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帰り道に

 金色に輝く長い髪。

 友人に呼び止められて、振り返ると彼女が居た。彼女の長い髪は、夕日に照らされて金色に見える。陽の光が彼女のかたちを縁取っていた。強烈なオレンジ色の光に照らされていても彼女は、真っ直ぐ前だけを見て歩き続けていた。

 彼女は歩を緩めずに僕を追い越していった。
僕はその場で友人を待つ。いや違う、動けなくなったのだ。夕日に包まれた髪の長い彼女を見た瞬間、僕の全てが止まってしまった。
 ぼんやりとしたまま友人と言葉を交わした。その後、先を行く彼女の後を追うように歩き始めた。

 とても眩しい。それが太陽によるものなのか、彼女自身なのか、僕には判断がつかなかった。
僕は歩みを止める。
 彼女はどんどん先を行く。オレンジ色の太陽に向かって、ただひたすらに歩を進めていた。

 彼女の姿はもう見えない。
 彼女は夕日の中に溶けていった。

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シロクマ文芸部さんの企画に参加しています🌱




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