子供が泣く理由

安定期初日の妻のつわりは、平常運転で猛威をふるった。安定期に入ったからといってつわりがおさまるなんて信じていたわけではなく、やっぱりねという感じでこれまでの日曜と同じように、私はバタバタと過ごした。
妻がつわりで具合が悪くなっている時は、1歳の息子もたいてい機嫌がすこぶる悪い。寝ている妻に激しく泣きつくか、家事をする私に対し激しく泣き叫ぶ。それは母親の異変を察してなのか、甘える対象が1人減った不自由さからなのか分からないが、しかし思っている以上にこの子はずっと色々なことを分かっているのではないかと思わされることが度々ある。なのでこれは機嫌が悪いわけではなくもしかしたら、お母さんの非常事態をお父さんに知らせて一刻も早い救援を促しているのかもしれない。そう思うと私は家事をする手を止め、大声で泣く息子を抱き上げ、大丈夫だよお母さんはおなかに赤ちゃんがいるから気持ち悪かったり頭が痛かったりしてるんだよ休ませてあげようねお父さんと2人で力を合わせてお母さんを助けていこうねと、説く。それでも泣き止まない場合は窓の外を見せて、ほらブーンだよいっぱい走っていくね、と自動車を指差して見せたりする。そうすればほぼ間違いなく泣き止み、ブーン!と嬉しそうに声を出し、ようやく笑う。やれやれこれで家事に戻れる、と息子を下ろすと案の定また足もとに泣きついてくるので、抱き上げ、ブーンだよ、ブーン!と笑い、やれやれと下ろし、を繰り返す。このままではきりがないので、次に今やっている家事の大切さを説明する。あなたのご飯を作っているんだよ。と話せばようやく状況を理解して1人で遊びはじめてくれる。「バナナ」と「耳」しか言えない子がその説明で大人しくなることに驚き、思っている以上にこの子はずっと色々なことを分かっているのではないかと思わされる。泣いていた理由は遊んで欲しかっただけのようだが。そうして私は引き続き日曜をバタバタと過ごした。

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