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SLやまぐちで、貴婦人と2時間デート。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国各地の観光列車が運行を中止している。津和野と新山口を結ぶ「SLやまぐち号」もその1つ。例年であれば、3月中旬〜11月下旬までの週末、1日1往復していたはずなのに。

発売1分で売り切れるという難関を奇跡的にクリアして、やまぐち号に乗れたのは10年以上前のことだから、いまの運行形態と異なっているところがあるかもしれません。ご了承くださいね。

津和野に貴婦人と呼ばれるC571が到着し、乗客を下ろすと、そのまま前方ヘと進んで行く。どうするんだろうと思っていると、客車を切り離しSL部分だけが転車台に乗って方向転換。ここで石炭と水を補給するのですが、もうもうと吐き続ける煙と甲高いピーッ!という汽笛は、ものすごい迫力でした。

やまぐち号の停車する駅の駅名標は、昔のような右から左へ読むスタイル。「乃わつ」と書かれたホームから乗車します。走り出すと白い煙が窓の外に流れ、大昔に出かけた家族旅行を思い出させてくれます。もちろん、トンネルでは窓を閉めるというお決まりの行為も忘れません。

1時間ほど走ると篠目駅へ。約15分の休憩となります。ここは、元SMAPの中居君が主役を演じた2004年のテレビドラマ「砂の器」で亀嵩駅として登場したところ。古い給水塔が残っています。この近くに「田代トンネル」というレンガで組み上げられた有名なトンネルがあるのですが、後日、途中下車し、行ってみたところ道が険しく近づくことができませんでした。

ここからSLは、山岳ステージへと入ります。ところどころ視界が広がる場所では、撮り鉄の姿が見え、列車に向かって手を降ってくれます。これで、駅弁でも持ち込んでいれば、家族旅行の再現だと思い、しみじみとした気分になります。

山口駅を過ぎるとSLは市街地へ。家々の軒先をかすめるように走り、煙で洗濯物は大丈夫なの? と心配になるほど。住民が至るところで手を降ってくれます。本当にみんなに愛されているSLなんだなと実感。そんなことを考えているうちに、終着の新山口駅が近づいてきます。貴婦人と語り合った2時間。それは、僕にとって懐かしい家族の時間を思い出させてくれるものでした。

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