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私は変なAVを観た!!Vol.5「欲情列島宅配便 私の処女を破りに来てっ!!」

「〇〇はそんなこと言わない」
これはいまだに目にするネットミームだと思います。
この元ネタである「飛影はそんなこと言わない
それの出どころになった、おそらくオタ界隈で一番有名なAV、それが
「欲情列島宅配便 私の処女を破りに来てっ!!」なのです。
私がそのタイトルを知ったのは、オタクアミーゴスの書籍のなかでですが、
それによると青木光恵さんがSF大会に持ち込んで上映したことで一気に広まったらしいです。
なので実際に観てなかった私でも「AVでの処女喪失に応募してきた28歳OLが蓋を開けてみたら重度の幽遊白書オタの腐女子で、飛影×蔵馬とのなりきりプレイになだれこむ」という内容は知っていました。
「幽助が見てるぞ…」
「飛影はそんなこと言わない」
という会話のことも。

で、「叡智なビデオは好きですか?」の連載を始めるにあたって「変なAVっていったらこれだよなー…」と思い検索してみたらFANZAにはなかったのですが、ソクミルで配信販売しておりました。
その時はレンタルにしたのですが、いまサイト見たら70%OFFの294円になっていたので購入しました。
そうしてなかば伝説化しているAVを初めて観たものの…。
わ……わらえねぇぇぇぇぇ~~~~~~~!!!!
共感性羞恥で爆散するかと思いました。
28歳OLは、90年代の流行を色濃く反映したピンクのスーツにウェーブのかかった髪を後ろに結って、モサオタという感じでは全然なく、むしろ上手く擬態できてるなという容姿でした。
しかし話始めると……なんでオタクって口調でわかるんだろうね……。
スタッフと男優さんを交えてのインタビュー、恋愛観の話題ではやたらサバサバ系の口調で、これも女オタあるあるな感じではあったのですが……。
ひとたび幽遊白書の話題になるや、ニチャァ……とした笑みを浮かべる彼女。
この笑顔でこのビデオはやらせではないと確信しました。
わざとらしい感じではないんですよ!!
これがやらせだったら、もっと気持ち悪い笑顔にさせてたはずです。
照れ隠しと、こみあげるニヤケを必死に抑えつけている、目と頬の表情筋がギクシャクとするようなあの笑顔……本当にいたたまれない。

ところで。
このビデオ、徹頭徹尾ドキュメンタリー番組の態で作っており、作中のナレーションが「たけしさんまの超偉人伝説」のナレーションにむやみに寄せまくっています。
幽遊白書の話題になったとき、説明のためにスタッフが描いた模写絵が映しだされ「幽遊白書という漫画がある──それは某有名週刊誌に連載されていた漫画であり、テレビアニメ化もされているのだ。物語は主人公浦飯幽助が霊界探偵となり数々の妖怪たちと正義の闘いを繰り広げていくというものである。その中で主人公の仲間として登場するのがこの飛影なのである」と、淡々と大真面目に解説するのです。
こんな感じでスタッフも男優さんも腐女子を茶化すというノリはまったくなく、ただただ畏怖を感じている…といった感じでした。
腐女子という概念もまだあまり知られてなかった時代だからだと思います。
なし崩し的にプレイが始まり、男優さんに手マンをされていると「飛影…飛影」と呟きだす彼女。
「俺……飛影にされてるんだよね……いま」
「え……?」
若干怯むも懸命にノリを合わせようとする男優。
しかし
「ママって呼んでいいよ……」と彼女はさらに明後日に球を投げてきます。
聞いていくと彼女の脳内ではただの飛影×蔵馬ではなく、蔵馬の女体化、さらには飛影とは母子の関係という二次設定になっていたのです!!
どんな??!!!!
いやまあ二次は二次ゆえに自由であるべきですが、にしても自由すぎやろ。
あまりのことに思考が処理落ちしたのか男優がキレて「お前なあ!!気持ち悪いんじゃ!」と怒鳴って女優にビンタをかまします。
撮影は一時中断となり、スタッフ会議が開かれますが、いっぽう彼女はといえば別室で布団にくるまり幽白のアンソロジーを読んでいました。
原作コミックスではなくアンソロジーというところが業が深い。

結局なりきりプレイで押し通すことに決定して、スタッフは彼女に「どこまでついてこれるかわからないけど……その世界でいきましょう」と告げる。
紳士やん。
メチャメチャ厳しい人がふいに見せた優しさって…コト?!
しかしそのときに彼女が「武術大会の戸愚呂戦の時に飛影が武威って人と闘ったじゃないですか……あのときに飛影は絶対負けないと思っていて…」とか熱く語りだすのでヤメテェェェ!!と叫びたくなりました。

かくて男優をオタクにやや理解がありそうな人にチェンジしてなりきりプレイ再開。
男優さんが彼女の股間をまさぐりながら「触りたいよ……」と言えば
「いいよ……飛影なら触っていい……」
「俺はただ……ここが懐かしくて触ってるだけだよ……」
あ、母子であるという設定も継続なんだ。
「それでもいい……飛影が好きだから……好きなだけ触っていい……」
「俺の気を…お前のここに全部入れてやる……」
いちおう世界観踏襲している……のか?
「ああ……飛影……お前が俺のこと嫌いでもいい……俺はお前のことが好きだよ…」
うわごとのように「飛影、好きだ」をくり返す彼女。
とうとうSEXは完遂できたのですが、事後もなりきりプレイが終わらない彼女に逃げ腰になる男優。
「俺とお前はここまでだ…この世界ではここまでなんだよ」
「嫌だ……」
「今度……どこかの世界で……男と女になって……生まれ変わって出会ったら本当に愛し合おう」
めちゃくちゃ適当なこと言って逃げを打とうとします。
「最期にキスして……飛影」
という彼女の懇願に応えてなんとか男優はその場を去ることができました。
ちなみに冒頭で10本にも渡る今作の撮影テープが映し出されるのですが。
テープに書かれているタイトルが
「市原爆発逃亡」
「控室」
「市原再逃亡~対策」
幽界の愛~別れ
などとなっておりあの逃げ腰なりきりプレイにそんな大仰なタイトルがついていることにぶふっとなります。

あ、ところで「飛影はそんなこと言わない」の台詞ですが。
実際は言ってませんでした!!
実際は「幽助が見てるぞ……」
誰も見ていない……俺とお前だけ……
でした。
これは上手いやり方だなと思いました。
素に戻ってダメ出しするのではなく、なりきりを途切れさせないままやんわりと軌道修正させる……なりきりプレイの手管がすごい。

それにしても。
隔世の感があるなあと思いました。
井上綾子さまが「この美熟女はガチオタでした」などで熱いオタ語りをしていても共感性羞恥は感じないしむしろ清々しいとすら思うのに、このビデオはどうしてこんなにいたたまれないのか。
それはたぶん後ろめたさにあるんじゃないかと思います。
あの時代、オタ趣味、ましてや腐女子趣味など隠す以外にない世界でまろび出てしまった腐の側面。
それはスカートのファスナーが全開になってパンツが丸見えになってる人を目撃してしまったかのような、そんな恥ずかしさに似ています。
堂々と見せパンでいるなら全然恥ずかしくないものですし。

そんなわけで令和の時代に観ることで、腐女子ムーブの変遷も感じられるビデオでした。

そして変なAV紹介コメディ「叡智なビデオは好きですか?」もよろしくお願いします。


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