見出し画像

「カチコミ訴え/女の決闘」出演者陣

今回の出演者は4人ともこの春高校を卒業した十代の女子です。演出からの印象を書いて出しします。

アンジー
「爛惰の歌留多」「詩とは何か」「駈込み訴え(断崖版)」に続いて4度目の出演。太宰愛と利発さ饒舌さとサブカルと客観の瞬間をどこまでも繋いでいけるのが特技。そうやって存在しないはずの虚像を舞台に存在させてしまう戦略で今のところ生きているようですが、本当は生来の生真面目さがその原動力になっているようでもあり、ということはどこかでごく常識的なリベラリズムに転換しなければいけないタイミングを迎えそうな予感を持っているようでもあり、だからこそ見えてくる現在の「瞬間の身体」に戸惑いと拒否感とそれでもなおの愛着を持っているようでもあり。現実は本当に雑多なサブカルの連続なのかといえばそんなはずはないことを推理としては知っているけれども、実体験として飛び込みかねているようでもあり。美文は果たしてどれだけの戦法になりうるのかについて、理論的にはそんなに役に立たないことを知ってるけれどもなかなかやめられないようでもあり。そんな感じのまま、こないだやった醜さの果てに純化された美しさをにじませるメンヘラを今度はやめてみてどんなユダが出来上がるのか、本人にしても出たとこ勝負なのだろうなあと思ったり。

栗栖のあ
断崖に続いて2度目の「駈込み訴え」。高校時代に3度ほど見ており最後に見た「全校ワックス」が素晴らしかったので強力にスカウト。クリスチャンならではのユダとの距離感が身上ですが、弱き者としての自覚は本物で、他人から見れば沢山ある優れた面を活用することに激しくためらいながらも「ある能力は使う」ことは避けないタイプ。舞台上では避けないまっすぐさを、セルフドキュメント調の演出でどう出せるかが課題ですが前回の評判は上々でした。体や声のリーチは素晴らしいしアドリブのポテンシャルも特異なレベル。聖書モノでない作品で今後どう伸びていくかは未知数ながら、今しばらくつきあってみたい役者。

おいかわ
初参加。3月の多摩地区卒業生横断チームによる「露出狂」(中屋敷)を仕掛けた制作力に驚くばかりです。俳優としては表層の特権性をどう越えて内面を舞台に乗せるかがたぶん課題。おそらく実務者として以上には自分の俳優性を評価してはいないように見えるので、なんとか引き出してみたいと思っています。オイレンブルクのNTR夫人と告解を受けた牧師の二役。

さいとうれいな
初参加。同じく「露出狂」で圧倒的な刹那性で印象を掠っていった、生来の俳優性を備えた女優。おそらく醒めた気持ちと熱狂とが両立している感じが今のところうまく身体に乗っている、幸福な時期だと見て取れる。それともうまく自分の表現の手綱を取っているのか?と見えなくもないがそんなはずはなく、おそらく出たとこ勝負でも幸いに成功を収めてきた現状なのだろうと思う。生き物として美しいことは果たして長らく俳優であるためには有利なのか不利なのか、ということをすごく考えてしまうけれども、今回を含めてたぶん人外を幾度か演じることが近道なのではないかと想像しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?