クレジットの見方が分かるとイベントの見え方がちょっと変わる

 たとえばコラボの謎解きイベントの場合、「なんで(任意のコラボコンテンツ)をSCRAPに依頼しなかったのか」「(任意のコラボコンテンツ)はSCRAPに作ってほしかった」とかよく聞きますよね。そのたびに我々2軍連合はいつも心を痛めているのですがその話は呪い紙に書いて燃やして天に召したのでその呪いはいつか誰かのもとに届き未来永劫お前を苦しめるだろうということなので割愛いたしまして、もともとそういう座組じゃないんだよっていうこともあるので、ちょっと書こうかなと思っている次第です。

 外部の人間であるかぎり詳しい取引内容を知ることはできないのですが、そんなときに見ていただきたいのがイベントのクレジットです。ある程度の座組が発生するイベントの場合、だいたいイベントの告知ページの最下部に掲載されているクレジットを見ると多少なりとも雰囲気が分かります。なのでクレジットを見て「あぁこれは誰がやりたくて誰がお金を出してやってるんだなあ」という知識を備えていただければと思いますが、特に役には立ちません。

 あと業界とか会社によって使い分けがふわふわしているのでここに書いてあることは全部ウソの可能性もあるかもしれませんのであしからず。

■主催
 「このイベントをやりたい人たち」です。基本的にはお金を払っているのは「主催」で、すべての売上はこの主催(と共催)が持っていきます。そのかわり製作に関する費用もすべて払います。赤字リスクを負っているので、そのぶん売れたときに大儲けするのはここです。ただ名義主催というシステムもあるので状況に応じて判断するのがよいでしょう。また、主催が「製作委員会」名義だとお金を出す人が何社かいて、売上はいろんな費用を控除したりなんやかんやした後に出資比率に応じて配分されます。

<名義主催とは>
規程の費用を払えば有名なテレビ局や新聞社を主催としてクレジットさせてもらえるシステム。知名度をお借りしたり、その媒体のCMやイベント情報、フリーペーパーなどにタダで載せてもらえる。

 ちなみにイベント映像のスタッフロールでクレジットが表示される場合「制作委員会」の各社の社名も掲載されることが多いので、気を抜かずに見てみましょう。掲載されていない場合は「プロデューサー」の欄を見て、その人たちの所属会社を調べると分かります。

 あ、なので、(任意のコラボコンテンツ)の製作委員会が主催となっていない限り、普通は(任意のコラボコンテンツ)からお金が出ることは一切ありません。

■共催
 お金を出す会社が2社ぐらいで製作委員会名義にする意味もとくにないな、というときに共催が出て来る気がしますが、細かい使い分けはよくわかりません。製作委員会名義にするとちゃんと資金管理しなきゃいけないので必要に応じて銀行口座を別で作ったりとか何かと面倒らしいといううわさだけを聞いています。

■制作/運営
 主催・共催の会社からお金をもらってイベントを納品しています。リスクはありませんが売れたときのリターンも基本ありません。※成功報酬などが設定される場合もあります。ただ、作ったものに対する著作権は主催が持っているので、制作したところが勝手に再演とかはできません。

■協力
協力会社です。基本的には主催から制作費を払っていてありがとうの気持ちでクレジットされていることもありますし、
「クレジットしてくれたら安くしてあげますよ」
「クレジットしてあげるから安く(タダに)して」
など、様々な駆け引きが込められていることも。
費用は主催から払っていることもありますし、企画制作会社から払っていることもあります。

■監修
監修をしてくれている人たちです。
これが版権元の会社だったら、主催が版権料を払っています。
シナリオ監修とか謎監修とかそういうものもあります。

■後援
いわゆるスポンサードに近い立ち位置です。
主催にお金を払っています。売上に対するリターンはありません。
例えばキットに広告が入っていたり、参加キットの中にサンプル商品が入ってたりすると、その企業が主催にお金を払っています。

ということで、ざっと概要を説明したところで、実際のイベントのクレジットを見て実践していきたいと思います。

【実践編】

こちらは主催が企画制作/運営のところにお金を払っています。


こちらも主催が制作にお金を払っています。


こちらは主催がメインでお金を払っているのを、共催がサポートしているという雰囲気がしますね。


 こちらは製作委員会を組んでいるパターンです。委員会で製作費を出して、制作会社に発注しています。制作費をもらうことでリスクは落としつつ、出資者としてリターンもあるという座組です。


  こちらはちょっとややこしいのですが、「TOKYO MYSTERY CIRCUS」は「SCRAP/イープラス/ニッポン放送/Cygames」の合弁会社です。なので「TOKYO MYSTERY CIRCUS/TOKYO MX」が製作費を出して、SCRAPに発注している、という座組です。


 そのため、TOKYO MYSTERY CIRCUSで行われている公演は、形式上はTOKYO MYSTERY CIRCUSが自前でやるか、SCRAPなりなんなりのところに許諾を行うことで地方公演を行うことができます。


こちらの2つは全国ツアー公演です。上が東京、下が滋賀のクレジットです。「全国の製作委員会」と「各会場の製作委員会(に近いもの)」が組成されていることがわかるかと思います。


最後に

 とくに役に立たない知識いかがでしたでしょうか。

 最近は「謎解きやりたいんだけど全然お金なくて…」という話がちらほらあり、その話を追っていったらだいたい同じところがイベントを作っていたとか、ある謎解きをやっているところに「うちなら3分の1で作りますよ」みたいな営業があったらしいとか、世知辛い話がたくさん聞こえてまいります。

 Q なぜSCRAPに依頼しないの?
 A お金がないからです

今年もなんとか暖を取って冬を乗り越えていきたい次第です。
それでは引き続き、よろしくお願い致します。

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