ツィガーヌ

去年の秋、ラヴェルのツィガーヌという曲を初めて聴いた。某国有放送のクラッシック音楽番組をたまたま録画していたものだ。2008年にザ・シンフォニーホールで演奏されたもののアーカイブらしい。バイオリン独奏はオーギュスタン・デュメイさん、指揮・飯森泰次郎さん、関西フィルハーモニー管弦楽団。

普段CDでしか音楽を聴くことがなく、知識の幅も浅く狭い。ラヴェルと言えばいくつかの管弦楽作品を聴く程度。
ただ、浅い知識下とは言え、ラヴェルの管弦楽作品は好きで、聞く頻度は高い方ではある。その魅力は一曲ごとに違うサウンドを響かせているところだと思う。同じ人が作ったとは思えない多彩な曲調がラヴェルらしいところかもしれない。
あまりに知識が乏しいため、ザ・シンフォニーホール、飯森泰次郎さん、関西フィルハーモニー管弦楽団、オーギュスタン・デュメイさんのこともほとんど知らなかった。20年前、30年前までの知識しかない。簡単に言えば、カラヤンとかバーンスタインとかカール・ベーム辺りまで。

ツィガーヌは演奏時間にして10分程度の小品なのだが凄かった。
前半はほぼバイオリンの独走が続き、後半になって管弦楽が加わる。前半と後半の曲調が全く違うように構成されている。前半のバイオリン独奏は少し重々しく、後半に管弦楽が加わると東洋的な印象を感じる主題に代わり、変化に富んだ華やかな変奏が展開されてそれが盛り上がって終わる。そのところどころにはかなりの技巧が駆使されている。一見バイオリンのテクニックに目が行きがちになるが、バイオリンだけでなくオーケストラとのコンビネーションにおいても複雑な技巧を要求されている。デュメイさんと指揮の飯森さんと関西フィルとのコンビネーションがすごく良くて、私はクラッシック音楽を聴くものだと思っていたが、観るものでもあると、この曲を聴いていて(観ていて)感じた。
そしてこれは一流の演奏家だからだと思うが、演者が楽しそうだということ。自分たちが奏でる音を楽しんでいる。まさに音楽なのだと思った。
この10分足らずの曲を何度もリピートして聴いて(観て)しまう。
そして日本のオーケストラの演奏技術の高さを実感させられた。それはバブル期に次々と建てられた演奏会場のクォリティーの高さによるものだとも実感した。クォリティーの高い会場があり、そこにクォリティーの高い演奏技術が育つものなのだろうと思う。いい音はいいホールでこそ生まれるものだとも思う。
何も知らない私がこんなエラそうなことを書くのは恥ずかしいが・・・。


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