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台湾 | 介護情報専門誌「AnkeCare」監修【Vol.70】

台湾・台北で開催した高齢化社会に向けた先のセミナーの反響は大きく、台湾でシニア向け雑誌「安可人生」と言う雑誌を発行するAnke Media社の記者の方も来場していて、超高齢化社会へ向けて待ったなしの台湾で業界を先駆けて介護情報専門誌「AnkeCare」と言う雑誌を創刊しようと考えているので、詳しく話しを聞かせてほしいと言われ台北のAnke社オフィスを訪問します。

Anke社の李社長はやり手で、これまで通信系の雑誌社を経営して台湾から世界へ情報を発信して成功を収めており、今後は台湾の高齢化社会へ向けて介護情報専門誌を創刊したいので力を貸してほしいと言われ、私のノウハウや経験、ネットワークを活かせる、台湾の社会課題解決に繋がる事なので、雑誌の監修と日本特派員という位置付けで関わることになりました。

日本の情報は持ち合わせていますが、台湾のニーズにマッチするものでなければ意味がないので、私は台湾にある介護施設やデイサービスなどをいくつか訪問し、台湾の介護現場の実情の理解を深めました。

日本のように介護保険制度がありませんが、デイサービスに関しては各自治体の補助があり、日本同様のサービスを提供している施設もちらほら出来てきていて、介護施設は政府が49床以下の小さめの施設整備しか民間に開放しておらず、大きめの施設は政府系や宗教系ボランティア団体などにほぼ限られています。49床毎に法人名義を変えてずる賢くビジネスをする民間施設もありますが、介護施設の経営は日本でも台湾でも厳しいものなので、49床では小さくて採算が取れずビジネスとして難しいので、経営目線では大箱になりがちです。中には数百床、数千床という日本では考えられない規模のものもあります。
介護保険制度のない台湾では民間が参入するのは日本のサービス付高齢者向け住宅のような施設が現実的のようです。
ちなみに宗教系ボランティア団体による介護施設は入所費用が安くて手厚いサービスが受けられるので人気がありますが、直ぐには入所出来なくて10年待ちだそうです。

また人材系に関しては、基本的にケアマネジャー以外はベトナム人などの外国人が多く働いていて、実は台湾の家庭でも外国人のお手伝いさんが多く、台湾の公園に行くと車椅子に乗ったご高齢の方を外国人が付き添っていて、ご高齢の方を放っておいて付き添いの外国人同士がおしゃべりをして楽しんでいる光景が溢れています。まあ、それはそれでグローバルな国の政策で微笑ましい部分でもあります。
このように台湾は外国人材受け入れ面では、ビザ取得も比較的容易で日本よりもグローバル化が進んでいるので、今後は入国のハードルの高い日本よりも台湾や中国へ多くの人材が流れていくことが推測されるので、これらが影響して日本の介護業界の人材不足がどこまで解消されるか本当のところはわかりません。

さて、私はAnkeCare創刊にむけて、日本の介護関係者に雑誌の取材をしていくのですが、現場から経営、医療との関係性の重要性を説くため医療従事者、行政サービスに至るまで聞き取りをして記事に書き起こし、台湾に送って翻訳してもらう作業を行い、遠隔でミーティングしながら日本人目線の意見を述べながら無事に雑誌創刊となり、これからの台湾の高齢化社会の道しるべとなる雑誌として一定の評価を得ることが出来、今では季刊誌として継続発行されるようになりました。

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日本の専門家に取材させていただくと本当に勉強になる気付きが多いもので、私は設計目線で見てきた介護の現場も、立場が違えば施設や介護ビジネスの見方が大きく変わるものです。
取材と称してリアルな情報が聞けて、いろいろな人の繋がりが築けていくもので、雑誌の監修や日本特派員というポジションは思っていた以上にメリットの大きなものでした。

Anke社の勢いは留まるところを知りません。
今度は大規模なセミナーを開催したいという事で、この企画にも携わるのですが、目玉として日本から専門家を呼びたいと言う事で、私は高齢者住宅新聞社の網谷社長に連絡を取り、セミナーの趣旨を説明し、台北セミナーで登壇していただく事を了承していただきます。

実は日本の介護マーケットは行き詰まり気味な部分があり、海外へ目を向ける介護事業者が出てきているので、高齢者新聞社の網谷社長も、取材をお受けいただく介護事業者の方も海外マーケット進出の足がかりになるかも?と比較的前向き捉えていただけます。

網谷社長をスペシャルゲストとし、私も設計者目線で登壇する事が決まり、台湾からも数名の専門家が講義する事でセミナー内容が決まりました。

台湾政府のバックアップもあり、収容人員300名の大規模な高齢化社会をテーマにした有料セミナーは恐らく台湾でははじめての事で、セミナー当日は台湾建設省の花副大臣もお越しになり、満員の会場には政府関係者、大学・研究者、介護事業者、建設・不動産関係など、民間企業は事業の決定権を持つ経営層が多く、台湾の新しい産業への期待値も高かったのでしょう。本当に凄い熱気のセミナーとなりました。

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セミナー後の2日間は個別相談会を行い、施設整備などの多くのご相談をいただき、今回のセミナーは多くのご縁も出来、Anke社の介護専門誌創刊やセミナー開催に関わった事で私にとっても多くのメリットがありました。

意外と言うか、やっぱりと言うか、台湾での私の活動を耳にした中国本土の企業からの問い合わせが増え、リゾートホテルプロジェクトで手痛い目に遭って8年間距離を置いてきた中国ビジネスを介護系を切り口して再開することになるのです。
政治的には微妙な立ち位置の台湾ですが、ビジネス面では良好な関係にあるようですね。

#コラム #仕事 #建築設計 #セミナー #介護 #海外 #台湾


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