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日系クリニック・リノベーションデザイン(2) | カンボジア・プノンペン【Vol.24】

プノンペン中心部の人気エリアであるバンケンコンへのKEN CLINIC様の移転が決まり、私たちは設計に際して、まず既存建物のヴィラ(住宅)の調査に入ります。

リノベーションデザインを行うに当たって、建物の現状把握を行うのですが、見える部分は実測などを行いますが、天井内などの見えない部分、特に設備関係に関しては推測でしか把握できず、更に躯体の状況(耐久性)もわからない部分が多くあります。

設計する際はあくまでも推測の状況で進めるしかなく、解体してから全容が解明できるものなので、設計は7〜7割くらいの状況で、残りは工事の進捗状況に合わせて、臨機応変に設計の詳細を決めていくしかありませんでした。

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ひとまず現場調査で把握できたものをベースに、私たちは基本設計に取り掛かりました。

雰囲気のあるヴィラの良いところを残しながら、日本人医師の奥澤先生というセールスポイントである日本らしさ、更にカンボジアのデザイン要素を組み合わせながら、限られた予算内でどう収めていくかを考え、複数案のイメージCGを作成してプレゼンさせていただきました。

大きなポイントは、第一案はコストをエントランスに集中してコストを掛ける案、第二案は全体的な雰囲気で魅せる案で、個人的には第一案がお勧めです。

第一案はエントランスに大きなR状の間接照明を施し、日本的な和紙と、和紙を支える軽量鉄骨下地の骨組みの組み方をカンボジアの住宅窓に用いる格子をデザインモチーフにしたカン日融合デザインで、現状のヴィラが持つ優雅な空気感を更に増幅させる、日本のクリニックには無いデザインで、クライアントの奥澤先生にはこの案を大変評価していただき、デザインの方向性が確定しました。

平面計画も機能性は特に問題はありませんでしたが、一般の来院者とは別にVIP用の動線を作ってほしいとの事で、カンボジアのVIPは一般動線と同じでは嫌がりますので、そこの考え方はこちらで判断しにくいところなので、奥澤先生からレクチャーしていただきました。

1階はクリニック、2階は特別診療室を複数室とキッズスペース、3階はスタッフスペースで構成することが決まりました。

実は、日本の医療機関は機能性を追求するあまり、画一的で無機質なデザインですが、タイではホスピタリティー溢れる上質なホテルのようなデザインのところが多数存在し、カンボジアもその流れを汲むと考え、先取りしてデザイン提案を行っています。
医療デザインの分野では、実は日本は世界から遅れを取っているのです。

私たちは本格的に実施設計の作業に入り、意匠・設備設計を行なっていくのですが、私は気がかりな事が一つありました。

新築の建物や店舗デザインの場合は、工事費を想定しながら、材料や設備の仕様を決めて図面化していくのですが、カンボジアではリノベーション自体があまり定着していなかったので、工事の相場観が手探りです。
そこは情報を集めながら、大体のm2単価を想定して進めるしかありません。

3ヶ月程の設計期間を経て、工事会社に見積依頼しましたが、簡単な部分改修ではなく、全面的なリノベーションは手間がかかるので嫌がって手を挙げてくれる工事会社がなかなか見つからず、これが一番大変なことだったかも知れません。

ようやく過去に面識のあったアメリカ人経営の工事会社が見積りの対応をしてくれたのですが、新築で建てられるほどの高額な見積額でかなり焦り、また別の工事会社へと、この動きを繰り返して、ようやく金額的にも妥当な対応をしてくれそうなローカル工事会社S社に決まりました。

カンボジアもそうですが、途上国では見積金額の振れ幅(最高値と最低値)の大き過ぎて、どこが妥当かいつも迷います。

今回はリノベーションで、内装解体後に想定外の工事を見込んでおかないといけないので、少しの予備費も念のため計上しておいてもらい、無事に工事着工の運びとなりました。

最大の魅せ場のエントランスは上手に工事をしてくれるのだろうか?
続く…

#コラム #仕事 #建築設計 #リノベーション #海外進出 #アジア

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