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抜かせ方

たまにはサッカーの事でも書こうと思う。

スペインサッカーを肌で感じたこと。
守備に対する考え方。

スペインでプレーするまでのスペインサッカーへのイメージは華麗なパス回しでの攻撃。
そのイメージしかなかったが、実際にプレーすると中身はまるで違った、むしろ逆だ、守備なんだと。

本当に衝撃だった。

日本の守備のイメージとして、まず自分が抜かれない事、飛び込まないで相手の出方を伺う。
そんな守備の印象がある。

スペインの守備は奪いに行く。
特に中盤、真ん中では。
ただ、僕が衝撃を受けたのはその考え方だ。

極端な話、別に抜かれていい。。。

は?って思う人もいると思うが、実際僕もそう思った。

もちろん時と場合にもよるが、
奪いに行くからにはボールを奪うことが前提なのだが、別に抜かれていい。

ただ、その抜かせ方。
1人目を抜かせて誘ってたかのように次の選手でボールを奪う。
わざとその方向に抜かせて、次で奪う。
もちろん、ボールを奪いに行ってるので本当にわざと抜かせているわけではないが。

サッカーにおいて、守備をする上で、抜かれ方にフォーカスしたことはなかった。

簡単に説明するなら
獲物に対して、捕らえたい方向に銃で威嚇射撃を打って誘導し、誘い込んだところで捕獲する。
そんなイメージ。

いや、それカバーリングじゃん。
いや、そうじゃない。

カバーリングは味方が抜かれた場合を想定して取るポジショニング。
極端な話、ファーストディフェンダーはセカンドディフェンダーの指示通りに守備をする。
それはセカンドディフェンダーの方が状況をより把握できている為。
または、ファーストディフェンダーの出方を見て自分のポジショニングを決める。

そして、カバーリングにはそもそもボールを奪うことが概念にない。
抜かれた選手のカバーに入る。

僕が感じたそれとカバーリングとはまた別の概念だ。

スペインで感じた守備はボールを奪う事を想定してそこへ誘導する為、ファーストディフェンダー、セカンドディフェンダーの双方に意図がある。

極端な話、その状況下でファーストディフェンダー、セカンドディフェンダーの双方にどこでボールを奪うかが瞬時に共有されている、あとはそれを実行する。
そしてそれがチーム単位で起こる。
まさに組織的な守備、そんな感じだ。

守備をする上で受動的か能動的かの違い。

スペインのサッカーにおいて、守備はボールを奪う事に能動的。
自分たちから何か仕掛けるイメージ。
日本のサッカーにおいて、守備はボールを奪う事に受動的。
相手の出方を伺い、それに対応するイメージ。
両者では全く異なる。

それを体現したのがペップ時代のFCバルセロナ。
ボールの保有率が高いのは華麗なパス回し、そして仮にボールを奪われてもすぐに奪い返す。それは守備が受動的ではなく、能動的だから。

僕はチームが決まるまで、何チームか練習参加をしたがほぼ全てのチームに攻撃はいいが、守備が良くないという評価を受けた。

体感すればそりゃそうだなと納得していた。

チーム全体が能動的な守備をしているのに、そこに1人でも受動的な守備をする奴がいれば、チームの歯車は当然狂う。

ボールを奪う為に自分の抜かれ方を考えて守備をするには当然、相手、味方の位置を把握し、どこでボールを奪うのかを瞬時に判断しないといけない。

受動的な守備と能動的な守備では後者の方が考えることが多い。

それ故に、練習でも試合でも頭が疲れる。
サッカーで頭を使うってこういう事かと本当の意味で実感できた瞬間でもあった。

感覚的に言うと、将棋をしているイメージだ。
「王」というボールを奪うのに、色んなコマを使って捕らえたいところまで誘導する。
それには当然、自分のコマ、相手のコマの位置、動き方、場所、など色々なことを考えないといけない。
ただ、サッカーは将棋ほど、考えれる時間がない。
状況が一瞬一瞬変わるからだ。
だからこそ、より頭を使うんだなと感じた。
そして、その考え方が攻撃にも生かされているようにも感じた。
奪う対象が、ボールではなく、ゴールに変わるだけだからだ。

故に、スペインサッカーは緻密で、そして強い。
守備と攻撃、一般的には正反対なこの2つもスペインサッカーにおいて考え方は同じ。
まさに攻撃的。
守備と攻撃で考え方を分けず、一貫している。
そこに強さ、そして面白さが詰まってるなと本当に感じた。

日本の守備、スペインの守備どっちの考え方が良いか、悪いか、そんな話ではない。
どちらも良い面、悪い面がある。
でも僕にとって、自分の中には無かった感覚、概念、考え方。
それを身をもって経験できた事に、本当に価値があると思っている。

そんな自分の経験をまた、誰かに共有できたらなと思います。

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