「 THE KING OF CLOSER 」

球史に残る絶対的守護神


「9回の1イニングを5億で買えるなら安い」

 これは「権藤、権藤、雨、権藤」でおなじみ、権藤博氏の言葉である。
 それを文字通り本当に実現していたのが2017年のソフトバンクだ。

 後ろが計算できることほど大きなことはない。
 幾度となく終盤の逆転負けを食らった今季、改めて学び直した。

 4年前、我らがホークスは、リーグ優勝決定時点で、「6回終了時点でリードなら74勝1敗」(勝率99%)という驚異的な数字を叩き出した。
 応援していた身としては、8回以降を完全に捨てて考えていた。それくらい、当時のセットアッパーと抑えには信頼感を置いていた。

 モイネロ、五十嵐、嘉弥真、森、岩嵜。
 史上最強とも言えるブルペン陣を率いたのが、そう、デニス・サファテである。

広島・西武時代

 サファテのNPBキャリアはカープから始まった。
 MLB時代のノーコンが来日して大きく改善。足を高く上げるためクイックが大苦手なのが課題ではあったが、そんなの関係ないほどランナーを出さなかった。

 1年目から35セーブを挙げ、永川勝浩以降固まっていなかった抑えのポジションを全うした。
 翌2012年はキャム・ミコライオの台頭に押され、オフに西武へ移籍。

 西武でも9勝0敗10S16H 防御率1.87と与えられた役回りで結果を残したが、1年で自由契約となった。

 そこで、新守護神候補として白羽の矢を立てたのがホークスだった。

守護“神”

2014年 64試合37セーブ96奪三振 防御率1.05
2015年 65試合41セーブ102奪三振 防御率1.11
2016年 64試合43セーブ73奪三振 防御率1.87

 最初の3年間で、ご覧の通り、無双とも言える成績。
 浮き上がるようなキレキレのストレートが、並み居る強打者たちのバットの上を通っていくのが衝撃的だった。
 「クソボール」と言えるような、ストライクゾーンを遥か上に外れた直球なのに、ものの見事に空振りで倒れていくのである。画面越しで見ていて、「よっぽど手元で伸びてんだろなー」と。

そして、伝説となる。

 2017年のサファテは出てくるだけで、相手チームに「終わった…」と思わせるほどの絶望感を与えた
 日本新記録のシーズン54セーブ、セーブ機会の防御率0.16、セーブ失敗僅かに1という圧倒的な成績を残す。
 2位の記録が46セーブ(岩瀬仁紀&藤川球児)であるのだから、飛び抜けた数字であることは一目瞭然だ。(そもそもシーズン通してこれほどまでにセーブシチュエーションが多いことが稀なので、おそらく未来永劫誰も届かないプロ野球のアンタッチャブル・レコードの1つだろう)

 サファテを語る上で、忘れてはいけない試合が2つある。
 一つは、同年8月11日のオリックス戦。5時間11分の激闘の末、延長12回ウラにサファテがステフェン・ロメロにサヨナラ被弾して敗れた。
「先発投手がこれだけ連続で早いイニングで降りていたら、そのツケはこっち(救援陣)に回ってくる。(中略) 先発投手も何かを感じ取ってほしい」
 ファンとしても、本当にサファテ先生のおっしゃる通りだと思った。ブルペンのためを想い、我々の総意を代弁してくれたのである。
 野球がチームスポーツである以上、時に厳しく、仲間を叱咤することができるリーダー的存在は不可欠である。
 サファテがプルペンにいる価値は、確実に数字以上のものがあったと思う。

 もう一つは、11月4日、3連勝から2連敗して迎えた、DeNAとの日本シリーズ第6戦。
 1点ビハインドの9回表からマウンドへ。
 朝飯前と言わんばかりにまずはその回をピシャリとゼロで抑えると、ウラに内川聖一が山﨑康晃から滞空時間の長いアーチを描き、土壇場で同点に追いつく。
 伝説はそこからだった。
 延長10回も無失点で抑えると、なんと11回のマウンドにも背番号58が。
 来日最初で最後の2回跨ぎ本人志願の熱投だった。
 それでも打たれないほどの球威があった。さすがの投球でDeNA打線を封じ、ベンチに帰る際には客席に向けて盛り上げるようにと両手で声援を仰いだ
 熱い鼓舞を送ったあの時間こそが、日本一への空気を創ってくれたと思う。

 「サファテのためにも絶対に決めてほしい」
 彼の執念に応えたいという想いは、ファンもナインもきっと一緒だった。
 川島慶三の劇的なサヨナラ打によりゲームは決着。
 上記の活躍により、5イニングで強烈なインパクトを残したサファテは日本シリーズMVPを獲得した。
 シーズン終了後にはパリーグMVPも受賞し、名実ともにこの1年は「サファテの年」となった。

功労者として

 ホークスで4年に渡り、重圧のポジションを務め上げ、日本で積み重ねたセーブの数234。
 助っ人史上2人目の名球会入りには惜しくもあと16届かなかったが、きっとその夢の続きは、愛弟子の森唯斗が叶えてくれるはずだ
 敬虔なクリスチャンであることから、股関節の故障が選手生命を終わらせる致命傷にまでなった2019年頃からは母国で中絶反対のリーダー的な活動に勤しんでいたみたいだが、本人いわく、いつかは球団職員としてホークスに戻ってきたいと考えてくれているようだ。

 サファテを超えるクローザーなど私には想像できないが、ホークスが強くあり続けるために、後身のレジェンド助っ人の発掘をぜひともお願いしたい。

勝利呼び込む球を 投げてくれ
歴史を刻めサファテ いつまでも

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