新しい忍者めし見つけられない
小さい頃から憧れるものや、なりたいものがひとつも無かった
保育園の時、将来の夢は?とお誕生日会でマイクを渡された時、何も答えられなかった私の肩を抱いて先生が、お母さんがパティシエだから、ケーキ屋さんかな?と答えてくれた
高校生の時、進路の紙に彫り師と書いた。友達がなった。
彼氏の借金を背負った時、初めてのバイトでガールズバーに入った。
なりたいものがないということは、なりたくないものもないということ。
最近は学費を稼ぐ為に、リフレを始めた。
狭い部屋でおじさん達とイチャイチャする、という名目でありながらも、みんな気持ち悪い顔をしながら小声で、君は裏やってるでしょう?
財布を開いてて汚い札を私に向けて、本番交渉をしてくる。
なりたいものがないということは、やりたいことがないということ。やりたいことがないということは、何をするのも抵抗がないということ。
おじさんの手が私の肌に触る時、目を瞑って、彼氏の顔を思い浮かべる、大丈夫、今私は彼氏に触れられていて、幸せ、大丈夫。これが終われば、タバコを吸おう、大丈夫。お金を貰っているし、これはおじさんじゃない、彼氏だから、大丈夫。
たまに、ぶわっと湧き出てきてしまう現実に無理やり蓋を閉じて、彼を思い浮かべて、
でもそんなことをしているうちに彼への罪悪感、親への罪悪感、色々なものが溢れてきて、
涙がでてくる
流石のおじさんも、顔をゆがめてため息を着く。
割り切れていない自分と、割り切ったらおしまいだなという感情、割り切りさえすれば何も思わないのになという理想が、脳みそいっぱい。
今思うと、私は全部なりたかった
アイドルになりたかったし、ケーキ屋さんでも良かったかもしれない、アパレル店員になったり、レーサーもカッコイイ。バンドマンになって脚光を浴びたかったし、本だって描いてみたかった。
口に出す前に、誰かに何か言われるのが怖かった。
おじさんよりもなによりも、自分自身が1番気持ち悪いのだ。
こんな事が、みんなにバレたらどうなっちゃうんだろう。どうにでもなればいいけど
きっとあいつは私を正そうとするなぁとか、あいつはこういう人が堕ちていく話に笑みを浮かべるだろうなとか、結局はどこか他人事で、これは全部夢なのかもなとも思える。
今この体は、私という人間の所有するものではなくて、私という魂だけが、このおぞましい身体と精神を乗っ取っているだけ。
この身体に飽きがきたら、直ぐに抜けて、やりたかったことをしよう。
今はそれの準備期間。
2畳半程の待機室で、目を閉じる。
今日もこれからお金を稼ぐ。
このお金で、君に美味しいものをご馳走したい。欲しいものがあるなら、早く教えて欲しい。なんでも買うよ。行きたいところがあるなら連れていかせて欲しいな。
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