チワ2021

よかった　何がよかった？　その蜂蜜の影　けものの毛にまみれたジャケット　倒れた椅子　よかった　何がよかった？　海が見える長方形の窓　横に長くて細い、ちょうど広間の長机の上に立つと水平線が見える　────鳥・・・も、見える。　石の家は冷たいままを好んだ　記憶を回収する舟だ　隠れていたかったと告げて次々と誰もが　・・・あえた　誰にあえた？　空耳だった　もう鳥は窓の檻から逃がしたし　白いクロスの長机は足跡で蹂躙したし　兵隊は見かけ倒し　だし、────いつも　そこに居ようとしない誰か　が　赤い火を灯して　煙突の街　灯台の丘　古城の森　ゆびさしている　いまは、いまだけは　そこに居ようとすると凄まじい苦痛をともなうというのに　それなのに、そこに居ようとしない誰かが　おしえてくれたのだから　おしえてもらったとおりに　ぜんぶ持って　行くことにする　倒れた椅子　鳥の鳴き方　舟人たちの追跡　まじわることのない通りすがりの影　喀血跡　そのくちばしで　捻じ切ってほしかった　燃える頬を。　飛び立てない　鳥よ、外套のうらがわで　あたたまって　膨らむようになったら、置き去りの陶人形たち　みんなそろって、うたう　────よかった　何がよかった　あえた　誰にあえた　よかった　何がよかった　あえた　誰にあえた　・・・