言語学する文法04 ~形容詞~

いつも調子に乗って長くなるので今回は短めに。

「形容詞ってなんですか?」

「名詞を修飾する言葉です」

それでいいと思います。ただ、僕は “修飾する” という言葉があまり好きじゃありません。こういう、よく意味がわかってないままそれでも知名度だけはある、みたいな用語を使うのは少し憚られます。

なのでちょっと言い方を変えてみましょう。

「形容詞とは、名詞を説明する言葉である」

いいですね。過不足ない感じ。でもやっぱり平べったすぎるし、魅力的でもありません。ということで思い付いたのが、

「形容詞とは、名詞の名刺である」

どうでしょう。狙いすぎなのはわかっていますが、いいんです。こういうのは短くスッキリと言えた方がいい。

たとえば青空と言いますね。空は青い。つまり「青い」というプロフィールが、空の名刺には載っているのです。
(昼だけだと思われるかもしれませんが、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』なんていう詩集もあります。最果タヒ著)

青空のことを英語では "blue sky"、フランス語では "ciel bleu" と書きます。"blue" と "bleu" で微妙に綴りが違うのも然ることながら、形容詞を置く位置も違います。こうして名詞にくっつけて書く場合、英語のように前に置くパターンを “前置修飾”、フランス語のように後ろに置くのを “後置修飾” と言ったりします。まぁ、これはあまり大した差ではなく、エスカレーターの左右どっちで歩かずに止まるかの違いみたいなものです。

これに対し、 "The sky is blue." とか "Le ciel est bleu." と言うことも考えられます。このように、間にコピュラ動詞 ( "be" や "être" など) を挟んで使う場合、その形容詞は「補語」として用いられています。

形容詞は名詞の名刺である、と申し上げました。この、形容詞を「名詞にくっつけて使う」か「補語として使う」かの違いはつまり、名刺を “名札” のように、体の一部にずっとつけているのか、私はこういう者です、と改まって名刺を差し出すかの違い…と、言えないこともないのかもしれません。


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