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大谷翔平表紙のSIの記事があまりに素晴らしかった!

Sports Illustrated、Tom Veruducci氏の独占取材記事
"Shohei Ohtani Is An Icon Among Us"(ショウヘイ・オオタニは私たちのアイコン(象徴的存在))

https://www.si.com/mlb/2024/03/19/shohei-ohtani-is-an-icon-among-us-los-angeles-dodgers-dog-decoy

実際に大谷翔平とも対面インタビューをした上で丁寧にまとめられた、とにかく素晴らしい内容でした。大谷翔平の生い立ちや人間性にフォーカスし、記者が選んだ5つのテーマに沿って話を進めていく構成の素晴らしさ、一語一句の美しさに感動しながら訳しました。
日本文化への理解まで深め、最後は大谷翔平の素晴らしさを”shokunin”(職人)という言葉に結びつけた記者のセンスに脱帽。

ていうか、まずは表紙の
"MONEY CAN WAIT. WINNING CAN'T"
からして最高。
なんか訳してしまうと野暮ったくなるんだけど、「お金は待てるけど、勝利は待てない」。
(イヤーーーーーッ(泣)翻訳センスゼロかよw ほら、こういのって勝手に意訳したらアカンから、ねっ!(言い訳))

全文訳したいくらいだけど、それは元記事に対して失礼なのと、訳す時間も無いので(笑)、印象に残った内容やフレーズだけ抜粋して紹介します。


リード文:
「まず、ドジャースの新しいスターは、野球選手とは何かという期待を(良い意味で)打ち破った。更に彼はこのスポーツスター主導型の経済にも同じ影響をもたらした。そして今、彼が求めているものはただひとつ:10月を意のままに操るチャンスなのだ」

①The Glove

・寄贈したグローブを受け取り喜びに溢れる子どもたちの映像を「これは見たことなかった」と子どものような笑顔を浮かべながら見る大谷翔平の様子を丁寧に描写しながら記事がスタート

・「身長193センチ、体重95kgとされているが、近くで見るとそれより更に大きく感じる。イタリアのスポーツカーのように、静止していても彼が纏うオーラから、その俊敏さが読み取れる。そして、パワーはすべてボンネットの下に隠れている」

・「グローブ寄贈は、成功を分かち合うための彼らしい方法。そして、なぜ大谷が現代のユニコーンであり、「狙わずして」地球上で最も人気のアスリートの一人となっているかを説明するのにも適している。大谷が大谷を振り返るこのレアな機会にグローブは良い起点になると思った」

大谷翔平
「このアイデアは、ニューバランスとドジャースとの契約から生まれたものです。基本的にはファンからいただいたお金。だから、お返しをしたかった。これは今回限りの話ではなく、未来について、野球について考えた上でのもの。ある程度、還元することは普通のことかなと思います」
「野球の基本はキャッチボールだから、このアイディアに辿り着きました。すぐに効果は出ないかもしれないけれど、この先もこういったことを続けていくことで、やがて大きな力になるかなと思っています」

②The Notebook

・幼少期に父親と交わした野球の交換ノートが彼の思考の原点になっていることを丁寧に紹介

・「97%の無利子後払い契約、背番号17番を譲ってもらったお礼にポルシェをプレゼント、被災地への寄付を行うこのスーパースターは、ダグアウトの床を清潔に保つためにガムの包み紙を拾うほど几帳面で礼儀正しいのだ」

・ドジャース副社長兼CMOローゼン氏
「私は40年ほどのスポーツ人生の中で、マイケル・ジョーダン、マジック・ジョンソン、マイク・タイソン、ペレなどの大物アスリートを数多く見てきたが、ショウヘイのような選手、特に日本での熱狂的な愛され方のような事例は見たことがない。彼が尊敬されているのは、単に優れたアスリートだからではない。M.J.やマジックと同じように、彼は特別な何かを持っている」
「彼はとてつもない才能を持つだけの特別な資質を持っているのに、多くの人に「彼は自分と同じだ 」と感じさせる。生意気だったり偉ぶることもない。とても思慮深く、謙虚な人として見られている」

③The Dog

・幼少期の飼っていたエース君のこと、日ハム入団前に栗山監督との交渉の場においてもエース君が橋渡し役になったエピソードを紹介

・手術の頃、大谷は野球好きの犬のブリーダーと知り合った。手術のために数カ月間、自宅療養を余儀なくされることを知っていた彼は「家にいて何もできないので、完璧なタイミングだと感じた」と犬を飼うことを決断

大谷翔平
「家の目の前にドッグパークがあるので、昼と夜の2回そこに連れていってました。その間に家でリハビリをし、それから一緒に食事をする。ドジャースと契約するまでは、それが僕達の日課のようなものでした」
「手術後に散歩に行くのは良い気分転換になりました。リフレッシュできたし、すごく楽しかった。前回よりもリハビリ期間が短く感じました」
「自由に外を出歩けないので、家の中で過ごせるのは良いこと。ずっと1人暮らしで本当に誰もいなかったから、いつもそばにいて僕に愛情を示してくれる存在がいることは本当に素晴らしいことでした。今も一緒に寝てますし」

・今回の契約交渉でドジャースがコービー・ブライアントからのメッセージビデオとともに用意していたもうひとつの秘密兵器は犬のおもちゃを詰め合わせた箱だったとフリードマン編成部長は振り返る。箱を開けた瞬間、大谷は大笑いし笑顔いっぱいになった。その日最大のヒットだったかもしれない

・NYでのMVP授賞式も元々はデコピンは一平さんの奥様に預ける予定だったが、どうしても離れられなくて連れて行くことになった

大谷翔平
「(デコピンは)とてもお行儀が良いんです。最初の頃はトイレの問題があったけど、それは当たり前のこと。最初にトイレに成功したのは僕がドジャースと契約した日だったんです。特別な日でした!」

④The Deferral(後払い契約)

・大谷サイドから後払い契約の話を受けたのは12月7日。フリードマン氏はこれまでそんな提案を受けた事もなかったから、にわかに信じられなかったと言う。しかし、フリードマン:「時間をかけて頭の中を整理していくうちに、彼ら(バレロ氏と大谷翔平)がこれまで言ってきた事は一貫していると感じた。交渉の場では言葉と行動が一致しないことはよくあるが、彼らの言動はぴったりと一致していた」

・大谷サイドからの提案を快諾したのでドジャースとしては自信があったのに、翌8日トロント行き騒動が起こり、フリードマン氏もロバーツ監督も気が気でなかった

・ドジャースは早い段階から二刀流選手としてだけでなく、大谷翔平がインターナショナル・アイコンとして生み出す価値を理解していた。バレロ氏も、WBCでの優勝、2度目の満票MVPを受賞を経た大谷翔平の価値の上昇についてまとめたデータで理論武装していたが、その信憑性を疑う球団もある中、ドジャースはすぐにそれを受け入れたので説得の必要もなかった

・ドジャースは大谷翔平との契約にあたって、競争力のあるチームをつくり続けることを約束した。

大谷翔平
「もちろん、ポストシーズンに出場する自分の姿はいつも想像していました。叶わなかったけれど、去年もずっとそういうイメージを持っていました。WBCの前まで、僕は勝つか負けるかの極限の状況で試合できていなかった。しばらくそういった場から離れていた中、WBCの経験は本当に本当に楽しかったし、新鮮でした。プレーオフやワールドシリーズに相当するようなそういう試合をすることへの渇望も湧いてきました」

・今年1月、カリフォルニア州知事は議会に対し、無制限の繰り延べ契約について 「即時かつ断固とした行動をとる」よう要請した。2年前、マウンドを降りた投手がDHとして試合に残ることを認める「オオタニ・ルール」をつくるキッカケとなった大谷翔平が、今度はカリフォルニア州税のルールも変えようとしている

⑤Genius

・「大谷のトレーニングを見ていると、彼の才能がどこから来ているのかがわかる。彼は今でもあの父と交換ノートを交わしていた息子のままなのだ。勤勉さについて得た教訓、ひとつひとつのスイングや投球といった細部を重んじること。すべてが繋がっているのだ」
「スイング、ウェイト、スプリントトレーニングのひとつひとつを行う際もいまだに父、徹さんへノートを書くように、自分自身に挑戦している」

・大谷翔平の身体能力の高さについて改めて数々の事例をもって紹介した後、記者:「その身体能力と、彼が父親とともに培った「意図性」が組み合わされば、genius(天才)が完成するのだ」

・「野球は失敗のゲームであり、最高の打者でも10打席に7つのアウトを作ると言われてきた。しかし裏を返せば、野球は勤勉さが報われるスポーツでもあるのだ。野球の最大の報酬は、刹那的な満足感ではなく、ゆっくりと成長する投資によってもたらされる。自分の道を丁寧に切り拓いていくこと、それこそが大谷を虜にした」
「大谷に野球で何を一番の喜びに感じるか尋ねると、ホームランや三振ではなく、野球に必要なプロセスだと答えた」

大谷翔平
「目標を設定することもそうです。最初の目標は全国大会でプレーすることでした。そして実際にそこでプレーすることができた。それは練習の成果から生まれた喜びでした。野球である必要はなかったと思うけど、僕にとってはたまたま野球でした。目標を立てて、それを達成するのが好きなんです」

・ロバーツ監督:「彼についてわかったことは、周辺のノイズを処理し、自分がすべきことに集中する能力の高さ。彼がなす事すべてはよく考え抜かれている。毎日が計算し尽くされている。そして彼には勤勉さと柔らかさ(softness)がある」
「柔らかさ」というアスリートにあまり使わない表現を使った事に興味を持った筆者が尋ねるとロバーツ監督:「それは彼の生い立ちと文化に由来するものだ。物事の進め方や人への接し方に敬意があり、内面的な自信もある」

・「大谷翔平をよく表す言葉がもうひとつある。”shokunin”(職人)だ。「職人」という表現は、単純な技術の習得以上の深い意味を持つ。
職人は自然の素材や道具を尊び、適切な勤勉さによってものごとに取り組み、常に社会的責任を意識して仕事を行う。職人は個人の功績ではなく、共同体をより良くするために真の意味で成功する」


最後の一文まで素晴らしく、仕事で文章を書くこともある身として大変勉強にもなりました。
英文読める方はぜひ原文を読んでみてください。

https://www.si.com/mlb/2024/03/19/shohei-ohtani-is-an-icon-among-us-los-angeles-dodgers-dog-decoy

冒頭に添えられていた動画のナレーションも記事の要旨をなぞりながら文中で核となるフレーズをところどころちりばめて紹介していて、全文訳したいくらい素晴らしかったです。(後から訳すかも!)
読んでいて刺さった言葉がしっかりと拾われ、記者自身の音声で読み上げられるなんて、自称「言葉オタク」の私からすると大興奮でした。

動画はこちら↓

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