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人が究極の幸せを求めた時、世界は破綻する(ハーバート・サイモン)

エフェクチュエーションの基盤となる哲学が2つある。ハーバート・サイモンの『システムの科学』と、ネルソン・グッドマンの『世界制作の方法』だ。

サラスバシー自身が『エフェクチュエーション』で述べているのだけれど、怠慢で読んでいなかった。

サラスバシーの師匠サイモンは、AIのパイオニア。経営学の分野でノーベル賞を受賞した人物。ググると「限定合理性」を研究した人らしい。

人は完全に合理的ではない、という主張だとある。

「そらそうだろ」と思った。

「AIを作ったとか限定合理性とか、小難しいこと言って、実際には何の役にも立たないに決まっとるわ」

あと、手っ取り早く最新の理論を学び、ドヤ顔したかった。哲学書を読んでいたら遠回りになるではないか。

だが恩師らの手前、やはり読むことにした。イキっていても、実際本を書く人間と言うのはこんなものである。

読んで驚いたのは、ネットにある解説とは大分違っていたことだ。

みんな手っ取り早くドヤ顔したかったのだろう。その気持ち良くわかる。

通常の説明はこうだ。

「人は完全に合理的でないから協力しましょう」
「力を合わせれば、全体で合理に近づきます」

正直、まったく違った。

「人が究極に満足すること(完全合理)でなく、ある程度満足すること(限定合理)を行えば、市場は均衡を保てる」

というのだ。

既存の経済学は最適解を求めすぎ、マルクス主義は理想を求め過ぎた。むしろ、真面目に最適を求めたがため、市場はバランスを崩した。

人は不完全であるがゆえ、世界を平和に保てるというわけだ。人がそこそこの幸せを求めれば、世界は均衡に至る。

そう言えば皆が幸せだった80年代って、みんなそこそこの幸せを求めていた気がする。

そこそこ幸せになれる勉強の仕方。
そこそこ幸せになれる仕事。
そこそこ幸せな遊び。

そっちの方が破綻なく続けられ、上手くいくのかもしれない。

サミュエル・ジョンソンの言葉を引く。

「重要なのは優雅に踊ることではなく、踊り続けることだ」

世界的ベストセラー『GRIT』にもある通り、続けられる奴が成功する。才能でもIQでも家柄でもない。

そこそこの幸せを求め、失敗したらフィードバックを効かせ修正する。未来をマネジメントするのではなく、現実に照らし自らをマネジメントするのだ。

完璧な計画を立てようとしてはならない。
人が究極の幸せを求めた時、世界は破綻する。

なんてこった。
どんな天才だ、サイモンよ。

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