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ハワイタイムマシーンZ/太平洋のど真ん中で 20.カメハメハ1世死す

キングカメハメハという名のホテルがハワイ島にあります

ハワイ島、カイルア・コナに、キングカメハメハという名前のホテルがあります。わたくしが初めて訪れた頃(20年ほど前)は、もっとしょぼい感じのホテルでしたが、いつからかコートヤードという名がついて(マリオット系)、なんだかキレイになっています。

キングカメハメハホテルがあるのは、カイルア・コナという町の海岸線です。カイルアと聞いて、オアフ島のカイルアを想像してしまいますが、このあたりの海岸線はほとんど岩場で、砂浜はところどこしかありません。ハワイの歴史をよく知らない頃は、どうしてこんなところがリゾート地になっとるんや?と思ったものです。

ホテルのすぐ近くに桟橋があります。時々ここに、大きな豪華客船が停泊しているのを見かけるので、このあたりの海は、結構深いと思われます。その桟橋に隠れるようにして、海に突き出している小さな岬があり、そこに小さな小屋みたいなものが建てられています。

カマカホヌ国定歴史建造物/Kamakahonu National Historic Landmark

「引退後のカメハメハ1世が老後を過ごした」と紹介されているのですが、ちょっとよく分かりません。

カマカホヌ国定歴史建造物は何やったのか?

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カマカホヌは、カメハメハ1世が老後を過ごしたおうちみたいな場所です。昔はヘイアウみたいなところやったそうで。

それはとっても小さなテントというか、小屋というか。王様が住んでいたとは思えない建物です。西洋でも東洋でも、王様が住んでいた建物といえば、大きかったり高級感があったり、ちょっと威厳を感じるものが多いですが、これは比べ物にならないくらいシンプルで、小さいです。

カメハメハ1世は、西洋の文明だけでなく、西洋の文化も知ってたはずです。西洋の王様は贅沢しまくりだったことも聞いてたと思いますが、それには全く興味を持たず、ハワイの文化を守り続けました。アホやなあ、という人もいらっしゃいますが、わたくしはカッコいいと思います。

カメハメハ1世がカマカホヌへやって来たのは1812年と書いてある資料がありました。マウイ島ラハイナから故郷のハワイ島へ戻って来たわけですね。よく、カメハメハ1世は引退した後、晩年をこのカイルア・コナで過ごした、と書いてあるんですが、晩年とはどういう意味なんでしょう?

カウアイ島にロシアの要塞が造られたのは1815年。それを追い払うために、アレキサンダー・アダムスをカウアイ島に送り込んだのは1817年です。これも、カメハメハ1世が指示しています。

カメハメハ1世は、ハワイ諸島を統一するまで、鬼のように動き回っていました。鬼のような顔をして、という意味ではなく、実際に反対勢力を殺しまくっていました。が、1810年に完全統一を果たした後は、国をまとめるために動きまわります。そういう意味では、戦うことからは「引退」していたかもしれません。

カメハメハ1世は1819年に亡くなりました。どの年表を見ても、カメハメハ1世の王位は1819年まで続いています。ハワイ島へ戻って来ましたが、カメハメハ1世は最後まで王として生きていました。全然引退してなかったと思います。

ハワイ文化では、強い王には神が宿ると思われていて、遺体が食べられることがありました。そんなことが起こらないように、カメハメハ1世の遺体は、秘密の場所に埋葬されました。その場所を知っているのは数名やったそうです。身近な人々も教えてもらえなかった、と。

後に、カメハメハ3世がこの場所を探そうとしますが、できませんでした。その場所は現在も秘密にされたままです。

偉大な王を失い、カアフマヌは焦ったと思います

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カメハメハ1世が亡くなり、王位は息子のリホリホが継ぐことになります。よく22歳で継承した、と書かれていますが、11月生まれの彼が王位を継承したのは5月なので、正確には21歳です。若すぎないか?大丈夫か?と思いますが、心配無用です。実際に権力を握ったのは、カアフマヌでした。

カアフマヌは、カメハメハ1世がハワイ島を制覇するあたりから、ずーっと付かず離れず動き回っている奥さんの一人です(第15話参照

カアフマヌを紹介する記事はたくさんあります。いろんなことが書かれています。

・元気なおてんば娘って感じ
・浮気しまくっていた
(相手の男性たちはカメハメハ1世に見つかって処刑されまくってます)
・ハワイの男女が共に食事できないという文化を壊した
・キリスト教に入信して、ハワイ王国をキリスト教にした

どれも本当ですが、これだけだと、ただの身勝手な女のようです。わたくしは、それだけじゃない、と思います。

カメハメハ1世が亡くなったのは1819年です。ハワイ王国ができてから24年。カウアイ島をハワイ王国に組み入れてからもたったの9年。ハワイ王国はまだまだ不安定な時代でした。

カメハメハ1世の位の高い奥さん、ケオプオラニはとても優しく穏やかな女性やったみたいです。が、国を仕切るなんてできませんでした。そして、王位を継いだリホリホ(カメハメハ2世)はまだ21歳。このままでは、ハワイ王国はやばいと思ったんじゃないでしょうか。

カイルア・コナへやって来たリホリホを出迎える時、カアフマヌは位の高いマントを羽織っていました。そして、「一緒にハワイ王国を支配しましょう」みたいなことを言ったそうです。リホリホは従うしかありませんでした。

カアフマヌはこれ以降、カメハメハ3世の途中まで摂政としてハワイ王国を仕切って行くことになります。

カアフマヌは、ハワイの風習を壊していきます

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いきなり現代の写真ですいません。ハワイアンフードとしてお馴染みのラウラウという食べ物です。豚肉をタロイモとティの葉っぱで包んで蒸し焼きにします。見た目は今ひとつかもしれませんが、包み焼きにしてるせいか、豚肉の美味さいっぱいで最高です。わたくしは結構好きです。あ、店によってはあんまり美味しくないですけど。

欧米人がやってくるまで、ハワイに牛はいませんでしたが、豚はいました。なので、このラウラウは、昔からあるハワイの料理なんです。

さてさて、カメハメハ1世が亡くなるまで、女性はこのラウラウを食べたらあきませんでした。ハワイのカプ(バチが当たるとかそういう意味の言葉。タブー)です。カプは他にもいろいろありましたが、カアフマヌはいきなりこれらを壊しまくります。ケオプオラニとカメハメハ2世を巻き込みながら、豚肉食ったり、男女同席で飯食ったり。現代の人からしたら、それがどうした?なことですが、当時のハワイアンにとっては驚くべきことです。

食べる瞬間、周りで見てた人は恐怖やったかもしれません。が、バチは当たりませんでした。これで、カフナ(神官)の存在意義が崩壊します。

何度か書いていますが、ハワイの人々には4つの位がありました。

・アリイ(王族)
・カフナ(神官)
・マカアイナナ(平民)
・カウヴァ(奴隷)

それまで、ハワイにはいろいろなカプがありました。神がかり的な言い伝え、守るべきことが山ほどありました。カメハメハ1世が亡くなり、国を取り仕切るのは、若い王と女だけになっています。そんな時に、カフナが、神がかり的な言い伝えや守るべきことなんかを言って、世間を仕切り始めたら、ハワイ王国はあっという間に崩壊してしまうかもしれません。カアフマヌはそれを防いだのです。

わたくし、ラウラウを食べるたびにこの話を思い出すようになってしまいました。


。。。。つづく


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