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株式投資初心者に伝えたい、高配当株投資における投資先の具体的な選び方

思えば株式投資を始めてから3年近くになる。
最近は自分なりに投資のスタンダードというか、「方法論」のようなものが確立してきたので少し記事にまとめてみようと思い筆を執った。
「ちょうど新NISAも始まったことだし、投資初心者の方が見に来てくれるかも」なんていう打算は全然全くこれっぽっちもない。本当だ。

投資初心者といえば先日、株式投資に興味を持ってくれた知人から「投資先をどのように見て決めているのか」について聞かれた。
そこで今回は私なりの投資先の選び方を投資初心者にも分かりやすいよう、できるだけ具体的に語っていこうと思う。

新しい銘柄を知る手段は主に2つ

この記事のタイトルを見てもらえれば分かる通り、私は高配当株=配当利回りの高い銘柄を中心に投資をしている。
知らない人もいるかもしれないので言っておくと、株の中には年に何度か(たいていは1~2回)その株を持っている人に利益の還元として現金を支払うものが存在する。
この時支払われる現金が配当金と呼ばれるもので、株価に対して配当金がどのくらいの割合かを示すのが配当利回りだ。
例えば1株当たり年間50円の配当を出している会社の株価が1000円だった場合、その配当利回りは5%となる。

私が新しく投資先を探す場合、まず最初に配当利回りの高い銘柄をピックアップし、そこから気になった銘柄について深堀して調べていくことで最終的に投資対象にできるかどうかを判断することが多い。

その最初のピックアップの手段は大きく以下の2つに分けられる。
1つは上場株式の中からスクリーニングをして絞り込んでいく方法。
もう1つはYouTubeやSNSで高配当株を紹介しているインフルエンサーの動画や投稿を見ることだ。

スクリーニングは銘柄選定の基本

前者のスクリーニングというのは、要するに条件検索による絞り込みのことだ。私の場合は証券会社の株アプリ等に備わっている検索機能を使って、配当利回りを基準に検索をかける。
私は今のところ税引前配当利回り4%以上を目安に投資しているので、大体そのあたりを基準に検索することが多い。
けれどもこの辺の基準は人によって変わってくると思うので、自分の投資戦略に合った条件で検索してほしい。

こうしたスクリーニングの機能は配当利回り以外にも業種や時価総額、PERといった数値指標など多種多様な条件で検索できるので、高配当株以外に投資をする際にも有用だ。株式投資をするなら欠かせない機能と言っていい。
高配当株投資においても、配当利回りと他の指標を組み合わせて検索するのもありだと思う。

だが時には妥協が必要だったりもする。要は引っ越しの際の物件探しと似たようなものだ。
高望みをし過ぎると、条件に合った銘柄が全然出てこないということもある。
そのため最初は「これだけは譲れない」という項目に絞ってスクリーニングし、絞り込みが甘いときだけ条件を足したり厳しくしていくのがいいだろう。

それに市場の状況によっても検索条件を変える必要がある。
というのも1、2年前なら配当利回り5%以上で検索をかけても、投資に値するいい銘柄がいくつも見つかったのだ。
だが、今の高配当株は当時に比べて軒並み値上がっており、利回り5%を超える銘柄そのものが激減してしまっている。ましてやその中から投資できる銘柄を見つけるというのは、個人的には難しいと言わざるを得ない。

だから結果として利回り4%以上、場合によっては3%以上とかで検索しないと、なかなかいい銘柄に出会えなくなってしまっているのが現状だ。
株価が上がるのはいいことだけれども、この点については残念というのが正直な気持ちだ。

こうしてある程度銘柄を絞り込んだら、次はその絞り込んだ銘柄をざっと一通り眺めていく。
私は普段SBI証券の株アプリを使用しているのだが、アプリ内の銘柄ごとのページに四季報の一言コメント(?)が載っている。
そこで業種や特色を見たり、直近数年の業績推移を見たりしてさらに自分の中でスクリーニングをかけていくといった感じだ。
この辺りは配当利回りのように明確な基準を設けているわけではないので感覚になってしまう部分も多いが、要はこの後のステップのための足切りのようなものだ。
投資できるものを選ぶというよりは、投資対象にできなさそうな銘柄を切り捨てる作業と言った方がいいだろう。

余談だが、私はこの作業を通勤時間とかいうこの世で最も無駄な時間に行っている。
おかげであのストレスしか生まない無意味な時間を多少は有意義なものにできている気がする。
スマホ一つあればできるので電車通勤の方にはおすすめだ。

インフルエンサーも有効活用すべし

そしてもう1つ、インフルエンサー達の動画や投稿から探すというのも、新しい投資先を探すとっかかりとしては有用だ。
東証に上場している会社は2024年3月時点で4000社近くあるので、自分で探すだけでは見落としてしまう銘柄があるというのは想像に難くないだろう。
そんな時、インフルエンサーから得られる情報が役に立つ。
他人からの情報というのは自分にはない視点からもたらされるため、自分で探しても見つからなかったような銘柄を見つけられる可能性があるのだ。

ただ一つ気を付けるべきは、インフルエンサーからの情報はすべてを鵜呑みにすべきでないという点だ。
というのも、彼らは私たちの投資成果を保証してくれるわけではない。
誤った情報を発信したり、ポジショントークと言って自分の投資に有利な情報だけを話すインフルエンサーも数多くいるため、あくまで投資先選定の初期段階として、銘柄の把握程度に留めておくくらいがちょうどいいと思っている。
実際に投資するかどうかはやはり自分自身の考えで判断すべきだと思う。

決算資料で業績や特徴を把握

こうして気になる銘柄をピックアップしたら次の段階だ。
ある程度良さそうな銘柄を見つけたら、まずは直近の決算短信と決算説明資料を読むことにしている。
決算短信とは上場企業が四半期ごとに公開している会社の通信簿のようなもので、前年同期比の売上や利益の増減だったり、直近の事業環境・セクターごとの業績といった様々な情報が記載されている。
決算説明資料は全ての会社が公表しているわけではないが、大抵は決算短信の内容をより分かりやすく記載しているので、公開されている場合はこちらにも目を通すと良いと思う。

高配当株投資だけでなくどんな投資法であったとしても、その会社の売上や利益の増減、どういった事業をしていて今どんな環境にあるのかは必ず把握しておくべきことだと思う。
スクリーニングの時に軽く確認しているはずだが、ここではそれをより詳しく見ていくわけだ。
売上や利益が前年よりも増えているからいい・減っているからダメという話ではなく、「どんな理由で増減しているのか」や「会社自身が今期の業績・今後の展望をどう捉えているのか」が肝要だと思っている。

例えば、政策保有株式の売却を理由に今期の利益が大幅にアップしていたとしても、それは今年だけの一過性の増益要因に過ぎない。
長期目線での投資においては、一過性の好業績よりもいかに継続して利益を増やしていけるかの方が大事なので、上記のような理由の好業績・増配などは買う理由にはなりづらい。

定性的な情報の分析も大切

また決算資料から得られる情報については、利益の増減といった定量的なものだけではなく、定性的な情報も合わせて考えるべきだろう。
先ほども述べたが、「どういった事業をしているのか・その事業は今どういった環境にあって今後どうなっていくと見込まれるのか」といった部分がこれにあたる。

例えば、日本の少子高齢化が今後ますます進んでいくというのはもう誰の目にも明らかだと思う。
そんな中で子供をターゲットにした受験対策塾のようなビジネスは、今後市場が縮小していく可能性が高い。となると、そこで利益を上げていくのは難しくなっていくだろうといった具合に、今後の展望を予測することができる。

こうした事業環境の未来予想も長期投資においては非常に重要だ。
いくら今まで増収増益を続けてきた会社だろうが、今後もそうなるとは限らない。過去の業績と今後の業績は切り離して考えるべきで、今後の伸びしろがあると思える会社に投資すべきなのは言うまでもない。

ただ、未来予想なんてものは当たらないことも多い。
先ほどの受験対策塾の例で言えば、子供の数は間違いなく減っていくだろうが、親が子一人にかける教育費は年々増加してきているというデータもある。
子供の総数が減っても、子供を塾に通わせる親が増えて結果的に市場が拡大するという可能性だってあるのだ。
こうした情報1つ知っているかいないかで、予想できる未来も大きく変わってしまう。

私が高配当株投資を行っているのは、こうした未来の不確実性の高さや、自分が得られる情報には限界があるというところも大きい。
配当金を得られるというのは、言うなれば毎年一定の利益確定がなされるということでもある。
得られる確証のない将来の大きなリターンに期待するよりも、目の前の小さなリターンを着実に積み重ねていく方が性に合っているわけだ。

過去のデータも深掘りして調査

こうしてある程度会社の概況を掴んだら、今度は過去のデータを詳しく見ていく。
今はとても便利な世の中で、ネット上で少し検索すれば上場企業の過去のデータを集積・掲載してくれているサイトが簡単に出てくる。
中でも私がよく使っているのはバフェット・コード(https://www.buffett-code.com/というサイトだ。
株探なんかが最もメジャーどころだろうが、せっかくなので私がよく見るサイトを紹介させてもらった。

バフェット・コードが優れている点の1つは、視覚的に過去の数字の推移を把握しやすいという点だ。
バフェット・コードの企業概要のページには売上高、利益、財務健全性や配当といった投資判断に役立つデータが、過去10年分のグラフとして表示されている。
数字だけではイメージが掴みづらいデータの推移をパッと見て把握できるため、この点は実際使ってみるととてもありがたい。

また、無料でも十分に使えるというのもいいところだ。
バフェット・コードのようなサイトはネット上にいくつも存在するが、有料プランに登録しなければ十全にその機能を使わせてくれないものも多い。(無料プランだと過去3年分のデータしか見られないとか)
バフェット・コードにも有料プランはあるものの、無料でも基本的な情報は閲覧可能であるためそれで事足りることも多い。

配当金の推移から累進配当を確認

バフェット・コードの宣伝(?)はこれくらいにして本題に話を戻そう。
私はこのサイトを売上高や営業利益などの数字が過去どのように推移してきたのかを確認するために使っている。

中でも私が最も重視しているのは、やはり配当金の推移だ。
私は高配当株の中でも減配リスクの少ない、累進配当政策をとっている会社を中心に投資している。
累進配当というのは、次期の配当金を今期の配当金から減らすことなく、維持もしくは増配を続けることを言う。
配当金は基本的に会社の利益剰余金から捻出されるので、業績が悪化して当期利益が減ると配当金も減らされることがある。
だが累進配当の会社は一時的に業績が悪化したとしても配当金を維持しようとする意識が高く、安定的な配当収入が期待できる。
もちろん業績の悪化が何年も続けばいつかは減配せざるを得なくなるが、通常の銘柄よりも減配リスクは格段に低いというわけだ。

累進配当の方針を明言している企業であれば決算書の株主還元方針の欄にその旨が記載されているはずだが、実際に累進配当を謳っている会社はそれほど多くない。
しかし、株主還元方針として明記していなくても、事実上長期にわたって累進配当を続けている会社はそれなりに多く存在している。
過去の配当金の推移を見ることで、事実上累進配当を続けている「隠れ累進配当」の銘柄を見つけ出すことができるのだ。

過去のデータからは累進配当と言い切れない場合もある

ここで一つ注意しなければならないのが、今までが事実上の累進配当だったからといって会社側は累進配当に拘っていない場合もあるという点だ。
どういうことか。
例えば過去の業績が右肩上がりで、配当金もそれに伴って右肩上がりだったケースだ。
この場合、たまたま利益が増えていたから配当も増えていただけで、今後利益が下がった場合は躊躇なく減配する会社という可能性もある。
業績という面では右肩上がりを続けているのは素晴らしいことだが、今後の減配リスクという点については過去のデータからは分からないのだ。

その点で言えば、過去に減益になってしまった年があるにも関わらず累進配当を続けている会社は減配リスクがより低いと言えるだろう。
特にリーマンショックのような、ほとんどの会社が不況に見舞われたような時でも配当を維持した会社は私の中でかなりの高評価だ。
単に増益を続ける会社よりも、基本的には増益基調なものの過去減益となった時期があり、それでも累進配当を継続している会社のほうが私としては投資しやすいわけだ。

また、減配になると配当を目当てにしていた投資家などがその株を売ろうとするため、株価そのものが大きく下落する場合が多い。高配当銘柄であればなおさらだ。
よく「配当利回りが高い銘柄は危ない」と言う人がいるが、それは投資初心者が減配リスクを考えずに利回りだけ見て買おうとするからだろう。
そういう意味でも減配リスクというのは、株式投資において意識しておいて損のないポイントだと思っている。

暴落にも多少の耐性があるかも?

それに累進配当銘柄にはもう一つ優れたところがある。
それは配当金が株価の下支え要因になるという点だ。
株式投資を長年続けていれば必ずリーマンショックのような大恐慌に見舞われる。
そうなると株価が暴落して保有資産が大きく減ってしまうことになる。
だが株価が下がるということは配当利回りが上がるということでもあるため、配当金が減らされなければ利回りの上昇によって買いが入り、それが株価の下落を抑制することにつながる。株価下落は避けられないにしても、他の銘柄よりも暴落による被害を軽減できる可能性があるのだ。

累進配当もただの方針であり絶対ではないため過信は禁物だが、累進配当銘柄でポートフォリオを固めておくのは多少の暴落対策になると考えている。
売買タイミングに自信があるのなら暴落前に売って暴落後に買い直せばいいが、それならば端から高配当株投資なんてやらないだろう。

それに減配さえされなければ、暴落はむしろ普段買えないような高利回りでいい銘柄を買うチャンスでもある。
株価が上がっても下がってもメリットを感じられるというのも高配当株投資の魅力と言えるのではないだろうか。
個人的な話になってしまうが、最近は急激に日本株が上昇してしまってなかなかいい銘柄を買えずにいるので、実のところ次の暴落局面が来るのを期待しているところもあったりする。

EPSにも注目

さて、これまで何度も見てきた通り売上高や利益の過去の推移も確認すべきところだ。
これまでの業績がよかったからといって今後の業績がいいとは限らないという話はしたと思うが、逆に業績が悪化したり伸び悩んできていれば今後の業績にも期待しづらいというのも当たり前の話だ。

また、会社全体の利益も大事だが、EPSにも注目することをおすすめしたい。
EPSとは"Earnings Per Share"の頭文字をとったもので、一株当たりの純利益のこと。当期純利益が100万円の会社の発行済株式が1万株だった場合、EPSは100円となる。
会社全体の利益を一株当たりの数値に置き換えて見ることで、株価や他の指標との比較、計算がやりやすくなる。

具体的な例を出してみよう。
また配当の話になってしまって恐縮だが、配当性向という、当期利益のうちの配当金額の割合を示す指標がある。
例えば当期利益が100万円の会社が50万円を配当として出す場合の配当性向は50%となる。
「配当性向30%以上を基準に配当を出す」といった感じで、配当金額を決める基準に配当性向を用いる会社は多く、当期利益が分かればこうした会社が出す配当金の総額がいくらになるか計算できる。

だが実際のところ、配当金の総額を知ってもさしたる意味は無い。
どちらかと言えば一株当たりの配当金額(DPS)を知りたいと思う場面が多いはずだ。
というのも、配当利回りや実際に自分が貰う配当金額の計算にはDPSを用いる。会社の配当金総額を計算するよりも、配当利回りや自分が貰う配当金の額を計算することの方が大事だというのが一般的だと思う。

そこでEPSの出番だ。EPSは当期利益を一株当たりの数値にしたものなので、EPSに配当性向を掛け算することで一株当たりの配当金額であるDPSを算出できる。
具体的には、EPSが100円で配当性向30%の銘柄のDPSは30円となる。
これにより、株価が1000円であれば配当利回りは3%、300株保有している場合の年間配当金額は9000円といった風に実用性の高い数字を計算できるのだ。

他にも自己資本比率やROEなどなど見るべき指標はいくらでもあるのだが、初心者向けに書いているというのもあるし、全部紹介していると余りにも長くなりすぎるため今回はこのあたりに留めておこうと思う。
もしまた機会があれば紹介させてもらいたい。

投資先を選ぶ上で一番大切なこと

このように定量的・定性的問わず会社の様々な情報を集め、分析し、自分なりの仮説を立てて投資できるかどうかを判断している。
これはあくまで高配当株投資をしている私なりのやり方で、世の中に正解と言い切れるものは無いと思う。
投資手法が異なれば見るべき指標やその優先度も変わってくるし、同じ高配当株投資をしていても私とは異なる基準・視点から投資判断を行う人もいるかもしれない。

大切なのは自分なりの根拠を持って投資することだ。
そのためにも、何度も繰り返して情報を確認することが大事だと思う。
過去のデータを見たらまた最近の決算書を読んでみて、今後の展望を予想し直すのもいい。
過去に減益になった年があったら、その年の決算書を読んでどんな要因で減益になったのかを探るのもありだ。
そうやって繰り返しているうちに自分なりの投資根拠が固まっていくはずだ。

そこまでやって初めて、株を買うという行為を実行に移すべきだと思う。
そうでなければ株式投資はただのギャンブルになりかねない。
投資初心者はよくちょっとした株価の下落に狼狽えて安値で株を売ってしまったりするが、自分なりの根拠があれば多少の株価の上下に狼狽えず、自信をもって売買ができると思う。
その根拠が崩れたら株を売ればいいし、そうでないのに株価が下がればそれは買い増すチャンスとなる。

もちろん、自分の根拠が間違っている可能性も常に考えておくべきではある。
だがいずれにせよ、ただなんとなく株を買うのではなく、何故その銘柄に投資するのかを考えてみて欲しい。
そうすれば次はどんな銘柄を買うべきか、だんだんと自分の中ではっきりしてくると思う。
この記事がそのための最初の一助となったら幸いだ。

ということで、今回はこのあたりで筆を置かせてもらおうと思う。
ここまで読んでいただいた方には感謝を。
それではまた。

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