見出し画像

論文情報は日常生活でも活きる - 小耳症の子どもが生まれた時の経験

はじめに

 私は普段、論文や特許といった科学技術情報の分析をしています。科学技術情報は仕事や趣味で触れているのですが、以前、自分自身の生活の中で論文情報が活きたことがありました。それ以来、科学技術情報というのは、研究者や技術者のためだけではなく、誰もがアクセスして、自身の生活に活かすことができる情報源なのではないかと感じました。本noteでは、その時の経験談を書き留めておきたいと思います。

小耳症を知る

 2020年に長男が産まれたのですが、小耳症という症状がありました。小耳症は耳介の形成がされていない先天性異常で、多くの場合、外耳道も閉鎖しています。1万人に1人の確率で生まれると言われています。長男の場合、左耳が無く外耳道閉鎖しているため、片耳難聴でした。息子が産まれて始めて知ったので、私も妻もパニック。右耳は聴こえるのだろうか?心臓疾患等の合併症は?発達は問題ないのか?いじめられないか?本人にどう説明すればよいか?等、一気に不安が押し寄せます。そんな時に便利なのがWeb検索ですが、検索すればするほど、良い情報と悪い情報が混在して、夫婦ともに不安の沼にハマっていきました。(今は2歳になりましたが、元気でやんちゃです。本当に片耳難聴か?と思うくらい良く音に反応しているし、歌もよく歌っています笑)

論文情報が安心材料になる

 そこで、医学的な情報をちゃんと把握しようと、CiNiiJstageで論文を検索しました。すると、下記の論文を発見しました。

小森:一側の小耳症ならびに外耳道閉鎖症とともに, Otology Japan, 2012

 この論文はシンポジウムの講演なので、The論文というわけではないのですが、著者自身が小耳症を患っている耳鼻科の医師でした。自分のこれまでの成長や経験と、医学的知識を織り交ぜた内容でした。

  • 立派に成長して活躍している人がいること

  • 片耳難聴で起こりうる発達上のハンデ(ハンデはあるものの、全く話せない等は無さそうなこと)

  • 患者本人だからこその心理

等を知ることができ、安心することができました。普段、論文と接点がない妻にも共有したところ、彼女も安心していたようでした。そのあと、彼女も論文という情報ソースに感心し、いくつ自分で論文を検索していたようでした。論文情報によって、夫婦ともども、不安な気持ちを落ち着かせてもらいました。

病院選びや医師との会話に論文情報が活きる

 また、病院選びや医師との会話にも論文情報が活きました。小耳症や片耳難聴の研究や治療報告をしている論文を探したところ、下記の論文を見つけました。

村上等:埼玉県立小児医療センター「難聴ベビー外来」での音楽療法, 小児耳鼻咽喉科, 2008

 実際にこの病院・医師のところに行きました。医学的な説明や検査はとてもしっかりしていました。また先生自身、多くの小耳症患者とその成長を見ているからか、子育てに関するアドバイスもいただきました。
 この論文の話を先生にすると、研究の過程で知ったおススメの音楽等も教えてくれました。このように、病院や医師選びの意思決定、またその医師との会話に論文情報が活きたと思います。

科学技術情報の日常化に関心

 このような経験から、論文や特許といった科学技術情報が、一般生活者にとってアクセスしやすく、自身の生活に活かせる世界(科学技術情報の日常化)に関心があります。
 noteやtwitterでは、科学技術情報のデータベースの使い方や、データ分析方法を呟いています。今後は、こういった情報と接点がない方でも、アクセス・活用できる方法を分かりやすい表現で発信できたらと考えています。最近、人工知能技術を用いた論文検索や読解支援サービスも増えてきたので、その辺りのツール群も試してみたいです。
 一方で、こういった科学と社会を橋渡しする役割として、サイエンスコミュニケーションというものがあります。私もこの経験から興味を持つようになりました。書籍や音声・映像コンテンツも増えていると思うので、勉強してみたいと思います。

小耳症の子どもを持つ親御さんへ

 もし私と似たような境遇にある方で、何か気になることがあれば、TwitterのDM等でお気軽にお声がけください。例えば、小耳症のコミュニティ「こみこみ」や、難聴に関する分かりやすいパンフレット(埼玉小児医療センター)、また個人の体験談等を共有できると思います。

埼玉県立小児医療センターからもらった難聴に関するパンフレット