黒の剣士とロリと大食い選手権
#SAOゲーム10周年イラコン に提出中のオリジナルキャラクターの小説になります。
ストレアとオリキャラが既に仲良しで、キリトに紹介する、そんな話です。
会場にはNPCとプレイヤーでごったがえしていた。コの字型に出店が建ち並び、串焼きや飲み物に始まりサンドイッチや旗またラーメンやカレーライスまで和洋中様々な料理を提供しており、プレイヤーが列を成している。
会場の中心にはテーブル席が所狭しと設置されていて目の前にイベントステージらしきものを見れるようになっている様だった。
ここは、ALOの期間限定イベントエリア、さながら現実のグルメフェス会場、と言うべきだろうか。
中世風に装飾がされているので樽がテーブル替わりだったり出店も木製なので現実とは雰囲気は全く異なるのだが。
「凄い人だね…!」
「ああ…テーブル席をストレアが予約してくれてて助かったな」
「そうだね、でもはぐれないに越したことは…ってあれ!?ユイちゃんシリカちゃんリーファちゃんは!?」
「3人とも、もう出店の方に行ったわよ」
シノンが指差す方を見ると、人混みの奥の方にリーファの金色のポニーテールが見えた…様な気がする。
「じゃあ、好きに買ってきてテーブルで落ち合うか」
「そうしましょうか…シノのん、一緒に飲み物買いに行かない?向こうに美味しそうなの見つけちゃった」
アスナがシノンの手を引いていく。それを見送った俺は今まで黙っていたリズの方を向く。人通りを避け脇に寄ってメッセージウィンドウを睨んでいるリズは恐らく、未だ連絡が来ないストレアにヤキモキしているのだろう。
「リズ」
「分かってるって、どうせあの子のことだからこっちに直接来るんだろうけど…少しくらい連絡しなさいよー!」
俺たちがこのイベントエリアに来た理由は、出店を楽しむだけでは無い。これから行われるステージのイベントの1つにリズベットが欲しがっていたレア素材が賭けられた大食い選手権に参加するためだった。
最初は俺とクラインが出場する…事になりそうだったのだが、ストレアが大食いなら友達に得意な子がいると言い出して、是非任せて!と言って聞かなかったので任せる事になったのだ。
待てどもメッセージが来ることは無い様子だったので仕方なくリズはウィンドウを閉じる。
「あー!もー!アタシも出店まわるわ!」
「あっ、おい!」
そう言うとリズは人波の中へと駆けて行くのを慌てて俺は追いかけた。
*
その後、ストレアとは案外早くに合流を果たせた。果たせたのだが…
「やっほー、キリト!連れてきたよー!」
「…ストレア?」
片手をあげて此方に手を振るストレア…の脇に何かが抱えられていた。料理でも抱えてきたのかと思いたかったが残念ながら料理などでは無く、人間の様だった。
サラマンダー、だろうか?赤い髪の2つ団子結びと菫色の瞳が特徴的な童女だった。
小脇に抱えられることに慣れているのだろうか、さして動揺している訳でもなく淡々と串焼きを咀嚼している様だった。
「はい、お届けもののレマルだよ〜!」
「こ、こんにちは…?」
じゃじゃーん、とでも言いたそうにストレアに掲げられた少女の表情は困惑しながらも取りあえずと言わんばかりの挨拶をしてくれた。レマルが地面に下ろされると格好にも目を奪われた。
ロリータ、と呼ばれるファッションだろうか。膨らんだスカートやフリルとリボンがあしらわれた装備に、今まで出会ったことのない系統だなと頭の片隅で考える。
俺の横にいたリズがストレアの首根っこを掴んでレマルに聞こえない様に顔を寄せた。
「ちょ、ちょっと待ってね〜!……ストレア!私に任せてって言っていたけどあの子!?到底大食いに勝てそうには無いわよ!?」
「え〜?」
「だって前回開催の優勝者はラーメン36杯よ!?あんなちっちゃい子に36杯も入る!?」
確かに、今も両手に持っている串焼きを次々食べているがセブンやシリカくらいの背丈の子がラーメンを30杯も食べる様子は…想像出来ないなと俺も思う。
「でも、レマルもよく食べるよ〜?」
「というか既に串焼き食べちゃってるじゃない!あぁ、私のハンマーがあぁ…」
「まぁまぁ…」
「あのー」
くい、と袖を引かれて振り返るとレマルと呼ばれていた少女が俺たちを見上げていた。
「大食い、出ればいいの?」
「あ、あぁ……そうだけど大丈夫?狙いは優勝景品のハンマーで…」
「ならへーき!レマル、二連覇して目立つの嫌だったから出ないつもりだっただけだから!」
「「え?」」
*
結果は圧勝だった。
10枚積み重なったどんぶりのタワーが7つ建設された事でレマルの顔は客席から見えなくなり、他の参加者に圧倒的な差をつけてのフィニッシュに会場は大歓声に包まれた。
ラーメン71杯。前回の36杯を大きく上回る量でレマルは二連覇を達成したと同時に殿堂入り――つまり出禁となってしまったのだが。
「はい、どーぞ!」
「本っ当にありがとう!!お礼に装備を作っても…いや是非作らせて!それくらいしないと割に合わないわ!」
レマルから優勝景品のハンマーがリズベットに手渡される。よほど欲しかったのかリズベットは感極まっているようだった。
「ほらねー、いったでしょ?レマルは食べる方だって!」
「いや、前回優勝者ならそう言ってくれればよかっただろ」
まるで自分の事の様に誇らしげに胸を張るストレアに俺は突っ込みを入れる。
「それはレマルがストレアに内緒にしてって言ってたからだよ」
いつの間にかレマルがストレアの傍に立っており、ストレアに緩く抱きつかれながら言った。…いつの間に。
「レマル〜、優勝おめでと〜!凄かったね!」
「うん、ありがとう……ええと、キリトくん、だよね?ストレアからお話はよく聞いてるよー」
ほにゃ、とした笑みを浮かべてレマルが右手を差し出す。俺はその手を握り返しながら疑問を口に出した。
「俺は、キリト。よろしくな。……話?」
「キリトくん、可愛い〜って話!確かに可愛い顔してるねぇ…ストレアが好きになるのも分かるなー」
「でしょう!レマルもキリトの事好きになった!?」
「なっ!?」「へ?」
一体何を言い出したんだ。唐突すぎる言葉に顔を真っ赤にする俺とどこか楽しそうなストレアにきょとんとした顔のレマル。
「なななにを言ってるんだストレアさん!?」
「うん、そうだねぇ」
「んん!?」
レマルの言葉に混乱は収まらない。
「もちろん仲良くなれそうだよ?ストレアの大切な仲間だもん、ね?」
にぱっとした笑顔を向けられ、思わず言葉に詰まる。流石はストレアの友達と言うべきか、その笑顔はどこか悪戯めいたものを感じた。
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