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男子は世界選手権出場権獲得を世界最終予選に持ち越す

中国・深圳で9日まで開催されていたパシフィック・アジアカーリング選手権は、男女とも決勝進出を果たしたが、男子は韓国に、女子は中国に敗れ、ともに準優勝という結果に終わった。北海道コンサドーレ札幌が日本代表として出場した男子を振り返る。

予選は韓国に敗れて2位通過

10ヵ国が参加した男子は、世界選手権出場枠が1つだけという厳しいものになっていた。これは、今年の世界選手権で、韓国が最下位となったため、パシフィック・アジア枠が2から1に減らされたから。
したがって、決勝に進出した時点で世界選手権出場が決まる女子と違い、優勝しなければ切符は手にできないのだ。一方、昨年の覇者である日本代表の北海道コンサドーレ札幌には連覇というプレッシャーもかかっていた。
初戦のオーストラリアに勝った後、韓国戦を迎えた。今回の韓国代表は、今年の世界選手権で最下位になったチームではなく、キム・チャンミン選手が率いるチーム。5-5で迎えた8エンドで1点スチールし、流れが向いたと思いきや、9エンドがブランクとなり10エンドも韓国が後攻に。
ここで1点だけ取らせてエキストラエンド後攻で点を取って勝つ、というのが筋書きだったはずだが、10エンドで3点奪われて痛恨の逆転負け。この後、日本はナイジェリアから21点奪ったり、中国にも8-7で競り勝つなどして7連勝し、予選を8勝1敗としたが、韓国は9試合を全部勝ち1位をゲット。日本が2位、7勝2敗の中国が3位、そして6勝3敗のニュージーランドが4位で予選を通過した。

準決勝からリードに阿部選手が登場

準決勝から阿部晋也選手がリードに入り、昨年優勝時のオーダーが戻った。予選では、何度か谷田選手に代わりセカンドでプレーしていたが、ついにリードとして本格復帰となった。
阿部選手は、7月から潰瘍性大腸炎で入院し、インスタグラムに投稿された内容によると、酷い時は飲むことも食べることも出来ず、一日中腹痛と下痢・下血を繰り返し、日々痛みの出る場所が変わる関節炎や発熱と、身体的にも精神的にもとても苦しい状況だったという。
まだはっきりとした発症原因がわかっておらず、再燃することも多くあり、現時点ではなかなか完治することが難しいであろう、国の指定難病になっている病気。ただ、薬や治療法の進歩で、多くの罹患者が投薬治療を続けて寛解を維持し、普段と変わらない生活を送れているそうだ。
阿部選手も投薬治療を受けながらのプレーだろうが、微塵もそれを感じさせない今まで通りのいぶし銀の技を見せた。準決勝も、阿部選手の落ち着いたショットが流れを作った。1-2で迎えた3エンドは、清水選手のカムアラウンドから2点パターンを作り出し、しっかりと2点を獲得して3-2と再逆転。
さらに4エンドは中国のスキップのゾウ・チャン選手に難しいラストショットをせざるを得ない局面を作り、ランバックでの日本のストーンのダブルテイクアウトを狙ったショットはうまく当たらず抜けてしまって日本が2点スチール。これで5-2となり一気に優位に立った。
5エンドで1点取らせた後の6、7エンドは無理せずブランクとして、2点差のまま8エンドへ。ここでは1点のみだったがここで再び3点差にできたので精神的に余裕ができた。9エンドは安全運転で相手に2点あげて、1点リードで最終10エンドを迎えた。
予選の韓国戦とは違い、後攻のぶん冷静に戦えた。相手のリードが置いたガードを2投とも確実に阿部選手が素晴らしいウィックでずらし、真ん中を開けた。最後にドローしやすいように、センターを開けるのが後攻の戦い方だ。
スキップの2投を残す段階で、赤の日本がNo1、黄色の中国がNo2。その2個だけがハウスにある状況。そこから中国がNo1をヒットステイ、日本も同じことをして、さらに中国ももう一度となり、日本のラストショット前にはハウスの2時の位置の外側の円と2番目の円に黄色いストーンが1個ずつという形になった。
松村選手のラストショットは、相手のNo1を打って後ろに押し下げ、シューターがNo1となって7-5で逃げ切った。強豪の中国を予選に続いて破り、連覇まであと1つに迫ったが、ここで2位以内を確保したことで「決勝で負けても世界最終予選に出場可能」となったのが決まっていた。
パシフィック・アジア地域からの世界最終予選出場枠は2のため、3位以内に入らないとならず、もし準決勝で敗れていたら、3位決定戦に世界最終予選行きがかかるところだった。

決勝は女子同様に大差負け

決勝は、準決勝でニュージーランドを10-6で下した韓国が相手。韓国は予選からじつに10連勝だ。日本のポジティブ要素は、予選と違いリードに阿部選手がいることと、中1日空いて氷の変化に戸惑った決勝の日本女子と同様に、韓国も1日間隔が空いた日程な点。
しかし、先にアイスリーディングがしっかりと出来たのは韓国のほうだった。序盤こそ、2エンドのラストショットで韓国がストーンを残せず、1エンドに続いてブランクにした時は韓国も戸惑っている印象があった。
ところが3エンドで、スキップの松村選手が2投とも強めに投げてしまってスイープで調節できず3点取られそうなまずい形に。しかし韓国は安全に2点だけ取った。そして、ここからさらにおかしくなってしまった。
4エンドは確実に1点取れる形もあったが、強気に行って相手に1点スチールを許し、さらに5エンドも2点スチールされて、前半を終えて0-5とかなり苦しい展開になった。4エンドでスチールされて焦りがあったのかもしれない。
5エンド終了時の松村選手のショット成功率は53%で、女子決勝の北澤選手ほどではないにしてもかなり悪い数字。様子が変わったアイスに対してなかなかアジャストできないうちに折り返してしまった。
6エンドの韓国は日本にビッグエンド(3点以上)さえ作られなきゃいいという感じで2点を与えると、7エンドではガードを置いている間にどんどん中にストーンを置いてきて4点。2-9となって勝負あり。
大会規定で準決勝以降は最低8エンドは戦わなければならないが、8エンドでも2点スチールされて結局2-11で大敗。連覇の夢も、世界選手権出場権獲得も消えてしまうこととなった。
なお、3位決定戦は中国がニュージーランドを下した。この結果、優勝の韓国が世界選手権出場を決め、日本と中国が世界最終予選に回ることも決まった。

世界最終予選は来年1月フィンランドで

松村選手は試合後「相手がすごく良かったですし、自分たちがそれについて行けなかったので、その差が得点に表れたのかなと思います」と語った。アイスリーディングが抜群に素晴らしく、3エンド以降はミスらしいミスがなかった韓国を称えていた。
気になったのは「悪いなかでもいい状況に持って行けて、最後の1試合だけだったので、そういったところではポジティブな要素かなと思います」と語った点。阿部選手が復帰戦だったことも含めて、コンディション的にはあまり良くないという認識だったのだろうか。
これで、来年1月にフィンランドで開催される世界最終予選で世界選手権の切符を獲得しなければいけないことになった。来年と再来年の大会は、次のオリンピックの出場権獲得に響くので、出場してポイントを稼ぐことが重要だ。
世界最終予選は、ヨーロッパから4ヵ国、アメリカ大陸から1ヵ国、パシフィック・アジアから2ヵ国、そして開催国のフィンランドの計8ヵ国が参加し、このなかの上位2ヵ国が世界選手権の切符をつかむ。
北海道コンサドーレ札幌がこの大会にも出場することになり、チームとしては1月と世界選手権出場チームを決める2月の日本選手権とにピークを持ってこないといけないわけで、難しい調整を迫られる。
とはいえ、"仕上がり途上"の状態で準優勝ができたのなら、さらに調子が上がってくるであろう世界最終予選では期待が大きいし、日本選手権も当然主役となるはずだ。
しかしながら、両角友佑選手がスキップのTM軽井沢、山口剛史選手らが腕を撫すSC軽井沢クラブ、さらに日本選手権までの間に海外遠征するチームがあるなど脅かす存在は増え、またジュニアチームでもイキがいい選手たちが育っている。
やはり女子並みに国内チーム同士で高め合うのが一番良い。これから層が厚くなる男子カーリングは、まだ抜けた存在が見当たらず、戦国時代に突入したといえる。観る側は、推しの選手やチームを見つけるいいタイミング。
12月の軽井沢国際などの機会を逃さず、現地に足を運んで応援をしていただきつつ、推しの選手やチームを見つけてみてほしい。やはり応援する存在があって、より一層競技の観戦に熱が入るようになる。この機会に、ぜひどっぷりとカーリング沼にはまっていただきたい。

地元網走に帰ってきて5年半経ちました。元競馬専門紙編集部員。サッカーや野球、冬はカーリングなどスポーツ観戦が好き。もちろん、競馬も話題にしています。時事ネタや網走周辺の話題なども取り上げます。よろしければ、サポートもお願いいたします。