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ウガンダ | 未開の地アフリカ(3)【Vol.32】

ウガンダの建築家たちにレクチャーしてもらい、ウガンダ(アフリカ)建築の理解を深めた私は、若手建築家Sくんから大学時代の恩師F先生を紹介されます。

Sくんは日本人の私の専門知識がウガンダの発展に何か役立つかも知れないと、F先生とセッティングしてくれたようです。

F先生はウガンダ政府の都市計画の政策決定をする重要なポジションにあり、世界の都市計画事情に精通する専門家でもあります。

ウガンダの首都カンパラは都市としてある程度成立しているのですが、地方都市の開発はまだまだこれからの状況で、F先生は日本人専門家の目にウガンダがどのように映ったのか、また短期的なだけでなく、中長期的な目線での都市計画についてコメントを求めてこられました。

私はウガンダで感じたまま、あるべき姿について多く意見を述べさせていただきましたが、私の活動フィールドである乱開発を推進するカンボジアと違って、真剣にウガンダの将来を見据えて動かれていて、真面目な国民性と相まって、この国は良い方向を向いてるなあ、と率直に感じました。

さて、F先生からウガンダの地方都市の都市計画を進めようと思っているのだが、日本政府がこの計画に関わることは出来ないか?と、相談を持ちかけられます。
ただ、先行してシンガポール政府には既に打診をしているので、日本政府の意向を確認してから方向性を決めていこうと思う、とのことでした。

ウガンダへ野球場と職業訓練施設整備の調査で来ただけなのに、とんでもない方向へ話しが向かっていくのです。

ひとまずF先生には宿題にしてもらい、私が日本へ戻った際に、知人の建設コンサルタントと共に外務省とJICA東京本部へ出向き、この宿題について日本政府としての見解を求めるのですが、まあ、当然のことながら、民間のようにトントン拍子で話しが進むわけがありません。

日本政府が直ぐに動けないのはわかっているので、私は民間レベルでも動けるようにウガンダ都市計画プロジェクトの日本チームを構成するため、都市計画の専門家、ランドスケープデザイナーに声をかけ、ひとまずウガンダへ提出できるプレゼン資料を作成しました。

それぞれの専門家が考える都市計画は、全く違うアプローチで組み立てていくものです。
通常は都市計画家が考えた大枠の絵をそれぞれの分野に落とし込んでいくのが一般的ですが、それだとありきたりで面白い発想の都市を考えることができません。
私たちはそれぞれの専門分野をフラットにして、全く新しい発想の都市計画の構想を創り上げました。

都市計画のマスタープランは民間レベルで作成することができるのですが、インフラ整備を含めて具体化させる為には、やはり政府レベルとタイアップしておかないといけないので、これ以上は突っ走っていくことができません。

この件で何度かウガンダへ出向くのですが、結論を言うと、日本政府は直ぐに動けないので、シンガポール政府チームに軍配が上がりました。

幻となった我々の都市計画マスタープランは、ウガンダには最適な緑の多い近代的な内容のプランでしたが、シンガポールも緑化を取り入れた都市計画の実績がある得意分野なので、インフラ整備を含めた実現性の裏付けがあるシンガポール政府には勝てませんでした。

日本はこの分野で実績があるようで実はあまりありません。
近年の日本の場合は面的に大きな開発というより、既存都市の再開発の分野に強みを持っており、歴史的背景からそのようになっているのです。

野球場が都市計画の壮大な話しになってしまうところが途上国の面白いところですが、アフリカ開発会議(TICAD)など、日本の優位性がこれまではあったかも知れませんが、中国や他国が官民一体となって本気になった現在の状況では国際社会で競争に勝つのは難しくなったと実感するのです。

後で聞いた話しですが、このプロジェクトに対して日本政府はあまり旨味を感じなかったそうです。
インフラ整備など、日本の大手民間企業が儲かる絵を描かくこともODAの役目ですから、政府もそう簡単には乗れません。
この機会に途上国への各国や国際機関のお金の流れもある程度学ぶことも出来ました。

幻の都市計画案となってしまいましたが、各国の陣取り合戦に身を置いたことで見えた、世界で生きていく術を未開の地アフリカ(ウガンダ)が教えてくれました。

ありがとう、愛しのウガンダ!

#コラム #仕事 #建築設計 #都市計画 #海外進出 #アフリカ #ウガンダ

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