「美白サウスポー」飯田優也投手 引退


 かの柳田悠岐も絶賛した、MINMIのMOVEという曲が流れると、「森蘭丸か」と言いたくなるような、とても野球選手とは思えないほど色白の左腕がマウンドに登る。
 そんな光景はもう見られない。

 この度、飯田優也投手が道を退くこととなったため、ファンとしてありったけの思いで送辞を書いてみた。

猫の手を借りた奇跡

 1990年11月27日。
  ホークスOBでいうと「鷹のジブリ監督」こと宮崎駿内野手と同じ日に生まれる。
 幼少期に宮崎駿監督でも描けないような奇跡の出来事があった。

 彼が4歳の頃、1995年1月17日、飯田家の住んでいた西宮市を震災が襲った。阪神淡路大震災である。
 地震当初、なんと飯田は眠っていたという。実家で飼っていた猫に起こされ、難を逃れた。その時、逃げ遅れていたらホークスを支えてくれた左腕・飯田優也はいなかったのかもしれない。本当に猫に感謝である。(なお、本人は猫アレルギーである)

 そんな数奇な運命を辿った飯田は神戸弘陵高校から東農大オホーツク(=生物産業学部)に進む。高校時代は全国的には無名の存在だったが、網走でその才能を開花させる。
 過去に稲嶺誉や小斉祐輔らを発掘した「ホークス御用達のオホーツク」と呼ばれるだけに、鷹スカウトはその左腕のポテンシャルと負けん気の強さを見逃さなかった。

兄と目指した支配下の道

 2012年育成ドラフト3位で入団。入団当時は実兄の飯田一弥氏が同じ育成選手という立場で在籍していた。
 お兄さんのポジションは捕手。一軍の舞台で兄弟バッテリーを組むことが大きな目標の一つだった。
 だが、兄・一弥は2013年、2年目にして退団を余儀なくされ、ブルペン捕手に転身した。プロの厳しさを実感しながら、兄の果たせなかった夢を追い駆ける物語が始まる。

 兄が戦力外を告げられたその年のオフ、プエルトリコウインターリーグで躍動すると、翌年二軍のローテーションに定着し、抜群の安定感を見せる。
 5月に支配下登録、6月にプロ初登板、初先発とスピード出世。6月22日、プロ未勝利ながら交流戦優勝を懸けた巨人との大事な一戦で先発に大抜擢。結果は負け投手となったものの、そこには秋山監督からの明確な期待が示されていた。そこから1ヶ月、7月30日の山形での楽天戦で6回無失点で遂にプロ初白星。

 結果この年は2勝止まりだったが、ウエスタンリーグ最多勝のタイトルを獲得。確かな手応えを掴んだままシーズンを終えた。

 飯田を有望株だと確信していた私は、「この重量感あるストレートに、もう少し変化球の制球力がつけば来年から2ケタ間違いないだろう」なんて胸をときめかせていた。

中継ぎ転向

 だが、それほどまでにイージーな世界ではなかった。
 監督が工藤公康氏に代わり、チーム方針で中継ぎを託される。2年連続30試合登板をクリアするなど3年間で84試合に登板したが、登板数は年々尻すぼみ。無駄な与四死球も多く、なかなか勝ちパターンに食い込めなかった。

 ソフトバンク時代の通算10ホールドをまずまずと取るか、今一つと取るか。人によって見方が分かれるところであろうが、私としては期待していただけに正直不満足であった。
 ただ、少なからずチームに貢献して、一時代を支えた左腕であることは間違いない。2014年、15年、17年の優勝の際には遠慮なく孫オーナーにビールをぶっかける無類の強心臓を発揮し、「ビールかけ最強投手」としても名を馳せた。

関西に戻る

 2018年の前半戦、ついに登板数は1にとどまり、地元・阪神へ交換トレード。阪神からは松田遼馬が来た。
 松田遼馬は翌年に51試合登板と飛躍した一方で、飯田は阪神で4試合にしか投げられなかった。明暗の分かれるトレードとなってしまった。
 更に今度はオリックス・小林慶祐とのトレード。左腕不足ということで期待を受けたが、登板試合数は4試合。「丸蹴リータ事件」のTwitterや登場曲ドラゴンクエストで多少話題になったが、野球の方で目立つことはできなかった。2021年、チームが快進撃を続ける中、自身は一軍に上がることができず無念の戦力外通告。
 結局最後まで制球は向上せず、最終成績は105試合5勝6敗(防御率3.89)。2度の移籍で渡り歩いたのは「ワンチャン大化け」の期待の現れだった。育成3巡目入団と考えると、相当よくやった方だろう。
 もしかしたら本人は満足とまではいかなかったかもしれないが、それでも這い上がりの野球人生はすごいと思う。
 ありがとうございました!そして、お疲れ様でした。

 いっせーのーせで踏み込むゴーライン(飯田祐馬は読み「メシダ」やけど)。第二の人生に期待である。

晴れのマウンド この舞台 
飯田優也 勝利を掴め


 ちなみに、飯田投手は二階堂ふみの大ファンである。恵まれた体格を活かし、2階から投げ下ろすような高身長色白独身左腕が独身色白女優を「アイーダ」のオペラのように投球フォーム同様のダイナミックさで奪うことはできるだろうか...?

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