人未遂をした人は相続人になれない、というわけです。

いや、当たり前ですよね。
被相続人を殺しておいてその遺産をちゃっかり相続するなんて、どこのディストピアだよ、という感じです。

2号も1号に関連しており、3-5号は主に遺言書に関連したことです。
こちらはなんとなくあり得そうな話ですね。

脅迫して遺言書を改変させたり、偽造したら、相続権を剥奪されます。気をつけましょう。

ただ、殺害、殺害未遂とかだったらわかりやすいのですが、この脅迫の場合はどこからが該当するのかちょっとわかりにくいような気がします。
どこまでやったら、またどういう場合に脅迫になるのかは専門家へ相談しましょう。
とりあえずその現場を目撃したら証拠をとっておいたほうが吉だと思います。

8. 相続人廃除について

次に相続人廃除です。

先程書いた相続欠格者となんだか似ています。
民法892条には次のように書かれております。

➀"遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。"

うーん、小難しく書かれてますねえ。。

その下の解説にもう少しわかりやすくしたものが載っていました。

➁"「廃除」された推定相続人は、相続権を失い、相続人となることができない。ただし、その直系卑属につき代襲相続は発生する(887条)。 廃除の原因としては「虐待」「重大な侮辱」「その他著しい非行」があげられている。"

           (➀、➁とも上記参照)                   

なるほど、廃除の原因は「虐待」「重大な侮辱」「その他著しい非行」と。

「大雑把にはわかったけど、具体的には??」と思ったら下記サイトにわかりやすく掲載されておりました。

・被相続人を虐待した
・被相続人に対して、極度の屈辱を与えた
・被相続人の財産を不当に処分した
・ギャンブルなどを繰り返し、被相続人に多額の借金を支払わせた
・浪費・遊興・犯罪・反社会団体への加入・異性問題を繰り返すなどの親不孝行為
・重大な犯罪を起こし、有罪判決を受けた(一般的には、5年以上の懲役判決)
・愛人と同棲するなどの不貞行為をする配偶者
・財産目当ての婚姻関係
・財産目当ての養子縁組

なるほど、わかりやすい。

ここでもう一つ疑問が湧きました。

"被相続人を虐待した、被相続人に対して、極度の屈辱を与えた"の基準って何??というものです。

認められたケースとして、

「千葉に行って早く死ね,80まで生きれば十分だ」
「気狂い」

などの暴言を繰り返し言った場合などがあるようです。

これくらいの暴言だったら割とどこでもあるような気がしますし、注意ですね。

また、暴力に関しても決まった規定があるわけではなく、頻度、程度等総合的に判断されるようです。

            (参照)

9. その他の注意点

相続人廃除は自分の意思で排除するかどうか決めるのが特徴ですが、反対に気に入らなかった人すべてを切れるわけではありません。

例えば、子供Aはよく私の面倒を見てくれたけど、子供Bは自分の人生を優先して全然私の面倒見てくれなかった....!
だから、Bのことを相続人廃除したいとかの理由は認められませんので注意です。

目先の利益、一時的、突発的な怒りに任せて以上行為をした結果、身内との仲が悪くなるばかりか、財産ももらえなくなるなんて悲しいですね。

後先考えずに行動することを避け、これをやったらどうなるということも考えて行動すべきということです。

10. おわりに(毎度のことですが...)

みなさまの貴重な時間をいただき、また最後まで読んでくださりありがとうございます。
ただ、本noteの内容は、完全性や正確性を保証するものではございません。記載内容を利用される際は、ご自身のご判断と責任に基づいてご利用くださいませ。

また、この中に相続のお医者様がいらっしゃいましたら、間違っているとこを容赦なくご指摘いただければ幸いです。

それでは、良い日曜日を。


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