1月、2月に読んだ本

2023年はあまり仕事を受けすぎずにのんびり本を読むぞ、と思っていたのですが、引越しや仕事を受けてしまったことから年明けより急に忙しくなってきました。というわけであまり本を読む時間もなくなってしまったわけなのですが、読んだ本を紹介しようと思います。ちなみに技術書は含みません。

ビジネス教養としての半導体

PS5 が手に入らないとか、自動車が手に入らないとか、こうした話題が去年あたりにありましたよね。これらに共通するのは半導体の供給不足でした。半導体は今や石油等のエネルギー資源に並んで(あるいはそれを超えて)、ビジネスの継続性や国家の安全保障を考える上では避けては通れないものとなりました。

半導体は今や身の回りのあらゆるものに浸透しています。今この文章を書いているコンピュータには当然使用されていますし、私の目の前に見える iPhone や Apple Watch 等の製品にも組み込まれています。半導体がない生活はもはや考えられないのです。

スマホの供給だけを見ていると需要の予測を見誤りそうです。スマホは多くの人々の手に行き渡ってしまったので、これ以上スマホそれ自体の需要が爆発的に伸びるとは考えにくいからです。

一方で、これからの時代やってきそうなのは「すべてのモノがコンピュータを搭載する」という未来です。最たる例は IoT なわけですが、それ以外にも最近は自動車も実質コンピュータになりつつあります。このような製品は今後も増え続けていくでしょうし、ロボットの普及などが仮に進めばさらに半導体は必要とされるでしょう。

こうした半導体の細かいトレンドやなぜ供給不足が発生するのかといった問題について体系的に知識を整理できてよい一冊でした。

技術者のためのテクニカルライティング入門講座

副業で記事の執筆を受けたり、あるいは新しい本の執筆が始まりそうな関係で改めて基本を見直そうと思って買いました。が、結構若手向けな内容で基本的すぎたので not for me でした。SE とかの新卒研修で使えそうな内容だなとは感じました。

記事の連載や書籍などより長い文章を書く人にとっては、むしろ下記の本の方がおすすめできるかもしれません。「ちゃんとした文章」を書く必要がある場合には、私もこの本のメソッドを使って文章を書くようにしています。パラグラフライティングは知的生産をする人々にとっては必要不可欠なスキルだと思っています。

翻訳スキルハンドブック

翻訳の仕事を受けることになったので、翻訳はどうすればよいのだろう…と思って手に取りました。こちらはかなり自分のためになった一冊でした。

翻訳を学ぶ上で重要だなと思ったのが、「翻訳はいわゆる技術であり、帰国子女でなければいい翻訳家にはなれないわけではない」というものでした。裏を返せば、帰国子女であっても翻訳の技術がなければいい翻訳家にはなれない、ということでもあります。これは本書の中のコラムで紹介されていて、まずマインドセットを正す上で重要な観点だと思いました。

というのも、翻訳は語学力とは別の技術だからです。語学力は確かに翻訳を助けますが、翻訳行為それ自体は技術なので、帰国子女などでなくても習得可能というのが本書の主張の一部です。これはそうかなと思います。

5章くらいから翻訳の具体的なテクニックが紹介されます。とくに英語の主語をどう訳すかといった話題や、「snacks」のように日本語には直接対応する語がないか、直接対応する語はニュアンスが若干異なる場合には、その語の「上位語」「下位語」を利用するといいというテクニックです。snacks の場合はたとえば上位語としての「食品」を使うとわかりやすくなる、などです。

加えて、自動翻訳が意外と現場では使われていそうという知見も得られました。まず自動翻訳で一気に訳して、その後明らかに日本語として不自然な箇所を手直ししていくという手法が取られることがあるようでした。

日本語としての自然な文章になるように最後まで手を抜かないのも大事だなと思いました。これは本書の中では何度も強調されていたことでした。実際、技術書やドキュメントにおいてはたしかに翻訳はされているが、日本語として読みやすい文章になっているかは微妙なものが多いです。ですが、翻訳の目的は原文のニュアンスを正確に伝えること以上に、その原文の持つ文脈や概念を適切に伝えることのほうが重要です。

最後の防衛線

結構分厚かったけど読み切ってしまいました。元日銀の副総裁が書いた回顧録のようなものです。とくに黒田日銀以降の話題に強い関心があったので読むことにしたのがきっかけでした。やはり外から経済学者や経済評論家が語るだけでは正確な情報は得られないと感じました。中の人が語る金融政策は、当たり前ですが政策に対する解像度が全く異なります。

また同時に、バブル前後、バブル以降の日本の経済史が日銀中の人からの目線で書かれた一冊にもなっています。正直私が生まれる前の金融政策についても書かれているので本当に「歴史」感のあるページもありました。ただ大半はニュース等で見覚えのある話だったりして、そちらは「あの裏ではこんなことになっていたのか」という事情を知ることができました。

黒田日銀の残した大きな課題といえば大量に積み上がった ETF なのですが、そちらについては「将来の日銀の優秀なテクノクラートならきっと解決できる」とだけ書かれていて、要するに筆者もどうしたらいいかわからなかったのかな…とは思いました。いや、本当にどうするんでしょうね。

ところでこの手の政府の主要な要職を占めた方が書く回顧録を読むのが結構好きです。やはり新聞の報道やニュースの報道ではどうしても語られない裏話というのは多いからです。我々市民はともすればそうした報道をもってその人物による決定を簡単に判断、断罪、批判してしまいがちです。しかしその時々の意思決定はそう簡単なものではなく、そのときに彼らが何を本当は考えていたのかを知れるのは常に実りあるものです。

最近だと安倍晋三回顧録なるものも出ていて、とくにファンというわけではないのですが時事ネタは好きなので少し読んでみました。各国首相に対する印象などを直に読めるのは非常に興味深いものです。

まとめ

来月もまた忙しそうでほとんどプライベートの時間がなさそうですが、時間を見つけて本を読みたいなと思っています。

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