学校に行く意味が勉強だけしかないなら、僕はそんな場所には行きたくない
掛川市の教育長の話を聞いた。
掛川では6年で不登校児童数が3倍以上になっている。
全国的にも不登校児童数は激増。
なにが崩壊したのだろうか。
話は極めて興味深く、教育の荒廃はこれまでも幾たびかあったという。
昭和43年のスプートニク・ショック。ソ連に宇宙開発の先を越された猛烈な焦りが、西側諸国の教育を激化させる。
昭和55年ごろは学校が荒れており、補導の数も異常だった。落書きや器物破損で鉄筋の校舎が20年持たないと言われ、教育長自身もカッターナイフで「お前、なにしにきた」と脅されることもあった。
当時の教育対策はここに尽きた。
平成27年ごろからは、いじめの対策に追われ、平成29年ごろからグローバル社会への対応が盛んに求められだした。
社会がどうなるか、さっぱり見えなくなってしまったのがこの頃だという。
掛川の生徒数は平成7年から令和2年で34%減少。
それにも関わらず、特別支援学級の数は令和元年から五年までで31%増加。発達障害の生徒数もここ8年で71%増えた。
不登校のご家族に話を聞くと、「子供と一緒に死のうと話しました」とおっしゃる方が極めて多い。
経験を持つ高校生に尋ねてみた。
「なぁ、掛川の不登校の生徒数って、6年で3倍になってるんだって」
「これやばくない?」
「つかさ、なんで学校いけなくなっちゃってるんだろ」
「うちも凄く多くなってるんだ」
「不登校の生徒さん」
「いや〜、なんて言えば良いんだろう」
「なんかさ、学校に行く意味が勉強だけにしかないなら」
「そんな場所に行きたくはないって思うよ」
「なるほど」
「昭和の頃って学校は荒れてたけど、勉強以外にも学校へ行く意味はあったのかも」
「盛り上がってただろうね」
それも困るけれど。
『先生抜きで書こう』"Writing without teachers"という名著がある。
「最初の段階では秩序立てて書いてはならない」
そう述べられている。
「秩序は行動を静止させ、作者になにも書けなくさせる」
書籍では、フリーライティングという泥団子のような書き物を、最低週3回行うことを勧めている。会話のように書くのだ。
会話とは不思議なものだ。秩序のようで秩序でない。
会話に秩序を求めたら白けてしまう。計画は直線的だが、会話は全体を把握させる。
著者のピーター・エルボーは「文字に相談する」と表現する。
人に相談しているようで、会話に相談していることがある。文字を自由に書くと、重場を発生させ議論の全体と中心が見えてくるのだ。
全体を把握するためにはカオスが必要で、カオスがなければ会話は生まれず、育ちもしない。
エフェクチュエーションも、これと似ている。
計画を完全否定し、対話をしながら事業をピポットさせる。会話というカオスの中で方向転換しながら、自らのすべき全体と中心とを把握する。
全体が分からねば中心も分からない。直線的な計画ではどちらも捉えられない。
カオスには理解が足りない。カオスはカオスではない。それがエフェクチュエーションを無理解にしている。
「専門家は細かい点では絶対に間違えないが、大局的に見ると恐ろしく間違った方向へと突き進んでゆく」
M.マクルーハンはこう述べた。合理では全体が見えず有害にすらなる。
野球教室を起業した方が語ってくれたことがある。
「僕はドラえもんの空き地を作ります」
「理想の野球教室なんです」
「20年後、のび太たちはきっと空き地に向かって礼をしていると思います」
「今はなにも思わなくとも」
「野球の原点と本当の礼を伝えたいから」
「ドラえもんの空き地がいいんです」
ドラッカーは『経済人の終わり』で民主主義を完全否定した。合理的に作られ過ぎており、窮屈で争いを生むからだ。
「民主主義は合理的に過ぎ、必ず全体主義へと行き着く」
全体主義は合理の塊だ。合理の道を進めば、必ず全体主義に突き当たる。ナチスに迫害された彼が導いた結論がそれである。
泥団子を作る空き地が失われているのだ。計画では意味を見つけられない。会話が生まれず、自らが為すべき全体を把握できない。
「学校に行く意味が勉強だけにしかないなら、僕はそんな場所に行きたくはない」
「不登校の生徒のための遠隔教育」
「人工知能を活用したed-techを教育の現場に」
合理的な手段はすべて見当違いになる。
崩壊した社会を再生させるものはカオスだ。
泥団子を作ろう。
失われた意味はすべて泥団子が覚えている。
お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃
起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)
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起業家はトラウマに陥りやすい人種です。トラウマから立ち上がるとき、自らがせねばならない仕事に目覚め、それを種に起業します。
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