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原因不明の難病『慢性疲労症候群』

私には妻が一人いる。

妻が43歳の時に突然調子が悪くなった。

体が重いらしく、一日中横になっていた。

元気でよく笑うことが取り柄の妻がである。

最初はだらけているだけだと、あまり気に留めていなかったが
徐々に気持も沈み、ほとんど笑わなくなった。


更年期障害?うつ病?


ある日、家に帰ってみると、妻が廊下で亀のように這っていた。

本当に亀のようにゆっくりなのである。

ビックリしたが、ちょっと笑った。

トイレに行こうとしたが、動けなかったそうだ。

病院に行くことを嫌がっていた妻だったが

これ以上放っておけなく病院に連れて行った。


結果は特に異状なし。


異常がない訳がない。

それから何軒も病院にいったが、結果は異状なし。

私も素人ながらいろいろ調べてはみたものの該当する病気がなかった。


妻はなぜか癌を疑い、疑うことを止めなかったので

心身に負担のすくないペット検査をしたが異常なかった。


病名が解らないことを不安がり、その後も病院を転々とした。

妻は先が見えないトンネルの中にいるようだ、と言っていた。


ある心療内科で『慢性疲労症候群』ではないか、といわれた。


聞いたこともないマンマの病名だ。

原因は不明で治療方法も確立されていないらしい。

しかし、妻は安堵していた。

可能性のある病名が解っただけでも嬉しかったようである。


といっても病状が良くなるわけでもなく
妻は、会社を辞めてずっと傍にいてほしいというようになった。

一時的にそういう気持ちになったんだろうと思っていたが

そうでもなかった。


非常に困った。


しばらく悩んだが、この先は妻のために生きる覚悟を決めた。

っていうほどかっこのよいものではないが
はっきりした方向を決めることが重要に思えたからである。


といっても生活のためには働く必要がある。

会社にわがままをいい、妻の実家がある関西に転勤させてもらい
定時帰宅、2週間に一度休むことを了承してもらった。

当然、給料は下がり、勤務中は針のムシロのように感じた。

関東の大学に入学したばかりの息子への仕送りとあいまって
貧困生活に陥ったのであーる。

後に聞いたことであるが、その時息子は
バイトと仕送りでそこそこ裕福な生活をしていたらしい。


親の心子知らず。とはこのことである。

コンチクショーめ。


そんな生活が3年程続いた頃、愛犬のおかげもあり
薄紙をはぐようにではあるが、少しづつマシになっていった。


あれから22年。

完治はしないが、80%くらい元に戻っているように思える。

近くなら一人でも出かけられるようになった。

むしろ一人で出かけたいらしい。

あの時はずっと傍にいてといっていたのに。

夫とはこんなものなのであろう。


私は妻の為に生きると決めたのだから。


のつもり。

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