非当事者研究への脚注その2
廣松渉の用法から、「当事他者」を「当事者に呼び掛け、応答を期待する者」としました。「呼び掛け」と「応答」は、一見すると、前者が能動的で、後者が受動的なため、「当事他者」が主体的で、「当事者」が客体的に思えるかもしれません。しかし「呼び掛け」と「応答」とは、そう簡単に能動と受動とに割り切れるものではありません。
なぜ「呼び掛け」るのかを考えると、その行いの基底にあるのは「応えてくれるだろう」という期待です。つまり「呼び掛け」は「応答可能性」に逆に呼びかけられているのです。ややこしい言い方になりますが、「応答可能性」に呼びかけられて、「呼び掛け」という形で応答しているのです。
「当事他者」と「当事者」との関係は、ひとまず雇用関係ならぬ「呼応関係」にあると言えるでしょう。