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健康経営7つのステップ:なぜ職場で健康マネジメントなのか?

■ なぜ、職場で健康マネジメントなのか?


今まで私たちは、顧客満足度を上げ、売り上げを達成するための様々なマネジメント業務を行ってきました。タイムマネジメント、予算管理のマネジメント、人材配置のマネジメントなどなど。後回しにしてきた健康マネジメントも同じレベルで企業で取り組んでいくステージに入りました。

しかし、「健康はやはり自己管理なのでは??」という疑問もまだ残ることでしょう。なぜ、健康マネジメントを職場内で取り組むのか、その理由は2つあります。

理由の1つ目は、健康データの分析から、マネジメントの課題が見えるから。健康マネジメントに取り組み始めると、企業の業種、さらには部署によって異なる健康課題の傾向や見落とされていた課題などが浮き彫りになります。

うつ病や不眠症、気分障害など、メンタル系疾患の発生率が多いと言われる企業でも、営業系なのか、管理部門系なのか。また、管理職側で発生が多い会社と、現場での発生率が高い会社など、傾向が見えてきます。特に建設関連の企業では労働災害の発生件数に敏感になっています。多くの企業では、KY活動(危険予知)など「意識」の問題にしがちです。しかし、単純に毎日カップラーメンや菓子パンを食べていて免疫がさがり風邪を引く社員が多いことが往々にしてあります。つまり、仕事のパフォーマンスを発揮する土台の健康状態が地盤沈下しているのです。こうした傾向を掴むことでリスク対策を事前に手を打つことが可能になります。

 理由の2つ目は、人間の習慣作りには、環境が多分に影響を及ぼしているからです。あなたも朝早起きをしてランキングをしようと思ったけれど、3日坊主で終わった経験はないでしょうか。私が介護の仕事をしている際に、「習慣はなかなか変えられない」という現実をまざまざと見たことがあります。それは、ある糖尿病の専門医の言葉でした。

糖尿病は、進行すると失明し手足が壊疽してしまう恐ろしい病気です。しかも合併症で腎臓を患ってしまうと、病院に週に3日、1回4時間以上の処置が必要になります。普通に考えたら、QOLが下がるため、全力で治療に取り組もうとするはずです。しかし、糖尿病の申告を受けたのにも関わらず、診断後、糖尿病の治療を継続する人は、何%だと思いますか?

なんと治療の継続や生活習慣の改善に取り組むのはたった30%とのこと。70%は元の生活習慣に戻ってしまうというのです。人はここまで環境や習慣に引っ張られる生き物なのか、とぞっとしたのを思い出します。

つまり、一人で習慣を変えることができる人はほんの一握り。だからこそ、一人ではなくチームで支え合いながら取り組んでいく必要があるのです。


■ 健康経営がもたらす5つのメリット

①社員の働く意欲の向上社員

今まで会社は「ストレスがたまる場所」「疲れる場所」「肩こり、腰痛がひどくなる場所」となっていたのが、軽減される、もしくは、会社に来ると「より健康」になれる場所であったら、いかがでしょうか。社員が会社に行く足取りも軽くなると思いませんか?

「社員の働く意欲の向上」というと、社員が爆発的にモチベーションが高い状態を想像されるかもしれません。実はそうではありません。別の言い方をするのであれば、心も体もニュートラルな状態で出社できることを目指します。

私達には、本来備わった成長意欲というものがあります。知識や経験が蓄積されていくと、自然と成長の喜び、仕事の喜びを感じることができて貢献意欲が湧いていきます。しかし、ここにブレーキを掛けてしまうのが肩こり、腰痛、疲れなどの体の不調です。体の不調を取り除くだけで、社員は自然と働く意欲を取り戻すのです。

②生産性の向上

企業の生産性なんてそんな簡単に上がるものではない、と思われませんか。確かに、100%の状態を120%にするのはなかなか難しいことでしょう。しかし、100%の状態が発揮できず、80%の状態を100%に戻すだけでも、生産性は上がると思いませんか?

ある研究結果では、朝の20分のウォーキングでさえ一日のコミュニケーション量を増やし、仕事の生産性を上げるという論文があります。 社員全員で20分のウォーキングをするのは難しいかもしれません。しかし、3分間のラジオ対応であったらはじめの一歩として取り組むことはできるでしょう。

仕事の生産性を妨げている原因の多くは、組織がタコつぼ化し、コミュニケーションが行き渡らないこと。その原因を私達は組織論やコミュニケーション論に求めやすいのですが、社員がストレッチをし軽い有酸素運動をすることで、コミュニケーション量が活発になり、目標達成意欲が高まるのであれば、取り組む価値は十分にあるでしょう。

社員が健康になり、職場に健康な空気に溢れコミュニケーションが行き渡り、アイディアが活発にやり取りされたら、生産性が向上するのは容易にイメージできるのではないでしょうか。


③顧客からの評価

 商品やサービスの内容が同じでも、この店員さんから、この店から商品を買いたい。という経験をしたことはないでしょうか。

私の家には等間隔の距離に2軒の八百屋さんがあります。取り扱っている野菜は福岡の農家から仕入れた同じような野菜です。しかし、1軒はいつも軒先で煙草を吸っていて、目の下にクマを作って、メタボで猫背の店主。もう一軒は、スリムでいつも活気あふれる店長。

私達は、八百屋に商品を買いに行くのではありません。家族の健康を買いに行っています。私が選ぶのは当然、そこで働くひとが健康な八百屋さんです。

結局のところ、私たちは、サービスや商品だけでなく、人の「気」も判断基準にしています。あなたの企業の営業マンや接客担当者がメタボで煙草を吸って疲れが顔に出ていないか、気になるところではないでしょうか。

健康経営を推進する人事担当者は、自分の仕事の定義を「社員をより健康に、より美しくすること」と位置付けると仕事の内容が変わってくるのではないでしょうか。

④採用力の強化

経済産業省が「大学生が就職先の企業に求めるもの」という興味深いデータを公表しました。皆さんは何が一番に来ると思いますか?やりがいでしょうか。それとも、給料でしょうか。

一位に来たのはなんと、「職場が健康に配慮しているかどうか」。

時代は変わりました。今の20代にとってはリアル人生100年時代なのです。つまり、人生の途中でカラダを壊す。メンタルを壊す、ということは人生の旅路の中で大きなリスクになることを本能的に分かっているのです。

つまり、健康経営が定着することで、採用力は強化されます。これは、人材不足倒産という言葉が現実味を帯びている中、大きな競争力になることでしょう。 「弊社は社員を大切にしています。有給休暇の取得を促進しています。社員旅行をしています」という企業と、「弊社は社員を大切にしています。例えば、毎朝、朝礼時に3分間のストレッチをして、肩こりや腰痛の防止に取り組んでいるんです。また。パワーナップと言って、10分間昼寝をとる制度を設けているんです。元気で長く」働いてもらえる環境づくりを年々進化させています。と言える企業、どちらで働きたくなるでしょうか。

 「たまに」、よりも、「日々の取り組み」に人は信頼を持ち、惹かれるものなのです。

⑤株主からの信頼

多くの金融機関が健康経営に取り組む企業に優遇金利制度を提供し始めているのはご存知でしょうか。 理由は何か。2つあります。

ポジティブな側面としては、健康経営に取り組んでいる企業は1年目は結果が出なくても2年目には結果が出て業績を伸ばしてくれることが研究結果から分かってきたからです。つまり株主としては、業績が伸びるように投資をしている企業に、資金を託したいのです。(出典:日経Smart Workプロジェクト一環として「スマートワーク経営研究会」平成30年6月調査報告書「働き方改革と生産性、両立の条件」より)

ネガティブな側面としては、株主は純粋に、投資先として、リスクを抱えている企業には支援をしたくないから。経営者が煙草を吸っていて血管トラブル(脳梗塞や心筋梗塞)や肺がんの確率を上げている企業には投資をしたくない。また、投資を考えて会社の中を身に行ったら、社員がゾンビのような顔をしている企業には、投資をするのはリスクが高いのです。


⑥企業の存続確率が上がる

ゴーイングコンサーンバリューというものがあります。それは、企業が質の高い商品/サービスを安定して提供し続けることができる価値のことを言います。

企業の戦略を実行するのは結局のところ人です。その社員が加齢とともに健康リスクが増え、サービスの品質を低下させることはあってはなりません。。 健康マネジメントを職場で実践することは、社員だけでなく、企業の本質的な継続価値を高めることにつながるのです。


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【プロフィール】

ビジネスマンの健康マネジメントスクール代表。予防医学の専門家。健康経営アドバイザ-。著書「グローバルで勝つ!30代の太らない疲れない7つの習慣」はアマゾン総合1位に。介護サービスに10年間携わり、人の「老い」と向き合う。その後の香港勤務時代では香港のエグゼクティブ達が日々コンディションを整え仕事の成果を上げる姿を見て、日本のサラリーマンとの違いを痛感。香港で100人を超える香港のビジネスマン達に健康習慣を取材、また予防医学を体系的に学ぶ。日本のビジネスマンの生活スタイルに最適化した健康習慣を構築。各種ビジネス誌、医療誌で注目される。企業、行政、大学の講演会・講義では分かりやすくすぐに実践できる内容と高い評価を得ている。現在は、「健康を企業文化に」の理念のもと①健康経営の導入支援 ②健康マネジメント(食事・睡眠・運動・ストレスケア)の企業研修を行っている

http://www.healthylifepj.com/

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