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【デュエプレ】確率論で考えるデストラーデ最お得連鎖デッキ構築法

めちゃくちゃ連鎖させてお得になりてェ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!


■ はじめに

《龍聖大河・L・デストラーデ》というカードがある。ご存知の通り、「めっちゃ盾増える」「めっちゃ連鎖する」というカードだ。

うっかり複数並べた日にはもうお祭り騒ぎで、効果処理ウィンドウが長蛇の列を成し、山札も残り時間も消し飛ばしてくれる。勘弁してくれ

本日の主役

「連鎖」は成功すればクリーチャー1体分のコストを丸ごと踏み倒せるという大変お得な能力である。このカードを使えば、通常の連鎖持ちクリーチャーだけでは成し得ない、最強お得大連鎖が可能なのでは……!?

ああ、お得男(へドリアン)になりてェ………………!!!!!!!


というわけで、本記事ではできる限りお得な連鎖が起きやすくなるデッキ構築法を確率論の観点から考察する。

なお、筆者はデュエプレも数学もゆるふわエンジョイ勢であるため、この記事の実用性・信憑性もゆるふわであることをご了承いただきたい。肩の力を抜いて暇つぶし程度に楽しんでいただければ幸いである。



■ 連鎖の成功確率

お得なデッキを目指すに当たって、まずは長い連鎖が起こる確率を高めることを考えてみよう。どうすれば理想ムーブを最も再現しやすくなるのか?という話である。

さて、連鎖の判定を行う際には「自分の山札の上から1枚目を見る」という処理が定められている。だがそのままでは確率をイメージしにくいため、本記事では「バトルゾーンにあることが確定していないカードの中からランダムに1枚取り出す」と解釈することにする。

実際は他のカードの効果やマナの色の制約などによって確率が変動する可能性もあるが、そんな難しいことは考えない。盤面制限も無視し、連鎖は必ず発動するものとし、連鎖に成功したクリーチャーは必ずバトルゾーンに出るものとする。極力シンプルに考えよう。


- 記号の定義

確率論の場で扱うために、いくつかの記号を用意しておこう。

まず、《デストラーデ》召喚後の効果処理において、$${i}$$回目の連鎖判定でコスト$${j}$$のクリーチャーが捲れる確率を$${p_{(i,j)}}$$とする。

そして、何度かの判定を経て、一連の効果処理が終了するまでに連鎖に成功した回数を$${X_c}$$とおく。$${i}$$回目までの連鎖に成功かつ$${i+1}$$回目の連鎖に失敗して効果処理が終了した場合は$${X_c=i}$$となり、そのようになる確率を$${P({\small X_c=i})}$$と書く。


次に、デッキ内のカードの枚数を次のように定義する。


  • 連鎖しないカードの枚数(《デストラーデ》自身を含む)
     ……$${a\quad(a≧1)}$$

  • コスト$${j}$$の連鎖可能なカードの枚数
     ……$${n_j\quad(1≦j≦5,\,n_j≧0)}$$


これを用いると、$${p_{(i,j)}}$$は次のように表すことができる。

$$
p_{(i,j)} = \frac{n_j}{40-i}
$$

加えて、デュエプレのルールによりデッキの合計枚数が40枚に固定されているために、次の関係が成り立っている。

$$
{a+\sum_{j=1}^5n_j=40}
$$

$${a}$$を定数とみなせば連鎖可能なカードの枚数の総和は一定であると解釈でき、ここではこれを「デッキ条件」と呼ぶことにする。


- 5回連鎖する確率

はじめに、最長の連鎖である5連鎖について考えてみよう。コスト5→4→3→2→1の順に出ることで5連鎖となるため、確率は次のように表すことができる。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c=5}) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)}p_{(5,1)}\\
& = \frac{1}{_{39}\rm{P}_{5}}n_5n_4n_3n_2n_1
\end{align*}
$$

$${\frac{1}{_{39}\rm{P}_{5}}}$$は定数であるため、$${n_5n_4n_3n_2n_1}$$が最大となる条件を求めたい。そこで「相加平均・相乗平均の関係」を利用する。それを少し変形して、次の不等式が成り立つことが言える。

$$
n_1n_2n_3n_4n_5 ≦ \left( \frac{n_1+n_2+n_3+n_4+n_5}5 \right) ^5
$$

(等号成立条件は $${n_1=n_2=n_3=n_4=n_5}$$)

「デッキ条件」により右辺の$${n_1+n_2+n_3+n_4+n_5}$$は$${40-a}$$に等しく、定数とみなすことができる。よって左辺は等号成立時に最大となり、その条件から$${n_1}$$〜$${n_5}$$の値は次のように定まる。

$$
n_1=n_2=n_3=n_4=n_5=\frac{40-a}{5}
$$

以上のことから、コスト1〜5のクリーチャーを全て同じ枚数デッキに入れることで、5連鎖が起きる確率は最も高くなると言える。

(確率が高くなるとは言っても$${a=4}$$の場合で最大0.028%ほどなのだが……)


- 2〜4回以上連鎖する確率

いくら構築を最適化しようとも5連鎖は滅多に出るものではない。次は少し敷居を下げて、4回以上連鎖する確率$${P({\small X_c≧4})}$$を求めることにしよう。
(ぴったり4回だけ連鎖する確率$${P({\small X_c=4})}$$を最大化する条件は異なったものになるが、実用性に欠けるため本記事では扱わない。)

4回以上ということは5回目の連鎖の成否は関係なく、4回目までの成功確率を掛け合わせればよい。ただしコストは降順でさえあればよいため途中で数字を飛ばすこともでき、その経路に$${_5\rm{C}_4=5}$$通りのパターンがある。それを踏まえて、4連鎖の確率$${P({\small X_c≧4})}$$は次のように表せる。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧4}) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)} +p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,1)}
\\ & \quad +p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,2)}p_{(4,1)} +p_{(1,5)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\ & \quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\[10pt]
&=\frac{1}{_{39}\rm{P}_{4}}
(n_5n_4n_3n_2+n_5n_4n_3n_1+n_5n_4n_2n_1
\\ & \qquad \qquad +n_5n_3n_2n_1+n_4n_3n_2n_1)
\end{align*}
$$

また、$${P({\small X_c≧3})}$$および$${P({\small X_c≧2})}$$についても、同様の考え方で次のように表すことができる。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧3}) &= \frac{1}{_{39}\rm{P}_{3}}(n_5n_4n_3+n_5n_4n_2+n_5n_4n_1+n_5n_3n_2+n_5n_3n_1
\\ & \qquad \qquad +n_5n_2n_1+n_4n_3n_2+n_4n_3n_1+n_4n_2n_1+n_3n_2n_1)
\\[10pt]
P({\small X_c≧2}) &= \frac{1}{_{39}\rm{P}_{2}}(n_5n_4+n_5n_3+n_5n_2+n_5n_1+n_4n_3
\\ & \qquad \qquad +n_4n_2+n_4n_1+n_3n_2+n_3n_1+n_2n_1)
\end{align*}
$$

さて、$${P({\small X_c≧4}),P({\small X_c≧3}),P({\small X_c≧2})}$$の形は全て一定の法則性を持っていることにお気づきだろうか。さらに先に求めた$${P({\small X_c=5})}$$も、6回目の連鎖には必ず失敗することから$${P({\small X_c≧5})}$$に等しい。これらをまとめて一般化して、$${P({\small X_c≧i})}$$は次のように表すことができる。

$$
P({\small X_c≧i}) = \frac{1}{_{39}\mathrm{P}_{i}}N_i
$$

($${N_i}$$:$${n_1}$$〜$${n_5}$$の中から$${i}$$個を取り出した積の総和)

かなり長くなる(のと、筆者の数学力では綺麗に説明しきれない)ため詳細は割愛するが、この$${N_i}$$の部分の最大化条件は「デッキ条件」を利用して求めることができる。その結果はやはり、

$$
n_1=n_2=n_3=n_4=n_5=\frac{40-a}{5}
$$

という先ほどと同じものである。この条件を満たしていれば、全ての$${i}$$について$${P({\small X_c≧i})}$$が最大値をとるということだ。


- 1回以上連鎖する確率

1回だけでも連鎖に成功する確率にも触れておこう。コストに関係なく連鎖可能なカードが出てくれればそれでよく、「デッキ条件」を利用して次のように表せる。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧1})&=\frac{n_1+n_2+n_3+n_4+n_5}{39}\\
&=\frac{40-a}{39}
\end{align*}
$$

$${a}$$にのみ依存しており、連鎖可能なカードを増やせば確率が上がるというだけだ。前述の最大化条件を適用しても影響がないため、同じ条件下で最大化できているとも解釈できる。


- まとめ

以上をまとめると、コスト1〜5のクリーチャーを全て同じ枚数デッキに入れることで、連鎖の長さに関わらず、成功確率が最も高くなるということがわかった。

均等に5等分できない場合もあるだろうが、それでも枚数の差がなるべく少なくなるようにすることで確率を高めることができる。



■ 連鎖数の期待値

次に、連鎖数の期待値を高めることを目指してみよう。期待値とはざっくり言うと、平均してどれくらいの値になる見込みがあるかを示す量といったところである。

連鎖数の期待値$${E(X_c)}$$は次の式で求めることができる。

$$
E(X_c)= \sum _{i=1}^{5} iP({\small X_c=i})
$$

要は連鎖数にその成功確率$${P({\small X_c=i})}$$を掛けたものを、全て足し合わせればよい。感覚的に前述の$${P({\small X_c≧i})}$$を最大化すればこちらも最大化できるように感じるかもしれないし、結論から言うとそれで正しいのだが、一応確かめておくことにする。


- 必要な確率を求める

ここで$${P({\small X_c=i})}$$の中身を考えよう。$${i}$$回ちょうど連鎖するという結果は言い換えれば「$${i}$$回以上連鎖するもののうち、$${i+1}$$回以上でないもの」であり、その確率は次のように求めることができる。

$$
P({\small X_c=i}) = P({\small X_c≧i})-P({\small X_c≧i+1})
$$

本当にこの式が成り立つのか、試しに「連鎖に4回成功し、5回目で失敗する確率」を求める式から変形してみよう。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c=4}) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)} (1-p_{(5,1)})+p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,1)}
\\ & \quad +p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,2)}p_{(4,1)} +p_{(1,5)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\ & \quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\[10pt]
&= \{ p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)} +p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,1)}
\\ & \quad +p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,2)}p_{(4,1)} +p_{(1,5)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\ & \quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)} \} - p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)}p_{(5,1)}
\\[10pt]
&=P({\small X_c≧4})-P({\small X_c≧5})
\end{align*}
$$

他の$${X_c}$$についても、同様の変形が可能である。



- 期待値が最大になる条件

では期待値$${E(X_c)}$$を見てみよう。先ほどの式を代入すると、次のような変形ができる。

$$
\begin{align*}
E(X_c) &= P({\small X_c=1})+2P({\small X_c=2})+3P({\small X_c=3})
\\ & \quad +4P({\small X_c=4})+5P({\small X_c=5})
\\[10pt]
&= \{ P({\small X_c≧1})-P({\small X_c≧2}) \} +2\{ P({\small X_c≧2})-P({\small X_c≧3}) \}
\\ & \quad +3\{ P({\small X_c≧3})-P({\small X_c≧4}) \} +4\{ P({\small X_c≧4})-P({\small X_c≧5}) \}
\\ & \quad +5\{ P({\small X_c≧5})-P({\small X_c≧6}) \}
\\[10pt]
&= P({\small X_c≧1})+P({\small X_c≧2})+P({\small X_c≧3})+P({\small X_c≧4})+P({\small X_c≧5})
\end{align*}
$$

なんとびっくり、$${P({\small X_c≧i})}$$を足し合わせるだけとなる。

これらは全て同じ条件$${n_1=n_2=n_3=n_4=n_5=\frac{40-a}{5}}$$で最大化できることが既にわかっており、$${E(X_c)}$$も当然この条件で最大化できるはずだ。


- 実際に計算してみる

さて、ここで具体的に$${a=4}$$と仮定して計算してみよう。この場合、各コスト7枚ずつ(+どこかに1枚足す)で最も期待値が高くなり、その値は $${E(X_c)\fallingdotseq \bf 1.34}$$ となる。

……え?それだけ???

ここで連鎖数ごとに成功確率を算出してみよう。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧1}) &\fallingdotseq 0.92\\
P({\small X_c≧2}) &\fallingdotseq 0.35\\
P({\small X_c≧3}) &\fallingdotseq 0.068\\
P({\small X_c≧4}) &\fallingdotseq 0.0026\\
P({\small X_c=5}) &\fallingdotseq 0.00028\\
\end{align*}
$$

そう、当たり前ではあるが、長い連鎖であればあるほど成功確率は極端に小さくなるのだ。1回でも連鎖する確率は92%あるのだが、2回以上は35%、3回以上だと6.8%まで激減する。実戦では2回連鎖してくれれば上振れと言ってよいだろう。


- まとめ

コスト1〜5を均等に(あるいはなるべく均等に近い枚数で)入れると、連鎖の成功確率とともに連鎖数の期待値も高くなる。

期待値は最大化してもせいぜい1を超える程度なのだが、とにかく均等に入れて構築したほうがたくさん連鎖しやすいのは確かである。



■ コストの種類を減らした場合

さて、ここまでの結果からこう考えることだろう。

5連鎖までしなくていいし、それだけのために1マナのクリーチャーなんて入れたくないよ……

── もっともな意見

いくつかのコストのカードを採用せず、種類を減らした場合を考えてみる。もちろん5連鎖は諦めることになるが、確率や期待値がどう変動するか見てみよう。


- 4種類の場合

さて、$${n_1=0}$$とし、コスト2~5の4種類のみを使うことにしてみよう。この時の確率や期待値は前述の式に$${n_1=0}$$を代入するだけで求めることができる。その最大化条件も大きくは変わらず、$${n_2}$$〜$${n_5}$$が全て同じ枚数であればよい。
(今回はコスト1のカードを0枚としているが、どの数字を削っても同じ結果となる。)

先ほどと同じように$${a=4}$$とし、$${n_2=n_3=n_4=n_5=9}$$で以下の値が出た。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧1}) &\fallingdotseq 0.92\\
P({\small X_c≧2}) &\fallingdotseq 0.33\\
P({\small X_c≧3}) &\fallingdotseq 0.053\\
P({\small X_c≧4}) &\fallingdotseq 0.0033\\
P({\small X_c=5}) &= 0\\
\end{align*}
$$

$$
E(X_c) \fallingdotseq 1.31
$$

連鎖数の期待値が下がっているだけでなく、2〜4連鎖の確率も減少している。だが減少幅はあまり大きくなく、1連鎖の確率だけは$${a}$$を変えない限り変動しないため、許容範囲内だろうか。


- 3種類の場合

さらに$${n_2}$$も0枚として、最大3連鎖までに絞ってみよう。同じく$${a=4}$$とし、$${n_3=n_4=n_5=12}$$で以下の値が出た。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧1}) &\fallingdotseq 0.92\\
P({\small X_c≧2}) &\fallingdotseq 0.29\\
P({\small X_c≧3}) &\fallingdotseq 0.032\\
P({\small X_c≧4}) &= 0\\
P({\small X_c=5}) &= 0\\
\end{align*}
$$

$$
E(X_c) \fallingdotseq 1.25
$$

2連鎖の確率が30%を切り、期待値もさらに減少してしまった。


- 2種類の場合

最後に$${n_3}$$も0枚として、最大2連鎖までにする。$${a=4}$$、$${n_4=n_5=12}$$で以下の値が出た。

$$
\begin{align*}
P({\small X_c≧1}) &\fallingdotseq 0.92\\
P({\small X_c≧2}) &\fallingdotseq 0.22\\
P({\small X_c≧3}) &= 0\\
P({\small X_c≧4}) &= 0\\
P({\small X_c=5}) &= 0\\
\end{align*}
$$

$$
E(X_c) \fallingdotseq 1.14
$$

2連鎖の確率が22%にまで下がってしまった。ここまでくると成功しにくくなったことが体感でわかりそうだ。


- まとめ

コストの種類を減らすと、全体の期待値どころか2連鎖の確率すら下がるという結果となった。

もちろんコスト1のクリーチャーを入れない方がデッキパワーは底上げできると考えられるが、連鎖をメイン戦術とし、かつ頭数が欲しいなら採用を検討する余地も無くはない。



■ 合計踏み倒しコストの期待値

連鎖数の期待値を最大化する方法は判明した。だが考えてみてほしい。2連鎖の場合にコスト2→1と連鎖するのと5→4と連鎖するのでは、お得度合いに天と地ほどの差があるのではないだろうか。

ならば連鎖の数ではなく質で、具体的には一連の連鎖によって踏み倒せるコストの合計値で評価してみよう。その期待値を求め、最も多くコストを踏み倒しやすい条件を探ることにする。


- 踏み倒し量ごとの成功確率

一連の連鎖によって踏み倒したコストの合計値を$${X_m}$$とおく。$${X_m}$$がとる値には1~15まで幅があり、期待値を算出するにはそれらすべての成功確率を計算する必要がある。一般化は難しいため、地道に全て書き下すと次のようになる。

$$
\begin{align*}
P(X_m=1) &= p_{(1,1)}
\\
P(X_m=2) &= p_{(1,2)} (1-p_{(2,1)})
\\
P(X_m=3) &= p_{(1,3)} (1-p_{(2,2)}-p_{(2,1)})
\\&\quad +p_{(1,2)}p_{(2,1)}
\\
P(X_m=4) &= p_{(1,4)} (1-p_{(2,3)}-p_{(2,2)}-p_{(2,1)})
\\&\quad +p_{(1,3)}p_{(2,1)}
\\
P(X_m=5) &= p_{(1,5)} (1-p_{(2,4)}-p_{(2,3)}-p_{(2,2)}-p_{(2,1)})
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,1)}
\\&\quad +p_{(1,3)}p_{(2,2)} (1-p_{(3,1)})
\\
P(X_m=6) &= p_{(1,5)}p_{(2,1)}
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,2)} (1-p_{(3,1)})
\\&\quad +p_{(1,3)}p_{(2,2)}p_{(3,1)}
\\
P(X_m=7) &= p_{(1,5)}p_{(2,2)} (1-p_{(3,1)})
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)} (1-p_{(3,2)}-p_{(3,1)})
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,2)}p_{(3,1)}
\\
P(X_m=8) &= p_{(1,5)}p_{(2,3)} (1-p_{(3,2)}-p_{(3,1)})
\\&\quad +p_{(1,5)}p_{(2,2)}p_{(3,1)}
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)}p_{(3,1)}
\\
P(X_m=9) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)} (1-p_{(3,3)}-p_{(3,2)}-p_{(3,1)})
\\&\quad +p_{(1,5)}p_{(2,3)}p_{(3,1)}
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)}p_{(3,2)} (1-p_{(4,1)})
\\
P(X_m=10) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,1)}
\\&\quad +p_{(1,5)}p_{(2,3)}p_{(3,2)} (1-p_{(4,1)})
\\&\quad +p_{(1,4)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\
P(X_m=11) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,2)} (1-p_{(4,1)})
\\&\quad +p_{(1,5)}p_{(2,3)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\
P(X_m=12) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)} (1-p_{(4,2)}-p_{(4,1)})
\\&\quad +p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,2)}p_{(4,1)}
\\
P(X_m=13) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,1)}
\\
P(X_m=14) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)} (1-p_{(5,1)})
\\
P(X_m=15) &= p_{(1,5)}p_{(2,4)}p_{(3,3)}p_{(4,2)}p_{(5,1)}
\\
\end{align*}
$$


頭が痛くなってきた。


- 期待値の最大化

では、合計踏み倒しコストの期待値$${E(X_m)}$$を求めよう。$${E(X_m)}$$は次の式で求めることができる。

$$
E(X_m) = \sum_{k=1}^{15}kP(X_m=k)
$$

本来ならば上の$${P(X_m=1)}$$〜$${P(X_m=15)}$$を全て代入し、$${n_1,n_2,n_3,n_4,n_5}$$の5変数関数として最大値をとる点を求めるのが筋であろう。ところが流石に筆者の数学力では手に負えなかったため、表計算ソフトで具体的な値を計算しながら最大値になる点を探すという手法をとった。

$${a}$$の値ごとに$${E(X_m)}$$の値が最大となるように$${n_1}$$〜$${n_5}$$を調整すると、次の表のような値となった。

そして、$${n_3,n_4,n_5}$$の値の推移をプロットしたものが次のグラフである。

どうやら$${n_1,n_2,n_3}$$をほぼ入れず、$${n_4}$$が$${n_5}$$より9~10枚少なくなるように枚数を配分すると、$${E(X_m)}$$が最大となるようだ。つまり、ちまちま連鎖数を稼ぐよりも大きいクリーチャーを1、2体踏み倒す確率を上げる方がコスト的にはお得ということになる。元も子もない。

$${n_1,n_2,n_3}$$の枚数を増やした場合は若干の変動があるが、概ねコストの大きい順に多く入っているほど$${E(X_m)}$$は高くなる。


- まとめ

マナカーブの定石に真っ向から反することになるが、深くは考えないでおこう。

実用上は、コストの大きいクリーチャーが多いほうが踏み倒しコストの期待値は上がると言っていい。連鎖数の期待値の最大化条件とはトレードオフの関係になっているため、量か質か、取りたい戦術によって使い分けるとよいだろう。



■ お得なデッキ例

《デストラーデ》の連鎖の力を最大限に引き出すデッキ構築方法がわかった。ここからはそれを踏まえて筆者が実際に構築し、使ってみたデッキを紹介する。


- for スタートチャージ5

そもそもなぜこの記事を書くに至ったかというと、SPルールマッチ・スタートチャージ5で《デストラーデ》と《キリモミ・スラッシュ》を使ったワンショットを決めてみたいと思い立ったからだ。射出する打点を安定して揃えるために連鎖の確率を分析したのを、せっかくなので書き残しておこうと思った次第である。

そうして組み上がったデッキがこちら。

これがやりたくてデストラーデを2枚生成した

$${a=8}$$で連鎖数の期待値を最大化した、$${ E(X_c) = 1.15 \;,\; E(X_m) = 3.13 }$$ の型。

スタートチャージ5であれば1ターン目から6マナ使えるため、

  • 1ターン目に《デストラーデ》を召喚

  • 連鎖で6打点揃える

  • 連鎖中に1マナ加速

  • 連鎖終了時に《キリモミ・スラッシュ》が手札にある

を全てクリアすることで1ターンキルも可能。


- 先攻1ターンキル特化型

先ほどのデッキの派生として、先攻1ターンキルの可能性に全力を注いだバージョンもある。

役割ごとの比率など、改良の余地はある

同じく連鎖数を重視した、$${ E(X_c) = 1.15 \;,\; E(X_m) = 3.19 }$$ の型。

コスト2以上の全てのクリーチャーがマナ確保・呪文確保・2打点のいずれかを担当している。1キルは滅多に成功するものではないが、先攻を取って初手に《デストラーデ》を握ってさえいれば始動はできる。筆者はこの構築で一度だけ1キル可能な盤面を作れた(が、時間切れで失敗)。


- 通常ルール用

せっかくなので通常ルール用のデッキも構築してみた。

構築がパズルっぽくて楽しい

踏み倒しコストの期待値を若干意識した、$${ E(X_c) = 1.14 \;,\; E(X_m) = 3.41 }$$ の型。

《デストラーデ》からの大連鎖チャレンジだけでは飽き足らず、《ベルアリタ》や《アカシック・サード》からのガチャ、さらには《ハルクーンベルガ》のマナ置き占い(?)まで搭載した欲張り運試し構築。リソース回復手段は無いが、連鎖でなんか出ればヨシ!のスタンスである。


このデッキに限ったことではないが、そもそもコンセプトが運任せなので正直強くはない。が、たまに謎の噛み合いが起きて強くなるので個人的には回してて楽しいと思う。

ちょっとしたガチャ、ギャンブル、占いのような楽しみ方もできるので、ランクマッチの激戦に疲れた時の息抜きにでもいかがだろうか。


【2022/8/15追記】
このデッキを15弾の新カードで調整したものを使って、なんとAD・ND両方でマスター帯に到達した。(道中トスしてくださった方、ありがとうございました)
デッキの内容は別の記事で紹介するが、調整次第でそれなりに戦えるデッキにもなるようだ。15弾実装直後の環境だったため、こういう上振れゴリ押しデッキの刺さりが良かっただけかもしれないが……



■ 結論




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