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「さよなら」を言えなかった人

うちのおとんが急死した。60代前半。いろんな持病と戦っている身体ではあったけど、最近はめちゃくちゃ調子が良くて、ホッとしてたのにな。なにをそんなに急いだんやろうか。

安倍元首相が銃撃され、「うわぁー、日本のパパがなんてことに...」と心を痛めていた翌日の出来事。おやすみのあと、翌朝のおはようがなくそのままベッドで亡くなっているところを家族が発見。いつもは仰向きで寝ているのに、なぜかうつ伏せで寝てて、なんか嫌な予感がしたらしい。すでに死後硬直の兆候が見受けられ、病院には搬送できなかった。急いでかけつけた時、すでに警察官が複数名。

いつものベッドで寝ているおとん。腕や脚が少し硬くなっている。「ほんまに死んでしもたんか?」触るともう冷たい。あかん、直視すると泣いてしまいそう。現実を受け止めたくなくて、あえて遠くから眺める。いつもの場所で、いつもの姿なのに、もう亡くなっているその姿を見たあとは言葉にできない感情が覆いかぶさってきた。まっすぐ顔をあげて、現実を受け止めないといけないことはわかってるけど、身体が拒否する。警察の取り調べはどんどん進んでいく。

もう亡くなってしまったことやから、せめて苦しまずに逝ったのだろうか。少しそんな余裕が出てきては、またとてつもない不安や悲しさが押し寄せてくる。感情の起伏が激しい。

事件性がないことを証明をするために根掘り葉掘りいろんなことを聞かれた。通帳の場所から、財布の現金の中身。服用している薬。そして、そのまま警察署で司法解剖へ。

あまり全身を切り刻むようなことは、やめて欲しいな。その願いは通じたんかCTで死因が分かった。警察署へ行ってからお迎えに行くまで1.5日がかかった。遅くなってごめんな。暗かったやろう。なんか知らんけど、謝らせて欲しい。

警察署へおとんを迎えに行き、そのまま葬儀場へ。病院で亡くなると、身体をキレイにしてもらえるみたいやけど、そうじゃなかったから湯灌をしてもらう。

嫁さんに湯灌に行ったら泣いてしまいそうやし行かへんって話をしたら、「最後までちゃんと向き合わんかい。もう、顔を見れへんようになるんやから」とピシャリ。悲しい気持ちのまま行ったけど、行って良かった。気持ち良さそうにお風呂に入ってる。最後に身体をキレイにしてもらって、髭もそってもらってスッキリ。ここにそり残しがあるからカミソリ貸してくれませんかといって、キレイにしてあげた。あかん、このnote書いてても思い出しては涙目になる。四十九日が過ぎたら、落ち着くかなと思ったけど思い出すとあかんな。さみしい。

お葬式の間、何度も遺影を見ては涙が出て落ち着いて、遺影を見ては涙が出てを繰り返す。感情の起伏はまだ激しい。親孝行って親のためにするんじゃなくて、自分のためにするもんなんやなとこん時に思ったわ。もっと一緒にお酒飲んで話をしたかったな。もっと聞きたいこといっぱいあったな。去年のゴールデンウィーク、一緒に旅行に行って楽しかったし、また行こうなって約束してたやんか。嘘つき。なんでそんなはよ死んでしまうんやな。あほ。ぼけ。

ワシには歳の離れた異母兄弟の弟が2人いて、まだ未成年。この子たちのおとーちゃん変わりにならんとあかんな。これからいろんな相談事があるやろう。なんでも、ゆうておいで。この2人が結婚するときは、ワシが父親の席に座るんや。

お通夜、告別式が終わり出棺して火葬場へ。最後のお別れのとき。もう顔を見ることができひんのか。ほっぺたをペチペチして今までの感謝の言葉を伝えよう。そう思うけど、言葉が詰まる。

「今までありがとう。あとは任せといて」

たぶん、ちゃんと言えてない。ふにゃふにゃ言葉やったと思う。涙びしゃびしゃ。もう嫌やな。恥ずかしいわ。弟2人にも「ワシがおとんの変わりになるから心配すんな。みんなで頑張って行こう!」ってバシッと言ったつもりがもう涙ボロボロで、これもたぶん伝わってない。まぁ、おとん。任せておきーや。ワシがなんとかするから。

いやー、ほんまいいおとんやった。今までありがとうございました。

今日は、おかんにテレビ電話でもしようかな。

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