ご主人、女装はだめですか?

 僕は拾われた。道端で餓死寸前だったところを放っておけなかった、という理由で。今はその人、ご主人と2人でアパート住まいをしている。

 ご主人は女装が趣味で僕はいつもその撮影のお手伝いさんを務めている。最初は不思議な感じがしたけれど結構似合ってる。男が女の恰好をするなんて考えたこともなかったけれど面白そう。

 ご主人が家を留守にしたある日、僕は勝手にコレクションを覗いた。沢山仕舞ってあるなかでこの淡い青色のワンピースが目に留まった。どこか懐かしい昔見た綺麗な青空を思い出す。一度だけならバレない。きっと。

 少し大きめだったけど着てみると気分はまるで妖精さん。この麦藁帽子も被っちゃお。そして普段は結んでいる髪もほどいちゃって、あっ。

 見られちゃった。ご主人財布を忘れたみたい。凄いドキドキする。怒られちゃうかな。

 ポンと頭に大きな手が。帽子を取って僕の頭を撫でてくれた。「可愛いな」って、微笑んだ顔で言ってくれた。とても、とても嬉しい。

 ありのままの僕。男も女も、どうだっていい。どうして幸せを後に考えちゃう?

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