スプラ中のティルトをアンガーマネジメントで乗り切る

先日 Spla+hon が届いた。中のコンテンツを興味深く読んだ。ありがとうございました。

その中で、スプラ中のティルト(解説)に関する記事があった。スプラを真剣にプレーしたことがある方なら、サモラン勢等問わず誰しも一度は経験があるはずだ。

ティルトがとくに起きやすいのは野良マッチングではないかと思う。

たとえば、自分が塗り武器でなくキル武器を持っており、味方に明らかに塗り武器な人がいたとする。この場合、味方には塗って欲しい。が、味方はなぜかキルムーブばかりをして盤面が一向に整わない。結果相手にジリジリと押され負けた試合があったとする。何度も試合中に「塗って欲しい」と思ったはずだ。試合中、だんだん塗らない味方に対してイライラが溜まっていく。だんだん自分のプレーが投げやりになる。リザルトの塗りポイントを見て、「なんで塗らないんだ!」と頭に血が昇る。これがティルトである。

そのほか、理不尽なパワー差のある試合部屋に放り込まれた際にもティルトしやすいだろう。

ティルトは残念ながらプレイヤーの勝率を下げる方向に働くことが多い。ティルト中は、普段なら取らないリスクを取り、普段通りでない心理状態に陥る。ティルトした自分は、敵にとってはカモである。これが何度も続くと、多くの場合いわゆる「パワーを溶かす」結果に至る。

私もそれなりに昔ティルトに悩んできた。どうしても頭に血が昇る瞬間というのはある。私自身は味方にというより、どちらかというと自分の不甲斐ないプレーに対してティルトすることが多かった。そしてティルトしたなと感じた日には、冷静でないプレーも相まってよくパワーが溶けていた。

一方でティルトはだんだんコントロールできるようになってきたとも感じる。ティルトは怒りの一種なため、いわゆるアンガーマネジメントのノウハウを役立てられるためだ。この記事では、試合中のティルトの向き合い方や抑え方について考えていく。

怒りの衝動を抑える

怒りの衝動を抑える方法は、試合中とっさに使えるテクニックとして覚えておくとよいものだ。この記事では、私が昔アンガーマネジメントの書籍を読んで学んだ方法を紹介する。たとえば下記のような手法がある。

  • ストップシンキング

  • ディレイテクニック

  • グラウンディング

  • タイムアウト

ストップシンキング (Stop Thinking)

頭に血を上らせず怒りに冷静に向き合うためには、怒りにまつわるすべてのことから一度離れる必要がある。怒りへの向き合い方としては「戦う」か「逃げる」が一番だが、怒りへのトレーニングを受けていない多くのプレイヤーは「戦う」精神力を持ち合わせてはいないはずだ。したがって「逃げる」のが、多くのプレイヤーにとってもっとも効率よく最適戦略になりうる。ストップシンキングは逃げる上ではもっともよい戦略だ。

このテクニックの名前の通りで「考えることを一時的にやめる」のがストップシンキングだ。心の中で「STOP」を唱え、一旦何も考えない状態を作る。外界からの刺激、たとえば味方が全落ちしたなどの刺激が来たとしても、一旦そのことについて何かを考えるのをやめるのだ。デス時に目を閉じるのが試合中に行う場合はもっとも有効かもしれない。

ディレイテクニック (Delay Technique)

頭に血を上らせるのを少し遅らせるという手もある。たとえば、カッとなった瞬間に少し複雑な計算問題を解くという方法がある。たとえば「15x25」のような2桁同士の掛け算や、1000から8ずつ引いていく計算を数秒行うというものだ。これもデスをしている間に少しでも考えて計算してみると、意外と気が落ち着くかもしれない。

なお、私はこの方法については算数が苦手なため、計算以外の余計な思考が入ってしまい、ノイズが多いと感じる。したがってあまり試合中には使っていない。

コーピングマントラ (Coping Mantra)

頭に血が上りそうになったとき、特定の言葉をつぶやくという方法もある。マントラというのは、もともとは仏教などで祈りを捧げる際に唱えられる言葉のことを指していた。これを「怒りよ、収まれ!」と自身の怒りに対して祈りを捧げるかのように唱える方法が、コーピングマントラだ。

言葉はどんなものでも構わないが、とにかく自分の気を落ち着かせる言葉を選んでひたすら唱える。「心配ない、逆転できる」「大丈夫大丈夫」のような特定の言葉を、デスしたときなどに唱える。シンプルな方法だ。

私もこれは結構利用する。私の場合は、試合中に「大丈夫大丈夫」と唱えるのが結構効くようだ。

グラウンディング (Grounding)

グラウンディングは怒りに囚われてしまった自分の思考を現実世界に引き戻すための方法だ。

具体的には、机の上にある物の特徴を軽く言葉に出してみるといいだろう。今、私の目の前には iPhone がある。この iPhone はどういう特徴をもっているか、を簡単に頭の中で考えてみるのだ。私の iPhone はまず 12 で、ミントグリーンのケースに入っている。このケースはシリコンでできていて…といった具合にだ。

試合状況を簡単に解説してみてもいいだろう。デスしたタイミングはやはり一番焦るはずなので、デスしたタイミングで「今味方が何枚場に残っている」「この武器の人がこの位置にいる」「敵はどこで」などを、脳内で簡単に解説するといいだろう。大事なことは、自分が怒っている対象や怒っていることそのものから離れることだ。

タイムアウト (Timeout)

上記を試合中に試してみてもうまくいかなかった場合は、その場から離れるのをお勧めする。つまり、試合が終わったあとスプラを一旦閉じるのだ。メンタルコントロールの話でよく語られる方法だが、もちろんアンガーマネジメントの文脈でもこの方法は有用だ。

ダメな日はダメなのだから、諦めて別のことをするに限る。ティルトしてパワーを大量に溶かすより、翌日リフレッシュして試合に臨んだ方がパワーが伸びるものだ。

ティルトするタイミングを知る

試合中に手っ取り早く使えるテクニックとして、一旦ティルトした際どうすればよいかをここまでは紹介してきた。だが、そもそもできるだけティルトしない、ティルトしないように未然に防ぐのが上達のうえでは重要だろう。この節では、自身がティルトしやすいタイミングを未然に察知するにはどうすればよいかについて、アンガーマネジメントの手法を紹介する。

具体的には下記が使えるのではないかと私は考えている。

  • コアビリーフの修正

  • アンガーログを取る

コアビリーフ (Core Belief) の修正

怒りというのは自身の信じる状態に周囲や相手がしたがってくれなかった際に発生することが多い。この自身の信条をコアビリーフと呼ぶ。たとえば、「夕食を食べたら食器を片付けるべき」みたいなものがコアビリーフだ。このような「〜であるべき」のような理想論に従って人は普段生活しており、ここからかけ離れた行動をとる人物に対して怒りの感情を抱くことになる。

スプラの場合の自身のコアビリーフには何があるだろうか。たとえばで思いつくものとしては、

  • このステージでは味方はこの位置でホコを持つべきで、このルートでホコを運ぶべきだ(逆に、この位置ではホコを持たないべきで、このルートは使わないべきだ、も該当する)。というような、味方の行動に対する要求。

  • 試合はノックアウトするべきだ。すべての試合に勝たなければいけない。のような完璧主義。

などがあるだろう。私はサーモンランはやらないのであまりわからないが、サーモン勢を見ていると「この場合はこうすべき」という信念がより強そうに見える。このあたりも、コアビリーフに分類できるだろう。

ただ、このコアビリーフはスプラトゥーンというゲームの野良マッチにおいては全部通用しない。相手がどのようなコアビリーフを抱いているかを知るのは1試合の中では事実上不可能だし、相手と対話してコアビリーフを修正させたりお互いに擦り合わせたりするのは不可能だからだ。

というわけで、自身のコアビリーフを少し考えて認識したあとは、そのコアビリーフを野良での試合中は全部捨ててしまうのがよいのではないかと考えている。そして野良の味方の動きに自分の理想論を押し付けようとするのはやめ、野良の味方の動きに合わせて行動してあげるのがよいと思う。

ときどき計測に失敗してパワーの低い帯の部屋に入れられることがあると思う。その際、ラインを上げるのが遅いと感じるだろう。この場面で自分のコアビリーフを信じて、「このタイミングで絶対このラインにいるべき。カモン!」を押し続けるだけではダメだ、ということである。実際そうしたとしても単騎で浮いて敵にやられ、ラインがさらに押し下げられるのが関の山だろう。

パワーに差があると抱くコアビリーフが異なる。この場合は、おとなしく周りの味方に合わせたラインにとどまるようにするのが最善の策になることが多いと思う。もちろん自分一人で試合を全部決められる力量があれば何の問題もないが、大抵はたとえパワーが低かろうがそうはいかない。

アンガーログを取る

ティルトは記録して客観視すると、意外としょうもない理由で怒っていたんだなと再認識できたり、あるいは自分が我を忘れやすいタイミングを事前に察知することができるようになる。アンガーマネジメントでは、アンガーログと呼ばれる記録をつけるよう薦められる。やはり同様に、スプラのティルトについてもアンガーログを取るとよいかもしれない。

アンガーログを取る際には、次のような記録を試合が終わった直後などに取ると効果的だろう。

  • 怒り度合い(10点満点)

  • 怒った場面

  • 誰に対して

  • どのような出来事に対して

  • 怒った理由

  • 怒った結果、味方(あるいは怒りの対象)にして欲しかったこと

とくに怒った理由と怒りの対象にして欲しかったことは、自分の抱くコアビリーフを表出させるうえで重要な記録になる。自身の抱くコアビリーフの認識は、ティルトの発生の予知においては欠かせない。

コアビリーフを認識したあと、追加で「リフレーミング」と呼ばれる作業を行うのもお勧めだ。リフレーミングは抱いたコアビリーフに対して反論となるような質問をいくつか投げかけてみる作業を指す。これにより、自身のコアビリーフを適切な、怒りの発生しにくい方へ修正する。

たとえば「怒った理由」に「ラインが上がるのが遅いので自分でラインを上げに行ったがデスした、その後も味方が復帰してきた相手に溶かされてカウントが進まなかった」、「怒った結果、味方(あるいは怒りの対象)にして欲しかったこと」の内容として、「相手が3枚落ちていたのだからラスト1枚、後衛含め一気にラインをあげて欲しい」があったとする。

これに対する反論を書くなら、「逆に自分が一人で強引にラインを上げず、味方に合わせてジリジリと人数有利を作りながらあげればよかったのでは?」というものが考えられるだろう。この反論そのものがリフレーミングだ。自分の抱く信条を多面的な見方から修正していくために使えるテクニックである。

アンガーログは時間と手間がかかるが、もし自身のティルトがパワーの上がらない大きな要因だと思うプレイヤーがいるのなら、ぜひ試してみてほしい。

そのほか

野良マッチはたしかに辛いことも多いが、そもそも敵味方ともに乱数で寄せ集められるため、自分の思い通りに試合が運ぶことはまずない。

野良マッチをしていると負け試合にもいくつか種類があると思う。

  1. 敵集団が味方集団と比べて圧倒的にパワーが高そう。

  2. 自分の判断ミスが起点で負け筋を引き、試合の流れが変わってしまった。

  3. 自分味方ともにベストを尽くしたが、僅差で負けてしまった。原因はよくわからない。

このうち、私が思うくよくよ考えるのをやめた方がよいのは「1」と「3」だ。乱数ゲーなのだから正直たとえは悪いが当て逃げに遭うようなものである。原因を追求しても何もわからないことの方が多い。こういった試合は忘れるに限る。

2は改善にしがいがあるし、ここでティルトしていてはもったいないと思う。自分に原因があるので改善できる。うまくなる伸び代はここにある。

参考文献

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