音楽朗読劇テアトルバージョン レミゼラブル

日時 12/14(土)サンシャイン劇場 1230開演

原作ヴィクトルユーゴー

翻案演出田尾下哲

音楽茂野雅道

ジャンバルジャン 高橋広樹

ジャヴェール 神尾晋一郎

テナルディエ 福島潤

マリウス 伊東健斗

アンジョルラス 千葉翔也

コゼット 吉岡茉祐

フォンティーヌ 椎名へきる

司教 中尾隆聖

煙突掃除の子供 吉岡茉祐

ガブローシュ 吉岡茉祐

観たまんまの感想

そもそもチケットの話である。前回の吉岡さん出演のレミゼラブルは残念ながら、抽選に漏れ一般も瞬殺だったので、どうせ今回も駄目に違いない。朗読劇とは縁がないんだ、と諦めながらもポチったのは随分前のことである。

まさか当たるとは。キャパの問題もあるかもしれないので、なんとも言えないが、とりあえずローチケ ありがとう。来年も徳を積みますよ。ローソンコラボもっと買うようにします。

席としては一階席の後方。入金時なのか、発券時なのか、どのようなシステムかはわからない。なにも学習していなかった私はオペラグラスを忘れていたことに気づいたのは、すでに池袋に着いた頃。 戻るにはすでに手遅れたった。


荘厳な音楽から始まった、レミゼラブル。登場人物の名前と物語の背景は何とは無しに知ってはいたものの、内容に関してはまるっきりの無知。
前回のジキルvsハイドからは約100年前。場所はフランス。……fgoでナポレオンの幕間が来たのは、この流れだったのかとどうでもいいことを考えた。素晴らしい幕間のせいでスカディを召喚できていない自分を恨んだものである。
それはともかく登場人物が多いことからも、人間関係が複雑になることは予想できたが、ジキハイ を念頭に置いておいたため、場面転換がおもったよりも多くされていることに驚いた。
ヴァルジャンだけではなく、ジャヴェール、マリウスが時として語り手となった。

というか、泣いた。しかもヴァルジャンが、コゼットのために別れるシーンで泣いた。こういうシーンで泣くようになったんだと、己の老いを感じて仕方がない。ラストでコゼット、マリウスと再会するヴァルジャンのシーンには拭いても拭いても涙が止められなかった。

割と最初の導入ではヴァルジャンに共感できない人が多いのではないだろうか? システムのおかしい社会に対して、反旗を翻すことの愚かさ。
ヴァルジャンに対し、もっと賢く生きればいいのにと思った人も多い気がする。ジャヴェールも同じ気持ちだったのではないだろうか? 19年という歳月を同じ空間で過ごしたジャヴェールはヴァルジャンへの愚かなまでの真っ直ぐさに呆れ果てていたはずである。

そんな愚か者のヴァルジャンの改心が結果としてラストまで続くのがこの作品だった。特に胸を打ったのは、ヴァルジャンが自分の罪を背負ってしまった男を助けに向かうところだ。フォンティーヌとの約束があったにもかかわらず、その男を救いに向かった。結果としてフォンティーヌは死ぬことになってしまった。なぜその男を助けに行かなければならなかったのか? 喩えとして正しいのかよくわからないけど、試験問題で先に解いた方がいい問題が後にあるとわかっているのに、今解き始めた難しい問題を結局ずっと解いて試験時間がなくなる感じ。
ヴァルジャンは常に最高の結末を求める男だということを知った。男も救えて、フォンティーヌとコゼットも再会させる。可能性がある限り、それに対して尽くさないのは、善ではない。司教に言われた、変わるということを、そういうことなのだと思っていたのだろう。
この辺りからヴァルジャンというキャラが好きになった。高橋さんの芯の通った声が懊悩するヴァルジャンの台詞を発するたびに、その心の揺れ動きが一段と見て取れる。絶対に譲らないジャヴェールに対し、文句ではなくまた戻ってくると誓いをたてて去るシーンが何度かあるが、ヴァルジャンとジャヴェールの炎と鋼のような関係は醍醐味の一つだった。

フォンティーヌの残念な死とともに、一度話は途切れ、今度はコゼットと出会う場面から始まるのだが、ここからの一つの見せ場がテナルディエであろう。最早福島さんの演技は、とんでもなく良かった。人とはこうも卑劣になれるのだという、見ていて不快になりつつも、そこから目を逸らさせないという、とても難しい芝居をしていたように思う。最後の最後までテナルディエは出てくるが、どんどん落ちぶれていくその様をヴァルジャンの眼にはどう映っていたのだろうか?
そんなテナルディエの手から離れたのが、コゼットだが、久しぶりに吉岡さんの女の子を見た。いや、吉岡さんは可愛いのだけれども、アニメのティラナは騎士然としていたし、朗読劇あの星に願いをではギャルだったし、ジキハイは独り立ちしたメイドだったから、ある意味正統派ヒロインのコゼットは感慨深かった。
そして映えるのが、ガブローシュだ。特にコゼットから入れ替わっての演技には、驚くばかりである。もともと特にabcの友に属する、マリウス、アンジョルラスの声が高めとはいえ、男性の中に混じって違和感がなかったのはすごい。次の朗読劇のロミジュリでは、吉岡さんが演じるのはジュリエットだが、となるとどうしても昔やっていたGONZOのアニメのロミジュリを思い出す。あのジュリエットもなかなかに活発で、かっこよかったんだよなあ。
どんな舞台になるか今から楽しみです。

そしてコゼットの成長とともに、最後再びジャヴェールと対するヴァルジャン。ここで特にすごいのはジャヴェールのキャラクター。歳をとり、スパイとして活動しながら、abcの友にどのような感情を抱いていたのか? 彼らに降伏を勧めるとき、どんな感情があったのか。是非原作をあたりたい。若い頃であれば、絶対に降伏を勧めることなどしないはずである。見事にスパイを務めあげて一網打尽にするはずだが、そんな彼が若者たちに道を示した。とても気になるシーンである。
そしてヴァルジャンに命を救われ、そのヴァルジャンの想いを汲んで、見逃した結果彼は死ぬのだが、なぜヴァルジャンをここでは見逃したのか?

勝手な想像ではあるが、ジャヴェールが降伏させることで助けようとした、若者たちの命はマリウスを除き失われた。唯一救われたマリウスの命は、宿敵と言ってもいい、ヴァルジャンによって救われたのだった。このことは自分の命を救ったことよりも、ジャヴェールにとっては大きな出来事だったのではないか? 動機よりもその結果を重視して生きてきたジャヴェールにとって、結果としてヴァルジャンが自分の求めていた結果を成したことは、自分がこれまで行ってきた行動の規範を大きく覆すことになったのではと思う。
自殺をしたジャヴェールのことを、のちにヴァルジャンはどう思ったのか。

ざっとまとめた感想です。
せっかくなので原作と映画くらいは見てみて、もう一度まとめてみようと思います。




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