見出し画像

ずどーんと、はじまる「まちづくり」。北海道奈井江町

北海道空知郡奈井江町。

人口5,000人のまちをキャッチフレーズで元気にしようというプロジェクトは「たくらむまち 奈井江町」というコンセプトでスタートした。
似たようなケースのヨソの事例を見ると、たいがいは市民からキャッチフレーズを募集して一等賞を表彰。そのコピーを市庁舎の懸垂幕でアピールして、役所職員の名刺の肩にチョコっと入れて、ハイ、おしまい。その後はなんの動きもない。元気にすると言っては見たものの、「元気なまち」は掛け声だけ。キャッチフレーズは「元気イキイキ、〇〇まち」みたいなもので、市民や町民の関心は高まらず、行動変容にまでつながっていないケースが多いのではないかしら。

奈井江町ではぜったいにこんなことにならないよう、多くの町民がキャッチフレーズづくりに興味を持ち、決まったキャッチフレーズを積極的に楽しく活用ししてくれるようなものになるよう企みを持ってやっていきたかった。

それには、町民からの公募で決まったと言う事実が大事なだけのキャッチフレーズではダメだと思った。建前だけは守れても、おそらく意図したようにはならないろうと思っていた。でも、プロに発注してプロが素人にはできないような面白いものをつくったとしても、まちのひとたちが自由に使えないものだと活性化につながらないし、まちの中でエネルギーや経済が回らないとも思っていた。マス媒体などを使えるような規模のまちではない以上、町民がじぶんたちのコミュニケーションツールとして積極的に活用してくれないと発信力に限りはあるし、メッセージは機能しないだろうと思っていた。

だから、キャッチフレーズのコンセプトを考えるところから、まちのひとと共有しようと企んだ。単に面白い言葉をつくるだけではダメなんだ。本当に大事なのは「何を言うかなんだ」と言うことを知ってほしかった。
ファクトに基づいた視点の大切さを伝えるために「奈井江町らしい魅力を伝える写真の募集」からスタートし、集まった写真をまちのひとと吟味し、現地を見て、ヨソにはない奈井江町だけのオリジナルな魅力を抽出することにこだわった。

今回のプロジェクトは、やり方次第で奈井江町のイメージをつくっていくことができるであろうと、我々クリエイターのあいだで仮説していた。つまり、キャッチフレーズがみんなのコミュニケーションツールになっていけば、そのことが奈井江町のオリジナルな魅力となり、奈井江町のブランディングになる可能性を予感していた。そしてブランディングしていくためには「オリジナリティ」は不可欠な要素になる。ヨソのまちと差異化しブランドイメージを確立していくためには、ヨソのまちにはない奈井江町らしい独自の魅力の創出が必要だからである。

『オリジナリティのないところに差異化力はない」のだ。

ワークショップでは集まった写真から他にはないコンセプトをセレクトし、そこからキャッチフレーズづくりを体験した。そこにはなんとふたりの中学生も参加してくれた。大人にはない新鮮なアイデアを出して参加者の刺激となってくれた。

2日間のワークショップを経て、キャッチフレーズを町民から募集した。応募作のなかには、ワークショップ参加者も多く含まれていたと思う。
集まった応募作をプロのコピーライターの視点でセレクトした。“セレクト”と称したのは、最終形はこちらで手を加えた方が意図したように機能していく言葉になるだろうと思っていたからである。

セレクトした基準は①他の市町村では言えないこと(言っていないことも含む)②記憶に残るキャッチフレーズに昇華できること③その言葉に汎用力(いろんなところへ展開できるチカラ)があること④まちのみんなが面白がること(あるいはカウンターとしての違和感が出ることも許容できること)⑤記憶しやすくするためにパターン化、記号化できること⑥他のまちがうらやましいと思うこと。
以上である。

それらのことを“企み”ながら、ワークショップでは写真から複数のコンセプトを設定し、面白いキャッチフレーズになるコンセプトを体感し、ふたつのコンセプトに絞った。そのふたつのコンセプトで町民からキャッチフレーズを募集。そこから上述した“企み”を満たしそうなキャッチフレーズをこちらで選び、キャッチフレーズを使った企画アイデアを考えるワークショップでは「言葉によって展開のアイデアが変わる」ことを実感してもらった。それらの体験を通して、大まかな方向は決まった。
そのキャッチフレーズをこちらで引き取ってブラッシュアップしていった。言葉のブラッシュアップだけでなく、どんな展開が可能か。記号化(パターン化)できるかデザイン的な検証もふまえて最終形にしていった。

そして、キャッチフレーズは「ずどーん」になった。
当初はアルファベットの方がモダンでカッコ良いイメージになると思っていたが、ある瞬間に平仮名にすべきだと閃いた。言葉の持つ響き、雄大で包容力のある奈井江町のイメージ、芯が太くて動じない姿勢を持つまちのひとたちの気質に通じるのは英文字ではなく平仮名の気分だと確信した。“ダサかっこ良い”と言うとまちの皆さんに怒られるかもしれないが、ユーモアもあって平仮名の方が好感度が高くなると思った。

そして、年明け早々、まちの広報誌などで決定が知らされ、ステッカーが配られた。配られたステッカーを思い思いのところに貼った写真がインスタグラムにアップされてる。インスタルラムのキャプションにも「ずどーん」を使っているひとが増えてきた。まだまだ増えていくと効果はもっと出ていくだろう。
「ずどーん」と言う言葉もさまざまな団体がポスターのキャッチフレーズやイベントのタイトルなどに使ってくれ出した。
ある農業生産者さんが商品の発売告知に使っているケースは良い兆候だと思った。実際のラベルとして増えていくことがさらに望ましい。
こうやって、「ずどーん」がまちのみんなのコミュニケーションツールとしてどんどん広がっていけば、話題増え、ヨソからの見え方変わり、まちのひとや役所の方々の気持ちも高揚していくだろう。
理想はまちに経済効果やひとの訪れをもたらすことだが、一足飛びにはいかない。プロジェクトメンバー、役所の方々、商工会の方々、協力隊の方々など、みんなで「ずどーん」の発信を増やし輪を広げていくことだと思う。

お楽しみは、これからだ。

「ずどーん」をみんなで楽しんでいこう。

「ずどーん」はみんなの遊び道具、みんなのコミュニケーションツールにして行こう。



まちが配ったステッカーの使用例を投稿したケース。



インスタグラムへの投稿のキャプションに使われたケース。



ステッカーの画像とパンフレットを投稿したケース。



ステッカーの使用例をインスタグラムに投稿した例。



ハッシュタグに「ずどーん」が使われている例。


キャプションに「ずどーん」が使われている例。



イベント告知のキャッチフレーズに大きく使われている例。


イベントのネーミングに使われている例。



イベント告知チラシのキャッチフレーズに使われている例。


団体からのお知らせのカッチフレーズとして使われている例。


インスタグラムの投稿より、面白い使用の例。



トイレットペーパーホルダーにステッカー。その紹介文まで面白い。


まちが配ったノベルティのトートバッグをインスタグラムにアップ。


ある農家さんが商品の新発売告知に使用している。こう言うのが増えると「いいね!」


「20歳を祝う会」の会場ウエルカムパネルにも使用。


20歳を祝う会の会場内写真スポットにも使用。


20歳を祝う会にて。配られたトートバッグと記念撮影。



ずどーん!(待受画面やズームの背景にも使われている)


縦型も用意されている。


はじまったばかりだが、使いやすさを計算しているので、どんどんこんなふうにいろんなところで増殖中。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?