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法律事務所はラーメン屋さんだった。

「行列のできる…」といえば、これはもう世界にたった二つしかありません。ラーメン屋さんと法律事務所です。これでもう掲題には説明がついていますが、法律事務所を5年程度経営して感じたことをもとに、もう少し深掘りします。

(1)ラーメン屋さんと法律事務所の大きな共通点といえば、なんといっても職人自身が経営者をやっているという点にあるといえそうです。両者の経営の舵取りを握るのは職人自身です。日々の職人仕事をしながら、自分の船の舵取りをしています。
法人化して多店舗経営するお店があったり、一見さんお断りのお店があったりと、マーケットにおける振る舞いにも共通点が見え隠れします。回転数を重視するモデルや、主たるプロダクト以外のアップセルを狙うモデルがあるなど、そのビジネスモデルの多くも共通しています(美味しい日本酒を提供しているラーメン屋さんとか最高です。神保町( ͡° ͜ʖ ͡°))。

(2)次に、類型的なプロダクトを扱うため、ぱっと見の印象で横並びになってしまう点も同様でしょう。外からの見分けはなかなかつきません。そのため、プロダクトのクオリティを高める職人仕事のみならず、提供の前段階のプロダクトの見せ方、顧客とのコミュニケーション、UX等による差別化の工夫が大切になってくる点も共通しています(ぱっと見に変化をつける突飛なものを安易に提供しても大衆には受け入れられがたく、あくまでも守破離の職人領域であることは大前提です。増し増しもりもりのラーメンでさえ●●系というフィールドが用意されています。)。舵取りをする職人としては、PR、営業、クリエイティブなどの各職域について、専門家の手を借りながら、自分で学び経験しながら、船をうまく前へと運ぶ必要があります。
経営手法の点で言えば、顧客との関係を「点」から「線」に変えるサブスクリプション(顧問契約)の導入は、もしかしたら法律事務所の方が先行していたかもしれません。しかし最近では、ラーメン屋さんも月額9,288円でプロダクトをサブスク提供している場合もあるようです。どうあがいても、どうしようもなくラーメン屋さんと法律事務所は同一化するようです。

ただし、おそらくあらゆる差別化の正体は、きっと小手先の工夫や経営手法などではなく、プロダクトのクオリティと、そのクオリティを育んだ矜持がもたらすプロダクトのストーリーなのだと思われます(ストーリーとは、美味しいラーメンを食べた時に脳裏に浮かぶ途方もないアレです)。
職人としては、日々のプロダクトの改善にどうしても目がいってしまいますが、せっかく自慢のプロダクトができても、例えば人に知られなければこれを提供できません。練りに練ったプロダクトを提供しているからこそ「経営者じゃないので」とは言っていられないといえそうです。矜持が育んだストーリーを語る必要がありそうです。ストーリーを言葉で語り、アウトプットで証明する。その改善の先に図らずともたどり着く場所が「行列のできる」なのかもしれません。

(3)最後に、伝統的な職域であるため、急激に変化する社会の中で「当たり前を見直す」時期にきている点も似ているといえそうです。テクノロジーの発展や価値観の変容によって、あらゆる職域が再定義の必要を迫られています。
弁護士といえども、適法/違法に目を光らせることに終始するのではなく、自らを「言葉の専門家」と再定義し、PRやマーケティングの言葉を謙虚に学んでいかなければならないことは、昨今の企業炎上案件で再確認されたところかもしれません(ラーメン屋さんでいえば、毎朝無性にラーメンが食べたくなる私からすると「朝ごはんとしてのラーメン」が待たれるところです)。
前回のnoteで「自分がおもしろい現場にいられる理由が「法律家」という専門性であることを十分にわきまえつつも(攻撃参加を褒められた内田篤人選手が頑なに「自分はDFなので守備が大事です」と言い続けてきたように)、より広い世界へ足を伸ばそうと思っています。」と記しましたが、内田篤人選手は、あくまでもDFとしての矜持を前提としながらも、みなさんご存知のとおりめちゃくちゃ効果的に何度も何度も攻撃参加しまくっています。矜持を、動かないための言い訳にしてはならないことに気付かされます。

ということで、攻撃参加の機会を伺うラーメン屋店主さんたちと互いの矜持を見せつけ合うmeet upしたいなぁとなんとなく思う夜でした。


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