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カフェデザイン(1) | シンガポール【Vol.38】

シンガポールの人気エリアであるオーチャードに日系カフェ出店の構想があるので、インテリアとブランディングデザインが出来るデザイン会社を探していると知人よりクライアントを紹介されます。

これまで海外でデザインを手がけてきましたが、シンガポールのオーチャードは日本で言う銀座みたいなところで、しかもシンガポール伊勢丹スコッツ店の路面の超一等地、これまでとは別格に注目度の高い案件です。

クライアントはシンガポールのチャイナタウン近くでカフェを経営していますが、今回は超一等地なので、既存店の流れは汲まず、全く新しいコンセプトを立てて事業化したいという要望でした。

後に正式に出店が決まり、私たちはこのプロジェクトのデザインを手がけることになりましたが、カンボジア法人がシンガポールでのデザインを手がけるというのは、かなりレアケースだったと思います。

ちなみにプノンペンーシンガポール間の移動は、日本で国内移動するような感覚なので、ASEANという括りはありますが、あまり距離を感じることなく仕事を進める事が出来ます。

超一等地のため、家賃が桁違いに高いので出店リスクが高く、デザインのこだわりもそうですが、とにかく繁盛店にしないと事業継続できなくなります。

良いデザインをする自信はありますが、流行らせないといけないというプレッシャーが相当あり、シンガポール、日本、カンボジア、タイ、上海など、立ち寄る先でトレンディーなカフェ巡りをしてリサーチし、店舗デザインからロゴ等の制作物、カフェメニューに至るまでトレンドを徹底的にリサーチし、珈琲を飲み、軽食も食べまくりました。
その上でシンガポールでの新店のポジションをどこに置くかクライアントと相当議論を重ねました。

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シンガポールはカフェ大国で、ベーカリーカフェなど、かなりいい感じのお店が多数あります。
カンボジアもそうですが、欧米人など多国籍な人種が多く暮らす都市には、カフェやBARなどで過ごす文化が日本よりも根付いていて、お店のコンセプトも面白いものがたくさんあります。

2015年初冬、この頃はちょうど日本へのブルーボトルコーヒー上陸が話題で、サードウェーブ時代に突入しはじめたタイミングです。時間をかけて珈琲を抽出し、店内でゆっくりした時間を楽しんでいただく、その原点は日本の趣のある喫茶文化にあります。

変に小細工せず、日本の趣のある喫茶店をトレンディーに表現する事で日系カフェらしさも出せ、当時のシンガポールにはハマるだろう、と結論付け、店内のレイアウトや空間デザインを複数案作成し、お店で提供するメニューの試飲食などをしながら、ハードとソフトのコンセプトを近づけていき、店舗デザインの方向性が確定しました。

一方、シンガポールの建設事情を並行して調査するのですが、建材事情はカンボジアとよく似ていて、お国柄、国内製造品などほとんどなく輸入品がベースになるので、建設コストもかなり高くなります。

建材に限らず、シンガポールは何かと物価が高く、ラーメン一杯が1500〜2000円するような国ですから、店舗をはじめるにも投資額がかなり大きくなり、成功すればリターンも大きいですが、反面、失敗だけは絶対に避けなければなりません。
客単価が高いということは、お客様の満足度を当然高めなければならず、提供するメニューに加えて、居心地の良さ、という上質な空気感を演出しなければ継続して対価を得ることなど出来ません。

こだわればこだわるほどアイデアは出てきますが、基本的に店舗デザインは設計期間が短く、悠長にデザインしている時間は無いものです。
工事期間中も高額な家賃を払わないといけないので、テキパキ進めないといけませんし、家具は中国、ガラス細工は日本、建材はまた違う国、と納期がかかるものばかりで、設計作業はバタバタでしたが、短納期で何とか纏め上げ、オーナーだけでなく、出店先のシンガポール伊勢丹、ビルオーナーの承認を得て、無事に工事の着工となりました。

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ロゴデザインが一番の難産でしたが、店舗デザインを含めて良いお店になる手応えがあったので、ワクワク楽しみながら本プロジェクトに取り組み、竣工の時を待ち望んでいました。

繁盛店になることができるだろうか。
続く…

#コラム #仕事 #デザイン #店舗デザイン #カフェ #海外 #アジア

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