デジタル銀行はこれからどうなる?中国、香港、台湾‥etc 【アジアのデジタル銀行まとめ】
欧米で始まったバーチャルバンク(デジタル銀行)の波は、アジアにも押し寄せてきています。
今回は、Headline Asia InvestorのJonathan M. Hayashiがアジア各国のデジタル銀行についてお話しします。
デジタル銀行には、独自の銀行免許を取得する「チャレンジャー・バンク (Challenger Bank)」と呼ばれるものもあれば、提携先の銀行免許を利用する「ネオバンク (Neobank)」と呼ばれるものもあります。いずれにしても、デジタル銀行には共通して以下のような特徴があります。
・物理的な銀行支店を持っていないこと
・モバイルファーストであること
・より良いUI/UX、より革新的な金融サービスの提供を目指していること
ヨーロッパでは、Revolut、Monzo、N26、Starling Banksなどが百万単位のユーザーを獲得し、大型ファイナンスを実行してユニコーンになっていることで界隈を賑わせています。米国では、Chime、Varo、Current、Sofi、Simple、Daveなどが人気です。
今回は、シリーズの前編として、日本、韓国、オーストラリアを除くアジア諸国のバーチャルバンクに焦点を当て、お話しします。韓国とオーストラリアもそれぞれ特殊な環境にありますが、日本の銀行業界は世界でみても非常にユニークな発展を遂げています。これについては次回詳しくご紹介します。
中国
中国では、2014年に民間企業5社に銀行免許を発行するまで、国営以外の銀行の設立を認めていませんでした。2016年にはさらに12社、2019年には2社に銀行ライセンスを発行しました。現在、中国に19の非国有銀行があります。その中には、物理的な支店を持たないことを選択した銀行があり、それらがいわゆる「バーチャルバンク」に分類されます。
2020年には、19の非国有銀行の総資産は1兆2,500億元(1,930億米ドル)に達し、上位2位であるWeBankとMYbankが市場シェアの52%を占めています。
WeBank(微眾銀行):Tencent、Baiyeyuan、Liye Groupが出資するWeBankは、2015年1月に営業を開始しました。総資産530億米ドル、200万の個人口座、90万の企業口座を持っています。
MYbank(網商銀行):Ant Group(決済アプリAlipayを提供する会社)やWanxiangなどが出資するMYbankは、2015年6月に営業を開始しました。主に中小企業や零細企業を対象としており、総資産は480億米ドル、ビジネスアカウントは2億870万件となっています。
大中華圏(Greater China)
香港の規制当局は、2018年に従来の銀行免許とは別のバーチャルバンク・ライセンスの策定に着手し、2019年前半に3つのトランシェに分けて、計8つのライセンスを発行しました。その後、バーチャルバンクのライセンスは新規に発行されておらず、現在、香港には合計160の銀行があります。以下は、香港にある8つのバーチャルバンクです。
ZA銀行(ZhongAn Bank、眾安銀行):2020年3月に開業、香港で最初に開設されたバーチャルバンクです。アリババ、テンセント、保険大手の平安が設立した香港証券取引所上場のインシュアテック企業「眾安保険」が出資しており、個人口座、ビジネス口座、決済カード、保険を提供しています。
Airstar Bank(天星銀行):Airstarは、香港で2番目に営業を開始したバーチャルバンクです。シャオミと(シンガポールでもバーチャルバンクのライセンスを申請している)AMTDグループが支援しており、個人口座のみを提供しています。
Fusion Bank(富融銀行):Fusionは、香港で初めてFXサービスを開始したバーチャルバンクです。中国工商銀行、香港証券取引所、Tencent、Hillhouse Capitalの出資を受け、WechatPayと提携しています。現在は個人口座のみの提供となっています。
Welab Bank(匯立銀行):Welab Bank は、オンライン消費者金融会社としてスタートした Welab の子会社です。個人口座とペイメントカードを提供しています。
Ant Bank (螞蟻銀行):Ant Groupの支援を受けており、現在は個人口座のみを提供しています。
PingAn Oneconnect Bank (平安壹賬通): 中国の大手保険会社であるPingAnと、ニューヨーク証券取引所に上場している中小銀行向けSaaSプロバイダーであるOneConnectの支援を受け、PingAn Oneconnect Bankは個人口座とビジネス口座を提供しています。
Livi Bank:Liviは、香港で4番目に開設された銀行です。JD、Bank of China、Jardine Matheson Groupが共同出資しています。個人口座やキャッシュバック付きのペイメントカードを提供しています。
Mox Bank(SC Digital):スタンダードチャータード、通信大手のPCCW、オンライン旅行会社のCtripが出資しており、個人口座やキャッシュバック付きのペイメントカードを提供しています。
台湾の規制当局は2019年7月に3つのバーチャルバンクライセンスを発行し、その後新たなライセンスは発行されていません。現在、台湾には40の銀行があります。
樂天國際商業銀行(Rakuten International Commercial Bank):2020年12月にスタートした楽天銀行は、台湾でオープンした最初のバーチャルバンクです。IBF Financeと日本大手ECである楽天の支援を受け、現在は個人口座のみを提供します。
LINE Bank(連線銀行):LINE Bankは、メッセンジャーアプリ大手のLINEと富邦銀行が出資する、台湾で2番目にオープンした銀行です。個人口座のみを提供しています。
NEXT銀行(將來銀行):ライセンスを取得しているが、まだサービスを開始していません。電話会社大手の中華電信(Chunghwa Telecom)、メガバンク(Mega Bank)、スーパーマーケットチェーンのPXマート(PX Mart)が出資しています。
東南アジア
シンガポール
2020年12月、シンガポールの規制当局であるMASは、4社に初めてデジタルバンクライセンスを発行しました。そのうち2つはDigital Full Bank ライセンスで、GrabとSingtelからなるコンソーシアムと、Sea Ltdの子会社に発行されました。残りの2つは、Greenland Financial、 Linklogis Hong Kong Ltd、Beijing Co-operative Equity Investment Fund Managementからなるコンソーシアムと、 Ant Groupの子会社に発行されたDigital Wholesale Bankライセンスです。
この4社は、Razer(FWD、Insignia Ventures、Carroとのコンソーシアム)、Osim(EZ-Link、Temasek、Far Eastとのコンソーシアム)、AMTD(Funding Societies、Xiaomiとのコンソーシアム)、Bytedanceなど、他の10社の候補者を抑え、ライセンスを獲得しました。
その後、新規ライセンスは発行されていません。また、どのライセンスホルダーもまだ銀行サービスを開始していません。
マレーシア
マレーシアの規制当局は現在、初めてデジタルバンクライセンスの申請を受け付けはじめています。
すでに29件の申請があり、Grab(Singtelとのコンソーシアム)、iFAST、マレーシアのコングロマリットであるSunway(LinklogisとBangkok Bankと共同)、AirAsia、AEON Financial Serviceなどが申請しています。
フィリピン
フィリピンでは、rural bankという地方銀行免許を持つ銀行であれば、そのライセンスをデジタルバンキングのライセンスに変更することができます。2020年4月にOverseas Filipino (OF) Bank が最初にそれを行い、2021年にはシンガポールを拠点とするTonikが、支店を持たない銀行としては初めてそのランセンス変換を完了しました。その後、シンガポールを拠点とするUNObankは、転換せずに直接デジタル・バンキング・ライセンスを取得したフィリピン初のデジタル・バンクとなりました。
ベトナム
ベトナムの規制当局は、まだデジタルバンクに特化したライセンスを発行していません。
Timo-Plus:Timoはベトナム初のネオバンクで、当初はVP Bankと提携していましたが、2020年にライセンス提携先をViet Capital Bankに切り替えました。2016年にスタートしましたが、2020年9月にリニューアルし、現在10万以上のアカウントを持っています。
Cake:ベトナムのライドシェアリング企業であるBe Groupは金融機関であるVP Bankと提携し、2021年1月にCakeというデジタルバンクを立ち上げました。
GIB Global:香港に本社を置くGIB Global Investment Digital Bankは、ベトナムの通信会社Vimoおよび決済事業者Gpayと提携し、ベトナムでのデジタルバンクライセンスの取得を目指すことを発表しました。
タイ
タイの中央銀行は現在、バーチャル・バンク・ライセンスのさまざまなオプションを検討しています。他の東南アジア諸国とは異なり、タイには成熟した銀行環境があり、タイ成人の80%がすでに少なくとも1つの銀行口座を持っています。
Line BK:台湾でもバーチャルバンクを展開しているメッセージングアプリ大手のLINEは、Kasikorn Bankと提携して2020年10月にネオバンクサービス「LINE BK」を開始し、すでに200万人の個人アカウントを開設しています。
インドネシア
同国ではまだデジタルバンク専用のライセンスは存在していません。
しかし、インドネシアにはいくつかのネオバンクが存在しています。LINEは2021年6月、Hana Bank Indonesiaと提携してデジタルバンクを立ち上げ、Bank Jagoと組むGojek、Seabank Indonesiaと組むSea Group、Bank Neo Commerceと組むAkulaku、Kredivoなど企業と競争することになります。
インド
インドの規制当局は、まだデジタルバンキングのライセンスを発行していません。
しかし、Paytm Payment Bank、Niyo、Open Bank、BharatPe、InstantPay、 RazorPayXなどのネオバンクが存在しています。
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