エピローグ #1

会社に出社、
会社は、主にプラント用の圧力容器を製造しています。
径が2m以上の圧力容器は、ここでは、みんな潜水艦とよんでいます。
外観がたしかに、潜水艦にみえなくもないのですが。
ここで、私は、新米班長として、日々、新人教育、業務改善、作業の進捗管理を行っています。
本日は、午後から、2年目の後輩に、特殊技能である、上向き溶接を指導する予定です。
午前中は、作業要領書を作成し、そこに本日の指導内容のポイントを記載していく予定です。
朝一でパソコンを立ち上げると、向かい側に座っている課長に電話です。
「えー、そうですか、こまったなー、わかりました」というのが聞こえました。
ちょっと悪い予感がします。課長の顔も厳しい表情です。
「伊藤君、O社向けの潜水艦2台なー、
設変で左右の冷却管なー、中央側を下だしに変更だってよ。
まったく困ったもんだ。ところで例の潜水艦な-、どこまで仕掛かってるかなー」
悪い予感的中です。
今日は定時に帰って、彼女とデータの約束をしてあるのに。
またごめんなさいの電話かー。
「課長、例の潜水艦ですけど、材料入庫済みの部品50点以上は仕掛かり中ですよ。
どうしましょうか?」
「どうしましょうも、なにも、先ずは、部品毎の進捗を確認してだなー。
影響する部品については、作業を保留にしてもらって、
設計さんから図面でるまで、ほかの作業やってもらうように指示してきてよ。
たのんだよ。まー今日は残業だなー、わるいなー」と、毎度の事ながら、悪いとは思ってない様だけど、
まー、自分にすべて押しつけずに、一緒にやってくれるし、
悪い上司ではないのだが、職場を間違えたようです。
同じ会社でも、バルブなどの企画品を作っている部門にいる同期の親友は、
今日残業な、などということはありえないといっていたし、
なんで、俺の部門だけ、こうも突発的に残業があるのか。
と悩んでも仕方がないので、
「現場行ってきます!」と課長に次げ、
「あ!、それから、本日午後からの特殊技能の指導はキャンセルですよね。
課長から彼に伝えてもらえますか?」とお願いし、現場に向かいます。
さて、現場の入り口から、通路沿いにある、入庫済み部品から確認していきます。
まだ、ここにあるものは影響が無いので、ここにたくさん残っていれば、
と祈るような気持ちで、O社向けの伝表が付いている部品を探し、
持参してきた、発注依頼品一覧表と照合していきます。
よかったー、150点近い部品の内、まだここに半数以上ありました。
でも、半数は、すでに現場を流れていますので、これからが大変です。
各製造課の班長を捜し、1点、1点の作業の進捗を確認します。
まだ、設計から設変対応した図面はでてきていませんが、
影響しそうな部品の作業は、すべて中断してもらい、指示待ちのお願いをします。
1日工場をまわって、最後に試験課に向かいます。
時計をみるともう16時です。向こうに試験課の課長がこちらを睨んでいます。
「伊藤、おまえここにくるのが遅いんだよ。まったく、設変の時には、後工程からまわれって、この前教えただろう。
昼飯時に設変があるようだとは聞いていたんで、待ってたんだよ-。
さて、設変の資料を早く見せろ。」といって、私の資料を眺め、
「あー、ここかー、すでにユニットまでできている部分は、昨日から検査もしてるぞー」
「取りあえず、今日はもう、やめさせておくからな。これを止めるんだったら、明日からの作業予定、朝一に俺の所にもってこいよ!」
と、現場の課長には逆らえませんが、これが、各現場の課長、みんなから、明日の朝一に作業予定を持ってこい。といわれても。
なんか、俺ばかり怒られるし。
とまた嘆いても、仕方がない。もう定時を過ぎているが、これから事務所で、全体の影響を確認しながら、作業予定を再度作成しなければなりません。
残業どころか、徹夜になりそうです。
こんな時に、画面を見れば進捗が一目で判断でき、影響する作業を中断や保留の状態に簡単に設定すれば、
それが、自動的に作業現場に作業予定として提示できるような仕組みがあればなー。
といつも思うのですが、企画品を製造している現場には、このような仕組みとシステムがあるのですが、
なぜか、私の現場にはありません。
たしかに、作業手順もころころ変わるし、工数も図面みながら、各現場の班長さんに工数見積もりをお願いしないとわからないし、
いわゆる、生産管理を行う前提がこの職場には無いのかもしれません。
事務所に帰って、さっそく作業予定表を書き直しです。
しまった、彼女に電話してない。待ち合わせの時間ぎりぎりだー!


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